見出し画像

【SH考察:022】詩女神六姉妹の名前と配色の由来

Sound Horizonのアルバム『Moira』に登場する詩女神六姉妹。創世の三楽神の末妹神ハルモニアの娘達。
彼女達の名前の由来は、既にいろいろな人がまとめていることではあるが、私が一か所に情報をまとめたいというわがままで、自力でもまとめておく。
出来るだけ音楽的な知見が無くても理解できるように努めた。


対象曲

  • 6th Story CD Moiraより『神話 -Μυθος-』

考察

教会旋法せんぽう

六姉妹の名前の由来は、教会旋法が由来の可能性が高い。

そもそも旋法とは
とてもざっくり言うと、「曲に使う音の範囲や種類」だ。
音はドレミファソラシドレミファソラシドレミ……というように、階段状に並んでいる。そのうち、どこからどこまで、どの音を切り取るかを決めるのが旋法だ。

教会旋法とは
旋法の中でも、グレゴリオ聖歌で用いられた旋法。
グレゴリオ聖歌とは、ローマ・カトリック教会で歌われてきた歌。

教会旋法の種類
時代と、どう分類するかにもよって総数が変わるので、詩女神六姉妹に関係するものだけピックアップする。

六姉妹の名前と対応する旋法

長女Ιωνιαイオニア:イオニア旋法
ドで始まりドで終わる。ドレミファソラシド。
最初に教会旋法が考案されたときには無かったが、1547年に追加された。

次女Δωριαドーリア:ドリア旋法
レで始まりレで終わる。レミファソラシドレ。
8世紀頃(700年代)に教会旋法が考案された当初から存在した。
「ドリア」は古代ギリシャ人の一種ドーリア人に由来する。

三女Φρυγιαフリギア:フリギア旋法
ミで始まりミで終わる。ミファソラシドレミ。
こちらも教会旋法が考案された当初から存在。
「フリギア」はアナトリア(エーゲ海の東側、現トルコのあたり)にあった古代王国の名前に由来する。

図:紀元前900年頃のエーゲ海周辺
現トルコあたりにフリギア(Phrygia)があった
出典:GeaCron

四女Λυδιαリディア:リディア旋法
ファで始まりファで終わる。ファソラシドレミファ。
こちらも教会旋法が考案された当初から存在。
「リディア」もまたアナトリアにあった国の名前。

図:紀元前600年頃のエーゲ海周辺
フリギアがあった場所はリディア(Lydia)に置き換わった
出典:GeaCron

五女Αιοριαアイオリア:エオリア旋法
ラで始まりラで終わる。ラシドレミファソラ。

ちなみにΑιοριαは、google翻訳先生曰く「ァエオリア」みたいな、ほぼ「ア」が聞こえないような発音のようだ。
ただ英語ナレーションのアイクは割とはっきり「アイオリア」と言っている。

ちなみに、アイオリアと呼ばれる地域がエーゲ海周辺にあったのだが、綴りはΑιολία。「リ」については英語で言うL(λ)とR(ρ)の違いがあるが、「アイオ」の部分は共通。
地名ではアイオリアと言い、先方ではエオリアと呼ぶ、日本語での表記揺れが起きている。

また四女と五女の間で、ソから始まるものが飛ばされている。
ただソから始まる旋法はミクソリディア旋法と言って、女性の名前にするには無理がある。それで飛ばされたか。

六女Ροκιαロクリア:ロクリア旋法
シで始まりシで終わる。シドレミファソラシ。
他の旋法のさらに後から追加されたが、使われることは極めて稀だった。
「ロクリア」は、古代ギリシャにロクリスという地名があり、そこに住む人をロクリア人と呼んだことが由来と思われる。

六姉妹の色

六姉妹はそれぞれイメージカラーかのように、同じデザインで色が違う服を身にまとっている。
長女から順にみると、

長女イオニア :赤
次女ドーリア :オレンジ
三女フリギア :黄色
四女リディア :緑
五女アイオリア:青
六女ロクリア :藍

虹色……に近いが、6人なので1色不足している。紫がない。
Moiraの世界で紫と言えば死神タナトスなわけで、6人が死の色を避けていると見ればそれらしいかもしれない。

暖色お姉さん3人、長女から三女まではミーシャに関する歌を歌い、寒色妹3人、四女から六女はエレフに関する歌を歌う。

結論

ハルモニアの娘らしく音楽用語、かつギリシャに基づく名をつけられた6人であることがわかる。

―――

よろしければスキボタン(♡)タップ・コメント・シェアしていただけますと幸いです。
他にもSound Horizonの楽曲考察記事を書いています。

更新履歴

2023/05/12 初稿

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?