てんとせん−18

同じ時刻に見上げる空でようやく呼吸ができる。
毎日の平穏は情動を封じ込めてようやく成立する。
私の唇から紡ぎ出される言葉は人をいらつかせてしまうのだ。
人々がまもりつくりあげたおだやかな生活空間がある。そこにおとされたわたしは恐怖に慄く。これまでも幾度となく繰り返された光景が思い浮かぶ。空気を乱し、場を荒らす。

呼吸を忘れ、手が震えてくる。じっと立ち止まって息を吸い込む。わたしにも呼吸はできることを思い出して、今度は息を吐き出す。それを何度か繰り返し、視界がひろがったら少しづつ目線を動かして現在地を確認する。酸素が指先まで行き渡ると手の震えがおさまってくる。そして、ようやく動き出す。

人は酸素が必要だ。だけど無意識にしているその行為すらも受け付けなくなってくる。自分を空間にあわせること、人に合わせることへ甚大な労力を使う。人の中で生きていくことが嫌いではない。一人でいる余白の過剰さに不安を抱きつづけている。誰にもさしだすことがかなわない、自分のためだけに使わなければならない時間の煩わしさから逃れたいと思わずにいられない。


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