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意外。転職紹介(人材紹介)会社は、零細がねらい目。転職紹介業界のからくりを暴露 by転職定着マイスター川野智己

 転職をエージェントする転職先紹介(人材紹介)エージェント会社は、意外なことに、中小・零細がお薦めです。 

 リクルート社やビズリーチ社などの大手エージェントが掴んでいない、魅力的な求人案件を隠し持っているからです。併せて、転職後のフォローも手厚いのです。
 以下、その秘密をお話します。

 私の名前は、田江忍(たえしのぶ:女性、37歳)。 
 大手転職エージェントの「ビリルート㈱」に、営業担当として従事していました。

  リーマンショック時における不況で、大きな人員整理の憂き目に会い、解雇されました。皮肉なことに、私自身が再就職活動に迫られたのです。

  エージェント企業は、一般に人材派遣業と転職先紹介業の二つを事業展開しています。似ているようで、この二つはビジネスモデルが異なります。

 不況になっても、クライアント企業は派遣社員の首は切りません。
 契約期間途中の解約は違約金が発生するし、既に社内の貴重な戦力として派遣社員が組み入れられているからです。  

 一方、これから新規で中途採用する求人案件は、確実に採用中止にします。不況下に、海の者とも山の者ともわからない人材を採用し、人件費を増大させ、その年収の3割の手数料をエージェント企業に即金で払うはずがないからです。

 派遣社員の費用は、日々の労務費の一環として組み入れられていますが、一方、人材の中途採用は、未知数の投資になるからと言えばわかりやすいでしょうか。

  必然的に、エージェント企業は、自社の事業のうち、人材派遣事業を温存し、転職先紹介事業をリストラします。 
 よって、転職先紹介事業に所属の私はクビになった次第です。トホホ。。

 実は、私のようなエージェント企業に勤務していた社員は、転職・再就職に苦労するのです。
 これって、かなり皮肉なことですよね。

  まるで、経営コンサルティング企業が倒産するようなものです。

 何故かって?
 考えてみてください、他のエージェント企業からしたら、驚かれます。なにせ、現役のエージェント企業に勤務の、つまり、競合他社の社員が求職登録してくるわけですから。
「再就職先を紹介してください。」と。
 
「(競合先企業を)既に退職した」と説明しても、なかなか信じてもらえません。「わが社の抱えるクライアント企業の求人案件情報を、スパイのように盗みに来たはずだ。」と、疑われてしまうからです。

  どのエージェント企業においても、クライアント企業の「こんな人材が欲しいから探しておいてくれ」という求人案件情報は、秘匿すべき重要な営業情報なのです。営業担当が、足で集めてきた見込み案件なのですから。
 そこに、競合先の社員が、求職者と称して現れるのですから、警戒され、
疑われても、そりゃあ、仕方がありません。

  結局、私は、半年間どこにも再就職できませんでした。 
 その後、リーマンショック後の穏やかな景気回復もあり、最終的には、知り合いの伝手(つて)を使って、従業員2人の転職エージェント会社「松本紹介株式会社」に入社することができました。

 従業員と言っても、社長(通称:ゲンさん)とその奥さまの二人だけです。 
 築地の雑居ビルの2階を拠点としています。 
 ちなみに、1階には干物屋がテナントとして入っているのは築地らしい光景といえるでしょう。当時は、築地市場が豊洲に移転する前で、加工食品企業が多く拠点を構えていました。

  給与は減ったものの、実は、生活は楽になりました。 
 と、言うのは、前職の大手エージェントでは厳しい歩合制の給与制度が敷かれていたので、毎月が戦争でした。 

 必然的に、明らかに「この人は、この企業ではマッチしない」と思われる案件でも、強引に求職者を説き伏せて入社させることも多かったのです。
 結果、定着せずに辞めても、私たちにエージェント会社は気にしていません。むしろ、違う人材をその企業に紹介すれば、また売り上げになるから、ビジネスチャンスだととらえています。 
 自分の生活が懸かっていたとはいえ、今思えば、求職者の方には、悪いことをしたと反省しています。

