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メンタリスト感想メモ 28

ファイナルに向けていろいろと加速してゆくラスト3話。
メンタリストらしく、サイキックとシリアルキラーが絡む
エピソードが展開してゆく。

リズボンもチョウもワイリーも傷を抱えたまま仕事をしている。
それに引き換え、ジェーンがリズボンから逃げて1週間。
仕事も恋人も放り出し、全く連絡もせず
電話にすら出ないというひどさである。

ジェーンてこういうところあるよね。
レッドジョンがらみの時も1週間屋根裏にこもって出てこなかったり、
半年間全てを捨てて連絡を絶ってしまったりした。

とにかく、集中して真剣に考え事をしたくなると
全ての接触を断ってひとりになりたいのかもしれないが
それはいいとしても連絡はしろよ。ほんとに。

ジェーンは基本、人間的にはけっこうなダメ男だ。
わがままで自分勝手、人の気持ちを逆なでするし、
情動的で、自制心も弱いし心も脆い。
賢さとルックスの良さに加えて、それすらチャームポイントに
なってしまっているのがほんとに困る(笑)

こう考えると、本当にサイモン・ベイカーが演じてこその
キャラクターだなあとしみじみ思う。
本質的な人の良さとか、真面目さ、一途さみたいなものが
にじみ出てるからこんなに魅力的なのであって、そうじゃなかったら
とっくに撃ち殺されててもおかしくないよ、こんなやつ(笑)

ジェーンにはなにかこう、人として欠落している部分というか、
失ってしまった部分みたいなものが確かにあって、
そういうところを、リズボンとの関係の中で彼がどう乗り越えてゆくのか?
という点も見どころのひとつ。

ヴェガを失い、アボットもDC赴任を目前にして人手が足りないリズボンは
いくら電話しても出ないジェーンに対し強硬手段にでる。
FBIの職権乱用(笑)
「パトリック・ジェーン、オースティンであなたに逮捕令状が出ています」
「容疑はなに?」
「出頭拒否」
「…そうきたか」
こうして、ジェーンはオースティンに「護送」されてくるのである。

取調室で向かいあうふたり。
この1週間、グランドキャニオンを見に行ったり、
片田舎のパブで閉店まで飲んで、
その辺の野原にころがって寝てたりしてたジェーンに
リズボンはいつものターコイズのカップでお茶を淹れてあげたらしい。
こういうところ、リズボンて本当に偉いと思う。
ふつうなら怒って別れるぞ、ほんとに。

でも彼女は冷静に、音信不通の間心配していたことを伝え、
彼がこの問題を乗り越えるために、自分に何かできるか尋ね、
自分がしてほしくないこともちゃんと伝えて、待っているという。
お互いの愛はゆるぎないことを確信していて、
そのうえで問題を解決しようとするのだ。

「お茶、おいしい?」
「熱くておいしいよ。ありがとう」
「そのカップ、送ろうと思ったんだけど、居場所がわからなくて」
「戻ってくるってわかってただろ?」
「わからないわよ! 最初は電話に気がつかなかったんだと思った。
 2回目は出損ねたんだろうって。
 そのうちかけなおしてくるって思った。
 3回目には道端で死んでるんじゃないかと思ったわ」
「ごめん。怖がらせるつもりはなかったんだ」
「でも怖かったわ!」
「ヴェガのことがあって以来、ちょっとゆっくり考えて
 気持ちを整理したかったんだ」
「私もそうよ。でも私には大切な仕事がある。
 それを投げ出すことはできないわ」
「わかってる…。だけどぼくは君ほど強くいられないんだよ。
 少し時間が必要なだけなんだ…」
「時間ね。わかった。待てるわ。でも、約束して。電話を無視しないで」
「ああ」
このあと、仕事をしているリズボンを
ガラス越しにずっと見つめているジェーンがいい。

彼の脆さは愛情深さの裏返しだ。
それだけ過去のトラウマは深い。
けれど、ジェーンはリズボンのためならとても勇敢にもなれる。
彼はそもそも『捜査官であるリズボン』を愛したんだものね。

ジェーンはリズボンを失うかもしれないという恐怖におびえているけれど
実はリズボンも同じだ。

いや、彼女のほうがずっと前からその怖れを抱き、
実際そうなったことが何回かある分、それは強い。
今回だってそうだ。ジェーンが消えたのは初めてじゃない。

ジェーンの方はリズボンと別れるとか、もう会えないとか
そんなつもりは全くないし、考えてもいないんだろうけど、
そんなことはリズボンにはわからない。

「ジェーンはずっとここにはいない気がする」
「ある日、ふっと風のように消えてしまうかもしれない」

彼の愛を疑ったことはないけれど、
彼女はずっとその考えを打ち消せずにいたと思う。

そしてジェーンはジェーンで
「ぼくの近くにいる人には悪いことが起きる」という
迷信めいた呪縛にまだとらわれているのだ。

けれど、ジェーンの「失踪」はある日、
湖のそばの古い小屋を見つけたことで転機を迎える。
静かな風景画のような穏やかな場所。
ジェーンはやっと自分の心と向きあう勇気を得る。

「なんでここへ?」
「戻ったんだ」
「それって、具体的にどういう意味?」
「いや、だから答えを出そうとしてるってこと。前向きに。
 君に会えてうれしいよ」
「…私もよ」
この会話が連続殺人の遺体発見現場だというのがこのふたりらしい。
結局、ジェーンもリズボンもこの仕事とお互いから離れられないのだ。

ここからはジェーンのメンタリストとしての力量が見どころだ。
そして、ラストシーンではライトと銃を持って
突入していくリズボンをもう止めない。
ふたりで事件に立ち向かうバディとしての関係が復活している。

今日の一曲
Jill Johnson  「Desperado」