てんとせん-14

まだ息はできる。
そのまま寝転がって目を閉じた。床がわずかに揺れて振動が伝わってきた。胸に手を当てて心臓が動いていることを確かめた。この小さな臓器はこれまで一度も動きを止めることなく血を生み、全身に送っている。この臓器が止まれば私は呼吸を止める。
ただ息をして生きることはできるけど息をしているだけでは飽きたらない欲望の塊がぐるぐると駆け巡っている。かつては心臓の音に耳を傾けることもなかった。そんなことを気にかけることはなかった。だけど今はこの心臓がとまってしまうことを危惧している。止まったとしても世界は一ミリもうごかないだろう。それを知りながら、ただ生きるのだけではあきたらない欲望の塊が叫ぶ声を幾度となく聞いてきた。今回もまたこの欲望は動き出すのだろうか。私はこの欲望にどんな名前をつけるのだろう。
ひとりでいきていく。私はただ寂しかっただけなのだ。
求められるままにいきてきた。この場でいることを誰かの記憶に残すために発した笑い声もただの虚勢で、さみしいという声を代弁した悲痛な叫びでしかなかった。

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