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【日記】いぬのこと


犬の散歩に行っていたら、同じ黒柴を飼っている人に遭遇した。

その人とは、よく夜に会う。

いつもどおり、犬たちのほうが先にたーっと近づいていく。飼い主たちが、ひっぱられてなんとなく挨拶する。私はこんばんはー、と聞こえるようにいうけど、その人はいつもあまり私へ挨拶せずに、うちの犬の名前をよぶ。

「a(うちのいぬ)ちゃんも服着てないねえ。うちの子も着ないんだよお」

と、相手の飼い主が言った。

冬になると、服を着て歩く犬が増える。他に柴犬を飼っている人はたくさんいて、なんとなく知り合い同士になってるんだけど、うちの黒柴と相手の黒柴だけ服を着てなかった。

「裸なの恥ずかしいねえ」

相手の飼い主がそう笑っていて、んー?と私は首をかしげた。脳内で。多分顔は、あはは、とか言えていたと思う。多分。

もともと柴犬は毛も、もふもふしてるし、服を着る必要はない。ピンシャーとか、毛の極端に少ない犬なら、服はよく着てるし、話は別だけど…。

人間の尺度と犬の尺度なんて違うに決まってるのに、なんでそこだけ抽出してしまうんだろう?
ああいう人の気持ちや、普段気になっていることを聞くことが出来れば、いろんな話に昇華できるのかな…とそわそわしながら、結局、自分の、その人に対するモヤモヤの方が勝ってしまって、いつも、ふわふわしてその人から離れていく。

犬はいつだってかわいくて優しくて純粋で、その相手の飼い主の犬の、まあるくて透き通った目を見るたびに、こんなことを考えてしまう自分が嫌になってしまう。

おわり


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