てんとせん-13

かちゃりと音がした。細い光線が隙間からゆっくりと顔をだして左足の小指をなぞって照らしだした。こちらとあちらでは何かがちがうのかそれとも全く変わらないのかはまだわからない。光の幅が大きくなって身体を包み込むとふわふわとした白い空間にいた。
広くて、何もない空間だった。振り返ると扉は消えていたのでとりあえず歩をすすめることにしたけどほんとうになにもないのでどこにも向かうことはできないと知って周囲をぐるぐると見回した。わかるのは足元にある白い床の感覚だけだった。最初ふわふわと絨毯のような床がしばらくしたら木のように固くなったので靴のかかとでたたいてみたらコツコツと音がした。音が空間に広がった。しばらくするとまた様子がかわったのでもう一度床をたたくと今度は石のような感覚になった。
床にしゃがみこんで掌で触れてみたらわずかだけどドクドクと脈打つ振動が伝わってきたので耳をあてた。静まり返る空間の床の中から水がながれているような音が聞こえてきた。

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