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メンタリスト感想メモ 24

リズボンにとって『家族』は
愛するがゆえにトラウマでもある複雑なものだ。

彼女の弟にある問題が起き、故郷のシカゴに戻るとき
ジェーンは「君さえよかったらぼくも一緒に行こうか?」と声をかける。
その時、リズボンは歩きながらこう言い捨てる。

「来たって楽しいことはなにもないわ。来たければくれば?」

それに対し、ジェーンはリズボンを見つめゆっくりと尋ねる。

「君は一緒に来てほしいかい?」

リズボンは一瞬ためらい、弱気な声で正直に告げる。
「私は… あなたが来てくれたらとてもうれしい…」
「じゃあ、行こう。一緒に」

少し安堵したような表情のリズボンの背中に
手を添えて歩き出すジェーンが優しい。
おそらくいままでだったら、ぴしゃりと心のドアを閉めてしまったであろう
リズボンが素直に心細さを告げるのも大きな変化だ。

リズボンが育った家はいまは荒れ果ててしまって、
彼女にとってはあまりいい思い出のない場所なのだろうけど
定住の家を持たなかったジェーンにとっては
彼女をはぐくんだ大切な場所だ。
壁の落書きや、少女のころの写真など誰にも見せたことのない『過去』を
自分に許してくれたことも嬉しかったのだろう。

問題を、誰かと分かち合うのはとても難しいことだ。
特に家族の問題は。
今回、ジェーンは事件解決にはいつものトリックを使うけれど、
リズボンの問題に対しては、本当に丁寧で細やかな心遣いと言葉で
彼女と弟たちを解きほぐしてゆく。

不信感と警戒でガチガチのジミーに
「正直、テレサに隠し事はしたくないんだ。大事に思ってるからね。
 彼女が大事に思ってる人のこともだよ。
 君が正直に協力してくれれば殺人犯を捕まえてあげる」
ふわりと微笑んで握手し、ジミーの心に入り込むのは
いつものテクニックではなく、ジェーンの本心だ。

賭けポーカーがらみの事件で、その秘密ポーカーに潜入するのだが、
その胴元の女好きを見抜いたジェーンはリズボンを「釣り餌」に使う。
これ、絶対黒いミニドレス着たリズボンを
見せびらかしたかっただけだろ(笑)

でもこういう時のリズボンはおとなでセクシー、しかも
媚びや下品さがなくてすごく魅力的だ。
狙いどおりに胴元が近づき、話しかけてきたところで
ジェーンが登場するのだが、
その時のナンパな笑顔がうさん臭くて最高。
「そのすてきな美女の彼氏はぼくなんだよぉ!」と全身で自慢している(笑)

ワイリーとヴェガもフィアンセを装って、
トイレ壊したり隠しカメラを設置したり大活躍。
距離も縮まっていい感じ。

リズボンは突然の事故で母を亡くして、
酒浸りになった父親の放置と虐待から弟たちを守り、
父親が自殺した後は彼らを心から愛して、必死に面倒を見てきた。
しかしある日、彼女は自分の人生のために家を出る。

いくら弟だろうと、他人の人生をまるごと背負うなんて
できるはずもないことで、そうとわかっているのに
彼女はそれをずっと負い目に思っている。
しかも、3人の弟全員がそれぞれ問題を抱えているのは、
育てた自分のせいかもしれないとすら感じているのだ。

その罪悪感から疎遠になってしまったのだが、
弟たちは弟たちで、彼女の真面目さと責任感の強さ、そして優秀さゆえに
姉は自分たちのことを、情けなく恥ずかしい存在だと思っていて
だから出て行ってしまい、連絡も取らないのだと思っている。
この感情のすれ違いを、当事者同士はいまさら素直に認められない。

「弟たちは君を憎んでなどいないよ。本当だ」
「憎んでる。今や、スタンは借金まみれ、ジミーはギャンブルに溺れ、
 トミーは賞金稼ぎで居場所もわからない。めちゃくちゃよ…」
「確かに問題を抱えているけど、3人ともいい人間だ。
 君が愛して守ってやっていなかったら今の彼らはいない。
 君が彼らにイラつくのは罪悪感のせいだ。気持ちはわかるよ。
 でも、彼らは君に怒ってるんじゃない。本当だ。
 ただ、淋しいだけ」

いつも忙しさを口実に、帰ることを避けていた生まれ故郷。
向きあえなかった過去。
今回、リズボンはジェーンと一緒にそれを乗り越えてゆく。

スタンの赤ちゃんの洗礼式のお祝いに、
親戚や友人が集まって公園でBBQをしている。
おもいおもいに芝生に座り、缶ビールを飲む気取らない集まり。
リズボンと弟たちは和解し、ジェーンもその家族の中に入って
楽しそうに子供をあやしたりしている。
この時、リズボンがサマードレスを着てるんだけどこれがとってもすてき。
とてもナチュラルでまろやかで女性らしい柔らかな雰囲気。

「地元に戻ってよかった」
「ぼくもだよ。楽しかった」
「わたし、今まで言ったことないと思うんだけど…。
 いいえ、絶対言ってない。だって言う必要ないかと思って…。
 だって私の考えてることなんてバレてるでしょう?」
「全部じゃないさ」
「じゃあ… 驚く?私が愛してるって言ったら」
「そうだな…。感動すると思うな」
「……愛してるわ。 …言っちゃった…」
「…驚いた」

美しい秋の公園。笑いあうふたり。
『白いテーブル』での「いつか驚かしてみせるわ」という
伏線の幸せな回収。

今日の一曲
Christina Perri feat. Steve Kazee 「A Thousand Years (Part2)」