  エージェント企業は、大手になればなるほど、大きな広告費が必要となります。中でも、質の高い登録人材(求職者)を数多く集めることが企業存続の生命線になります。一昔前に「オー人事」と頻繁にテレビCMが流れていたことを覚えていますか。莫大な広告費用が必要なのです。
 
 また、都心のおしゃれな街に家賃が高い事務所を構え、バックヤードの人員の人件費を賄う必要があるのです。東京で言えば、南青山や渋谷の綺麗なビルに入る必要があるのです。求職者には女性が多いですからね。
 法令順守にも、必要以上の時間とコストを掛けなければなりません。 

 だから、営業マンにも高い歩合給の制度ではっぱをかけていたのです。

  一方、この零細のわが社は、その大きな負担・呪縛から免れ、自宅兼事務所に机と電話を設置しているだけという徹底ぶりです。無駄なコストはかけていません。だって、事務所が、築地の干物屋の2階なんですよ。。。。

  しかし、驚くことに。経営が安定しているのです。
 わが社、松本紹介株式会社は。。。
 その秘密は何なのか。思い当たる節があります。 
 どうやら社長のゲンさんに秘密がありそうです。 

 ゲンさんは、元冷凍食品会社の開発担当部長でした。 
 業界で初めて餃子の冷凍食品化に成功したヒトだそうです。
 あだ名は「餃子マン」です。
 井村屋の中華まんではありません。餃子の第一人者という意味です。
 
 画期的な商品開発の過程で、多くの取引先と協働をしてきた経験から、加工食品業界に未だに顔が広いのです。
 当時の取引先の仲間が、各社で各々出世して社長になっているのです。 

 餃子マンでありながら、自分のノウハウを「包み隠さず」開示してあげたそうです。ゆえに、ゲンさんの人徳が広まったようです。 
 現に、ゲンさんはとても優しい方で、私は、ゲンさんから「ヤキ(焼き)」を入れられたことも、やり玉に「揚げ」られたことも、「無視(蒸し)」されたこともありません。
 餃子マンでありながら。

 勤務先の大手冷凍食品を定年退職前の早期退職に応募し、この松本紹介㈱を立ち上げたそうです。
「松本の社名を広めたい」
目を輝かせて語ったそうです。ちなみにゲンさんの苗字は、加藤です。

創業の理念は、
「これまでの経験を通じて、食品開発の業界を盛り上げたい。」 
そう思ったそうです。 
 このセリフは、未だにクライアント企業への訪問時に口にします。
 そのたびに、クライアント企業はゲンさんに感謝して聞いているのです。 
 いわば、クライアントの心をつかむ「鉄板ネタ」でもあります。
 餃子マンだけに。。


  背の高さは、160cm足らずで、毎日同じ、よれよれのダブルのスーツに身を包み、猫背で歩きます。
 
 ボソボソと小さい声で話しますが、クライアント先の社長は吸い寄せられるように、ゲンさんに近づいて、その話に聞き入っています。 
 絶大な信頼を得ているようでした。

  逆に、ゲンさんはクライアント先では社長以外とは会うことがありません。中小企業では、社長が全ての権限を握っており、人事部長には、全く権限など無いことを知り尽くしているからです。 
「将棋で言えば、”王将”だけを狙え」 これがゲンさんの口癖です。 
 餃子マンだけに。。。

 今日は、求職者を引き連れてのクライアント企業の採用面接の日です。      従業員数1500名。大手企業のPB(プライベートブランド)で、製造を請け負っている企業で、無借金の超優良企業が訪問先です。 
 BtoB企業なので、一般的な知名度はありませんが、福利厚生も充実した家族的な会社です。 
 隠れた優良企業というところでしょうか。

