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スバル、自動車メーカーだと思ってませんか? 大型航空機中央翼の製造累計が3000機を突破 航空宇宙カンパニー半田工場から「ボーイング 787」用を出荷

スバルは5月26日、製造累計3000機目となる大型航空機中央翼を2023年5月に航空宇宙カンパニー半田工場(愛知県半田市)から出荷したと発表した。

 大型航空機中央翼は、航空機の左右の主翼と前後胴体をつなぎ荷重を支え、燃料タンクとしても機能する機体構造の主要な部位の1つ。累計3000機目となったのは、「ボーイング 787」用中央翼のこと。

スバル 航空宇宙カンパニーでは、航空機の完成機製造・整備に加え、大型航空機中央翼や主翼等航空機コンポーネントの開発・製造も主要事業の1つとして行なっており、半田工場では、1993年7月に「ボーイング 777」用中央翼を製造・出荷したのち、世界有数の大型航空機中央翼製造工場として「ボーイング 787」「ボーイング 777X」に加え、防衛省の「固定翼哨戒機(P-1)」「輸送機(C-2)」も含めた、5機種の大型航空機中央翼を専用ラインにて製造している。

 スバルは、今後も品質と安全を第一として自社技術に磨きをかけ、航空機コンポーネントの開発・製造に加え、整備・教育といったトータルサポートを含めた航空機システムを提供していくとした。


B777Xをはじめとする今後の双発ワイドボディの躍進


日本では、大型機と聞くとボーイング747「ジャンボジェット」を思い浮かべる方が多いと思います。数年前に、総2階建ての超大型機エアバスA380の就航も大きな話題となりました。ところが、現在の主流は超大型の4発機ではなく、777のような双発のワイドボディ機です。最新型747-8もA380も双方とも受注が不調のため、ライン閉鎖の危機に晒されているのが現状です。
ワイドボディ機とは、客室内に通路が2本ある機体を指します。これに対し、通路が1本のボーイング737やエアバスA320はナローボディ機と総称します。

双発機はエンジンが2発の機体であり、現在の旅客機の大半を占めています。777のような400席以上の大型機が双発となったのは、旅客需要の変化とジェットエンジン技術の進化が背景にあります。
60年前、航空機は高嶺の花でした。庶民は日数を掛けて船で大洋を渡り、一部の富豪のみが航空機を利用しました。それ故、航空券が高額なのは当然でした。ところが、近年では航空運賃の低価格化が急速に進行し、採算性も悪化。しかも、石油価格も高止まりの傾向にあります。その為、燃費に劣る4発機が急速に敬遠されるようになったのです。


中央翼は、地味だけど、極めて重要な主要構造体

スバルが生産する中央翼は、極めて地味な存在。ですが、間違いなく構造上の要です。左右の主翼と胴体を繋ぎ、飛行中および離着陸の際に生じる、甚大な荷重の全てを受け止めます。万が一中央翼が破壊すれば、空中分解は必至。中央翼は数多の部品の中で、もっとも堅固でなければなりません。しかも、一旦機体が完成してしまえば、分解修理も不可能。突然の乱気流(静強度)と数千回の飛行(疲労強度)に耐え、機体が寿命に達するまで確実に強度を維持せねばなりません。

しかも、このボックス状の構造体内部は、そのまますべて燃料タンクになっています。設計でも、製造でも、決して不備があってはならない、極めて難易度の高い構造体なのです。

これだけ重要な主要構造体でありながら、ボーイングは主力機たる777Xと787のすべての生産をスバルに委託しています。逆に言えば、ボーイングにとってスバルは無くてはならない存在である、とも言えるでしょう。

中央翼という、派手では無いけれども信頼と実績を求められる主要構造体。スバルがその生産を一手に引き受けているのは、それだけ信頼がある証左でもあります。スバルの半田工場は、世界に稀に見る「中央翼専用工場」として、盤石の信頼と実績を築き上げています。ボーイングの777Xと787は、今後数十年に渡って生産が続くでしょう。スバルの航空宇宙カンパニーは、今後数十年に渡って安泰といえます。

自動車産業と航空産業を二本柱に据えた、スバル。30年後に生き残っているのは、実は航空産業の方かもしれません。

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