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コンサルよ、マネジメントの真意を探れ

ホタルイカの沖漬け(初物)窃盗犯として社長に糾弾されるカニカニ氏。冷蔵庫に監視カメラをつけろと騒ぎ立てる社長の前に現れたのは、佳乃氏であった。(前回


ホタルイカの沖漬けも好きだが酒盗もうまいよな。あれでパスタ作るとまじでうまいよな、、、っと現実に戻りますか。

◆正しい想像力

オフィスに一瞬の静寂が訪れる。

「あ、佳乃くん、、、」
目がスイミングしだす社長。
社長の動揺ぶりに動揺するオフィス内。

(一体、何が、、、)

ふと、運転手佐藤さんの言葉が脳内再生される

「つまり、そういうことです」(にやり)

つまり、そういうことか、、、、あいつ、、、ホタルイカの沖漬けを佳乃3号なのか4号なのか知らんが一緒に楽しもうとしていた、ってことか?

次の瞬間、私の想像力が正しく動作し再現ビデオが脳内再生される。
「今日は初物のこれを持ってきたんだ」
「きゃーホタルイカの沖漬け大好き!」
「ふふ、良かった。勿論そのあとは君も、、、」

くっそ!きっめぇぇぇぇぇeeee!!!

事情を知るが故、発狂しそうだ。まじできもいなおい、、

「ですが社長!」

くっそきめぇ再現ビデオを止めたのは、力強いカニカニ氏の声だった。


◆エレガントカニカニ

「やはり帰社時のメールはやめてよいと思うのです」

眉を下げ、困ったちゃん顔を作るカニカニ氏

(メール???)
(冷蔵庫監視カメラじゃなくて?)

「トライアルとして帰社メールを社長に送付することにしました。しかし社長もいつでもメールチェックできるわけではありませんし、ご負担になっているのでは?」

きょとんとするオフィス内。

「効果の薄いうち手については見直しを」

はっ。

そうか、、、佳乃氏登場に動揺しているということは、社長は佳乃氏帰社メールを確認できていなかったということ。だからこの施策は意味ないだろ?そう言いたいのか。

「、、、そうだな。まぁ!日報をその分しっかり書いてくれ!」
「議論ができてよかった!ありがとう!」

片手をあげ作り笑顔で部屋に戻る社長と、あら社内マネジメントの話で白熱していたのねぇと納得し自業務に戻る佳乃氏。

読者諸君、このエレガントさがわかるか?

話を逸らすことで社長を助け、
帰社メール義務をなくすことで社員を助け、
そして自らの地位も守り抜いた男、カニカニ氏ーー。

全社員、尊敬のまなざしを向けるのであった。


◆人はなぜマネジメントをするのか

「というわけで、契約内容は少し変更することになりました」

打ち合わせを欠席した副社長にブリーフィングをする。横で「意味あるんすかね、こんな変更」と口をとがらせる新人Boy氏をなだめ、次回打ち合わせのアウトプットイメージを合わせる。

ひと段落ついた時だ。

「ヒルズ君さ」

副社長がぽつりと呟く。

「人は何のためにマネジメントをすると思う?」

プロジェクト目標達成のため、じゃないんですか?尋ねる新人Boy氏を無視し、副社長が続ける。

「人はそれぞれの目的でマネジメントを行う」
「私は時々、わからなくなるよ」

頭の後ろで手を組み、天井を見上げる。

「マネジメントって何なんだろな」

---

えぇ!?焼肉いきましょうよ!ひと段落ついた金夜ですよぉ!騒ぐ新人Boy氏を置き去りにしてタクシーに乗り込む。

「なんで夜中2時に焼肉なんだよ」(*)
あいつやっぱり若いな、、、
ため息をつきながら副社長の言葉を思い出す。

そうだな。
社長は欲求を満たすために、副社長は保身のために、電撃担当部長は権威を示すために、マネジメントに取り組む。
そこに、プロジェクト成功への熱意はない。

「そうか、、」

プロジェクトをマネジメントするんじゃない。
プロジェクトマネジメントの裏側にある欲求をマネジメントする、それが求められているのか。

「そりゃそうだ」

各々の欲望は果てしなく、報酬で満たせるものではないのだ。当たり前すぎる事実を噛みしめる。これまでも無意識のうちに相手の欲求を理解しマネジメントしてきたはずなのに、明文化した途端に虚しさが心を襲う。

「そりゃそうだ、でよいのか?」

窓に目を向ける。
暗闇に浮かぶは疲れた自分の顔だけだ。

「よくないんだろ?」

目を閉じる。

人は何のために、マネジメントをすると思う?

空虚な問いに沈む心に振動が訪れる。カニカニ氏から社長宛のメール、私はBCCで入っている。件名「申し訳ありませんでした」に心を痛めながら本文を開く。


ぐほっ!?


”社長、このたびは大切なホタルイカの沖漬けを頂戴してしまい申し訳ございませんでした。家族でおいしくいただきました!^^”


ちっきしょう、勝てねぇ。。。


何のためにマネジメントをするかって?
そりゃ人生を楽しむためだよ!

そう言いたげなメール文面に腹筋を引きつらせ、にやけ顔のまま我が家に向かうのだった。

- 地獄のマイクロマネジメント編 完 -

(続く)

(*)作中でも度々出てくるが、コンサルタントの飲み会/打ち上げの時間に常識はない。他業界転職時に同じ感覚で飲み会を決行すると一瞬でパワハラ認定されかねない。コンサル諸君気を付けよう。

サポートは全て執筆中のコーヒーとおやつ代にあてられます。少しでも気に入ってくださった方、執筆者に続編に向けたエネルギーを与えてやってください。