てんとせん-5

目の前にある扉は古びた鈍色をしている。木なのか、鉄なのか、柔らかいのか硬いのかは触ってみないとわからない。鍵穴は目線より少し上にある。背伸びをして穴を覗き込んでみても、霧がかかっているようにモヤモヤとしていて見通しが悪い。いずれにせよこの鍵で開くのだから別に今知る必要はないと思って、金色の鍵を鍵穴に差し込んだ。まわすと引っかかりがなくてグルグル回るので、一度抜いて鍵をまじまじと見つめた。なにかひっかいたような、傷のようなものが断続的に続いている。表面をゴシゴシと擦ってみると、なんだかよくわからない記号のようなものが書いてあった。文字なのかしら。あれ、それにしてもなぜわたしはこの鍵を持っているのかしら。

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