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機構図に出会う はじまり

図書館のないまち

うちのまちに図書館がないことは知っていた。図書館がないまちにすみつづけるということが辛いけれど住み続けているのは、生まれ育った街だからとしかいえない。そのことが良いことなのかどうか、居心地がよいのかどうかを常に問いかけている。

コロナで身動きが取れなかったある日、町役場に勤めていた友人にLINEを送った。国から各市町村に補助金が分担されるという話を聞いたからだ。
「舞台の企画書とか、補助金の申請とかってどこに持っていけば協力してくれるの?」「うちのまちには文化課ないからね、教育委員会かな?」

教育委員会と文化課

文化芸術と教育が全くつながらなかった。むしろ真逆じゃない、って思った。その時、3年前、他の町の古民家カフェで公演をやったときのことがよぎった。町役場に後援をもらおうと持ち込んだときに、案内されたのも教育委員会だった。本庁舎とは別にある教育委員会の建物。そこでポスターや掲示用のチラシにハンコをもらった。なんで教育委員会だったのかその時に気づかなかったし深く考えなかった。これまでそんなことも知らずに舞台を続けていたことに呆れた。

住んできたまちでの文化活動は民間主導
子供のときから「町や行政に頼っても、役に立たないよ、動いてくれないから自分でやったほうがいいよ」と言われながら育ったことを思い出した。商店街も賑やかで、人口も多くて町民たちの力でなんとかできた時期だった。商いの繁盛しているまちは、そういうところが多い。文化に関して行政に頼ったり、相談したりすることはほとんどなかった。町となにかを一緒にするなんてことを考えたこともなかった。むしろ一緒にやるなんて格好悪いとさえ思っていたし、自分たちの力で舞台ができる環境がそれなりに整っていた。でも、今ここにその環境はない。町民たちは高齢化し、商店街はシャッター商店街になっている。町民は町内会を維持するのがやっとで自分たちの力で夏祭りをおこなうことも難しくなってきている。秋祭りには人だかりで溢れていた露店も、ぱらぱらと寂しくなって、自分たちの力だけでなにかを支えることはもはやできない。
そんなまちで図書館がないことは以前から問題になっていた。今は町民ボランティアの方々の尽力で、町じゅうのあちこちに本棚が置かれている。それに対して町からの支援はないことも聞いていた。かつて田舎に住むひとたちにとって外からくる情報源は本だった。

「それにしても私は地方の現状についてなにも知らなさすぎる」とため息をついた。さらに、「ほかの町はどうなっているんだろう」という疑問がうかんだ。いったいどういう状況なんだろう。文化課はどこの行政にもあるものだとおもっていたけど違うのかな。

とりあえず県内の全市町を調べたらなにかわかるかもしれないと思って、文化課を探しにMac bookを開いた。

わがまちの文化事情
香川県は8市5郡9町ある。日本で一番面積が狭い県。17箇所だから、そんなに多くない。とりあえず、自分の住んでいる町のことを知ろう、とわがまちの公式ホームページを検索した。トップページを眺めながら「町政情報」をクリックした。「町長の部屋」「人事行政」「町職員採用情報」「選挙町議会例規集」などの文字が並ぶ。それらしきものは見当たらない。私は今なにが知りたいのか改めて考え直した。
「どんな組織になっていて、どんな課があるのかが知りたい」
目的を定めなおしてホームページのトップに戻ってみた。
「役場の情報」から「役場案内」の文字を見つけたので、これだ!と思ってクリックしてみた。・・・アクセスマップに飛んだ。役場への行き方。空港からの道のりまである。間違ってはいない。気を取り直して「組織で探す」の文字をクリックしてみた。文字がずらっと並んで、部署名と連絡先(電話番号)が出てきた。このリストで町役場内にある課はだいたいわかったがやっぱり文化課はない。文化課がないことだけは確認して、次のまちを調べることにした。

市と町の違い
先に市から調べようと、お隣にある市を検索した。
今度は公式HPのトップに「市役所の組織」があったので早速クリックした。すると先と同じで文字がずらっと一覧表が出てきた。今度は総務部などと並列扱いで、教育委員会や消防本部まで出てきた。
ここでひらめいた。
「会社みたいに組織図みたいなのがあればいいんだ!」
次は「組織図」と入力してエンターキーを押した。

機構図と出会う
PDF形式になっていたので早速開いてみたら、フローチャート形式での市政の組織図だった。私は行政機構図というものを探していたのだ。
「これだよ。」
全体をざっとながめると、すべての管轄において市長がトップというわけではなかった。教育委員会、選挙管理委員会、議会などは別枠になっている。
早速「文化」の2文字を探した。市長トップにした枠は、総務部、市民生活部などが続き、消防本部で終わっている。ここまでに文化課はなかった。次に教育委員会から始まる枠が続く。こちらのトップは教育長だった。

「生涯学習課、文化振興係」

係とは言え「文化」の2文字を見つけた。そして市民会館や図書館も教育委員会に属していることも知った。

「やっぱり文化は教育長のもとにあるの?」

最初に抱いた違和感の原因は、教育のもとに文化があることだった。その違和感を抱きつつ、残りの市町もこの機構図が手に入ればこの作業ははかどるに違いないとおもって、次の市を調べることにした。
(続く)



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