てんとせん-17

だいぶんと時間が経ってしまった。
ここに戻ってきたわたしは、わたしであることを忘れてしまっていた。
わたしのなかにある断片的な記憶と、人の記憶の中のわたしは別人格だ。
風がふわふわと流れてきて、青草の匂いが鼻にとどいた。青草の匂いを嗅ぐと空を思い出す。真っ青な空に入道雲がどっしりと浮かんで太陽の光を遮ってくれる。真夏の太陽のなか、ラジオからナツメロが流れる中、車内で食べるお弁当。喉を通って、お腹を満たす。5分くらいで食べ終えて、うとうととしだす。エンジンの音と、駐車場を行き交うひとや車の雑音もはいってこない。覚醒しているのかいないのか、彷徨い続けるわたし。わたしはどこにいるのだろう。そしてまだみぬあなたに会えることはわたしの人生におこるのであろうか。このまま息をして、呼吸をする。呼吸をするたびに脳に空気が送られる。私の脳には酸素が足りない。たりない酸素の分だけ、わたしはわたしを見失いつづけている。

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