 ゲンさん、求職者そして私田江の3人で、クライアント企業の玄関で待ち合わせを行い、企業の受付に向かいました。

  セキュリティが厳重な受付を、なんと、ゲンさんは、 
「どうも、ご苦労さん」と 片手を上げてスルーパスなのです。 
 従業員ですら、形式的にも警備員に社員証を見せて通過しているにも関わらず。どこまで、信頼を勝ち得ているというのだ。

 驚くことは、まだまだ続く。

 なんと、その採用面接の場にも、ゲンさんは同席している。 
しかも、面接官からの質問には全てゲンさんが回答している。
こ、これは、志村けんのコントなのか。
「ダイジョウブなのか」
繰り返しになりますが、ゲンさんの苗字は志村ではなく、加藤です。

  
 私の十数年に及ぶ大手エージェントの経験では、信じられないことばかりだ。ミスタードーナツの店舗で点心が食べられることと同じくらい、理解できませんでした。
 このクライアント企業との蜜月ぶりは、いったい何なのか。
 恐るべし、零細転職エージェント。
 
 その秘密は、WEB上の転職のポータルサイトにあることが分かったのは、その2か月後のことだったのです。                         
                          (続く)

 

※次回の後編は、零細エージェントの強みの秘密と、求職者としての活用の仕方について書いてまいります。

 <これまでの投稿記事一覧> ~気軽に、覗(のぞ)いてください~

34 後編 敵か味方か。労働者に近づく外部ユニオン(労組)。その実像と虚像に迫る

33 本当に味方?労働者に近づく外部ユニオン(労組)。その実像と虚像

32 後編。食べて覚える人間関係。魔法のレシピ『ハンバーガー理論』 おかわり編

31 秘伝。人間関係力を磨きたいなら食べよう『ハンバーガー理論』

30 不倫。正妻と愛人が職場で刃物沙汰。何故、役員だけが不問なのか

29 1・2・3!プロレスラーの人事評価。必殺テキトー固めでギブアップ

28 給与倍増と心地よさ。気弱な30代女性が役員に。その「穏やかな幸せのつかみ方」

27 後編。心を病んだ社員の解雇をめぐる、ブラック産業医と主治医の驚くべき結託

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25 密室。事件は会議室で起きている。本社内で人事評価はどう決まっているのか。

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23 回避。試用期間にクビにならない方法。社内護身術・匠の技

22 困惑。昇進したとたん仲間が疎遠に。ある女性リーダーの戸惑いと決意

21 平穏。辛い毎日は終わりにしたい。職場で心穏やかに過ごす方法

20 裏話。誰も知らない多面評価(360度評価)の使われ方

19 大喝!「言葉足らず」の張本勲氏も学ぶべき、中途採用面接での意図・真意の伝え方。意地悪質問をクリアせよ

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16 開幕。IOC(虐めオリンピック)の金メダル。転職者を襲う「合法的な仲間はずれ」のカラクリ 

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7 実話。暴露します!完結編。大手企業の人の減らし方。誰も知らない人材紹介会社と組んだ陰のカラクリ。<転職先での屈辱と見えた光編>

6 実話。暴露します!中編。大手企業の人の減らし方。誰も知らない人材紹介会社と組んだ陰のカラクリ。<社内解雇と社内職探し編>

5 実話。暴露します!前編。大手企業の人の減らし方。誰も知らない人材紹介会社と組んだ陰のカラクリ。<人材追い出し編>

4 実話。その転職、成功ですか。大手企業の子会社の社員として働き続けること

3 実話。嫌われ者の為の仲間づくり。“マユラー”に学ぶ転職定着の極意

2 実話。転職者への歓迎のエール、それは「殺害予告」。その意外な犯人と驚愕の黒幕とは

1 転職者の転職先での定着のために

 

※毎回、ご一読いただき誠にありがとうございます。書き記した内容は、私川野が大手人材紹介会社の教育研修部長時代に、見聞き、体験した「実話」です。よって、個人名や企業名が判明しないよう若干の表現上の工夫をしたり、現代風にアレンジしております。何卒ご了承願います。なお、

 

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