「蟹工船」小林多喜二
小林多喜二のプロレタリア文学代表作。
舞台は明治時代。
蟹漁のため400人の出稼ぎ労働者が大船に乗って、北海道の極寒の海へ向かう。
過酷な肉体労働、劣悪な住環境、栄養失調による脚気の流行…今では考えられないが当時のありのままを描いている。
ある日、とうとう仲間のうちから死者が出る。
無慈悲にも、寒い暗い海に水葬される仲間の姿を見て労働者たちの魂に怒りの炎が付き、集団ストライキを起こす。
労働者たちの強い心
船は海上にあり、逃げ場がない。
北海道の寒い海だから、飛び込んだら待つのは死のみ。
故郷や家族を思い、必死に働く労働者。
当時の時代背景もあり、過酷な労働に反感を抱きつつも違和感を覚える人はそういなかったよう。
お金のためとはいえ、すごすぎる。
しかし、当時社会主義の思想を取り入れた「赤化」という考え方が広まりつつあった。
海上にいる労働者はそんなこと知りもしなかったが、ある時、陸に戻る機会があった仲間からの宣伝ビラや経験談で赤化思想が広まる。
「こっちは400人!あんな監督に負けるものか!」
集団ストライキに乗り出すが、蟹漁船のバックには国という大きな敵がいた…
こんなの希望を失ってしまう。
そう思ったが、労働者たちは再びストライキの作戦を立てる。
それまでの仕打ちの反動もあるが、強い心が彼らを支えている。
一旦は心が折れるが「いや、戦うぞ!」と立ち上がる。
起き上がりこぼしのような精神。
大げさかもしれないけど、こうやって日本は変わっていったのかな、と思った。
著者:小林多喜二の生涯
著者はプロレタリア文学を多く書いている。
当時の政治の在り方に疑問を抱き、反発心を小説にしたようだ。
本作品も、実際に蟹工船に乗船していた労働者に取材し、ありのままを書いたよう。
そのせいか、出版禁止にされたほど。
また、著者は若くして亡くなったがその原因は警官による拷問だと明かされている。
国の在り方に反発するものは消していく。
当時の日本の異常さに恐ろしさを抱いた。
しかし、そういったことがまかり通っていた時代があった、という事実からは目をそらしてはいけないと思う。
歴史を振り返ることは大事、と改めて思った。
勇気ある行動を起こした著者のご冥福を願う。
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