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機構図のすすめ にかいめ

生まれ育った土地のことを好きな人はどのくらいいるんだろう。こっちにもどってきてから、地元愛にあふれる人たちや、地元を盛り上げようとしている人たちに何人も出会った。なぜこの人達は、こんなにもこの地に愛情を注げるんだろう。私の目にそんな人達はとても眩しく映った。
「私がおかしいんだろうなぁ。」
そう思いながら、月日を重ねるに連れて、旅行で訪れた人に問われると求められる以上の答えを返すようになり、移住してきたひとには地元あるあるを笑いをまじえながら繰り返すような技を身に着けていた。
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行政機構図が教えてくれたこと


行政機構図は8市のうち1市を除いてすべてホームページでダウンロードできた。一気に9町も検索してみた。行政機構図を探したけど、組織図や庁舎案内図が掲載されており、ダウンロードできる町はなかった。

1)教育委員会の中に、文化振興課(もしくは係)があるー3市
2)首長部局の中に文化振興課等があるー2市
3)文化振興課(もしくは係)がないー3市9町

これは、「演劇、ダンス、パフォーミングアーツをやろうと思っているんですが、場所使ってもいいですか?ポスターとか貼ってもいいですか?」とか役場に相談したら9割は教育委員会に案内されるということになる。
「そうか、9割か」と気付いてまた、ちょっと泣けた。私はこれまで教育をやっていたのかしら。あれ、何をしていたんだろう。

もう少し劇場のあるいくつかの都市も調べてみることにした。

すると文化に取り組んでいるまちの機構図は丁寧に複雑化されていることに気づいた。教育委員会の中にある町はほとんどなかった。(大阪市は例外であんなに民間が舞台を支えている地域はないとおもう。)教育委員会ではなく、首長部局に文化課がある市町のほうが、文化芸術への理解度が高い傾向にあると言っていい。
教育委員会ってなんだろう。調べだしたら沼っぽくて、知るには時間がかかりそうなのでリンクだけ張っておこう。

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最近こどもたちのお勉強を見る機会があるのだけど、その教室では、ルールとかお約束を覚えるように、勉強を「覚えて」いる。子どもたちはやりかたや方法を「覚えて」いる。なぜかというとわかることに重きを置くと時間も手間もかかるからだ。でも、そういう勉強はやればやるほど面白さや知的好奇心が失われていく。知らないことを知ることは本来面白いことでその力を支えるのが文化なのだと思う。好奇心や想像力を創造力へ。
私自身、今までそういう学校教育を受けてきたし、今もそれは変わってない。本来、学校では「ルール通りにやりなさい」と「自分でルール作りなさい」という両方をやらなきゃならない。ルールを覚えて行動することはずっとやってきた。でも、ルールを作っていく能力は養ってこなかった。

観たい舞台がないからつくるしかない

おそらく今も大阪でいたとすればこんなこと考えなかったと思う。なぜなら、その町には劇場が「ある」から。つくることから考え始められる「環境もひともある」。あるときには気づかない。失って初めて気づくもの。例えば、劇場のある町から、ない街に引っ越してしまったら、舞台をつくるためには、仲間を探すにも、場所を探すにも、まず外に出なければならない。

香川に帰ってきたとき、私の観たい舞台がないからつくるしかないと思っていた。つくるためには、劇場がなければ、でも小劇場空間などない。寺山修司風にいえば捨てる劇場さえないから、街に出てできる場所を探そう!って感じ。劇場文化がない地域で小劇場演劇はどんなふうに育つのだろう。その世界はどれだけちがったものになるか、どんなものになるか知ってみたい気はする。
この地で、舞台や文化芸術と生きている人たちを中心に「いろんな場所を劇場にしていく」のも面白いかなって思う。それにこういう作り方をしている作品はもうすでにあるから特別に新しいことではないけど、作る人が変われば、ここにしかないものになる可能性はある。

劇場の演劇は魅力的だし、私も大好きなことは変わらない。
劇場ができたら、私はまた劇場で作品を作れたら良いなと思う。
でも今はその環境を望めないから新しい世界を目指している同志と、「今、ここ」だから生まれた作品を作ってみようと思った。

文化芸術に携わっている人たちは、ものをつくると冷遇される合理主義な社会の中で、それでも文化芸術の力を信じてものをつくり続けている。そんな人に対して「すきなことやってるからいいよね」という言葉の暴力が常に追いかけてくる。その言葉を私達は否定しない。もう何度も何度も繰り返される言葉。教育と文化芸術の共通点はだれかのためではなく、自分のためにあるということ。学びは自分のためにあって、いろんなことを知り、感じ、心を豊かにする。だから、与えられるものではなく、自分で掴み取るもの。
(つづく)





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