てんとせん-8

(とりあえず、近いでしょう。)
わたしは彼をこんなに近くでみたことがない。脳内真っ白になって固まってしまったわたしは全く言葉が出なかった。おさかなのようにくちをぱくぱくさせていたかもしれない。
とりあえずもういちど布団に潜ってみた。ベットサイドに座っている彼が話しかけてくる。
「でかけるけど大丈夫?」
私は布団をかぶったまま大きく頷いた。
「ほんとに?」
「…うん。」
「じゃあいってきます」
立ち上がった彼はしばらくガタガタと身なりを整えていた。そっと布団から顔をだすと、部屋の扉を閉めて出て行った。
(なんだこれは)
私はおそるおそる布団から出て、周囲を見回した。見慣れない部屋だけど彼の寝室のようだ。ふと、壁にある鏡を覗き込んだ。

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