ハロー ミスターケイブマン (童話)

小鳥は空を見るのが好き
いつもいつも広い空
飛んでるような気持ちになる

草地を歩き 空を見る
木によじ登り 空を見る
岩に腰かけ 空を見る

小鳥は飛んだことがない
ちょっと折れた小さな羽は
広げたこともない

ある日
気になる丘の上に登ってみると、
ほら穴があって、
ちょっとのぞいてみたら、
ケイブマンがいた!
「ハロー ミスターケイブマン!」

飛べない小鳥を手のひらにのせて
ケイブマンはゆっくり歩く
ケイブマンのほら穴はすっきりきれい
石が光り 風が入る
いくつもの穴から 空も見える

ケイブマンの手のひらで
小鳥の羽がちょっと広がる
「私 空を飛びたいな」
小さなささやきがあふれ出る
「やってみようよ きっと飛べるよ」

ケイブマンの手のひらはあたたかい
そこから何度も飛んでみる
何度も何度も飛んでみる

地面に頭を ぶつけても
泥だらけに よごれても
深みに 落ちても こわくても
毎日毎日 飛んでみる

いっしょに朝日を見て 
いっしょに夕日を見た
「きっと飛べるね」
「きっと飛べるよ」
空は色を変えながら
いつもそこに広がっていた

今日も小鳥はとび上がる
「私は小鳥 これが羽
私は大好きな空を飛ぶ!」

空を見つめて とび上がる
小さな羽を思い切り広げて とび上がる
風を受けて
ヒューっと舞い上がって
あっ!あっ!風にのった!

「飛んだ!飛んだ!」
ケイブマンが叫ぶ
「飛んだ!飛んだ!」
小鳥が叫ぶ

空の上からケイブマンが見えた
ケイブマンの立つ大地は
優しさであふれて見えた
水は光り
たくさんの木が
空に向かってのびていた

たっぷり飛んだその空が
星でいっぱいになったなら
ほんのり明るい火のあたたかさに
疲れた体を休めよう

ケイブマンの手が
優しく羽をいたわって
小鳥は 安心 いい気持ち
「ありがとう ミスターケイブマン」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?