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黒姫物語

「信濃の民話」瀬川拓男・松谷みよ子・編
はなし 中野市中町 綿貫市郎
はなし 中野市中町 松谷せつ
再話        松谷みよ子

むかし、中野鴨ガ岳のふもとに小館城というお城がありました。そのお城に高梨摂津守政盛という殿様が住んでいた頃のことです。政盛には黒姫という世にも稀な美しい姫君がいました。

高梨摂津守政盛とその娘である黒姫が家来達と花見に行く。桜と春の空に並ぶ北信五岳を眺めながら盃をあげていると、桜の花の隙間から白蛇が降りてきたので、政盛の命により黒姫は白蛇に盃を飲ませた。その日の夜、黒姫の枕元に狩衣姿の立派な小性が立ち、私の妻になって欲しいと告げる。黒姫は小姓へ道理として父に話をするようにと伝え、夢かと思いながら再度眠りについた。数日後、城へその小姓が訪れて黒姫を嫁にもらいたいと申し出る。政盛が会って身元を訊ねると「私は湯の山の奥、大沼池の主で黒龍というものです。・・・」人間ではない事に驚いた政盛は、きっぱりと断るが、黒龍の訪問は止まない。百日目の後、政盛は試練と言いながらも罠を仕掛け小姓を痛めつける。小姓は怒り四十八池の水をこの地に落とすべく嵐を呼ぶ。里々へ洪水が襲いかかり地獄のような有り様を見た黒姫は、嵐を静めるべく黒龍に訴える。黒龍が黒姫を背に乗せて天高く昇っていくと青空となり里々が晴れ渡っていく。この日から黒龍と黒姫は、黒姫山の池に幸せに暮らしている。

「高梨政盛」
信濃国中野小館の国人。室町時代後期から戦国時代にかけての武将。上杉謙信の曽祖父(大叔父?)にあたる。
「高梨氏館」
長野県中野市小館にあった高梨氏一族の居館。国の史跡。土塁、堀などが残る史跡公園(高梨館跡公園)として整備されている。
「鴨ヶ嶽城」
高梨政盛が平時に居住する高梨氏館と共に築城、廃城されたと言われている規模の大きな山城。
「大沼池」
長野県の志賀高原にあるエメラルドグリーン色の湖。標高1,694mに位置し周囲5km、水深26.2m、透明度13.5m。湖水は酸性が強く魚類は生息していない。志賀高原を代表するトレッキングコースはこの大沼池を経由する。
「四十八池」
四十八池湿原。志賀高原の志賀山と鉢山の間の標高1,880mに位置。ひとつの池ではなく、湿地に池が点在する地域。60ほどの池があり、天候などにより増減する。
「黒姫山」
長野県上水内郡信濃町にある標高2,053mの成層火山。火口原には七ツ池という湿原地、峰ノ大池がある。

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