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『Parallel Method』の読者のための補足

 『Parallel Method』(以下:本作)はフィクションである。 本作は、独自の時流から現実世界へと接続したとして〈自らをノンフィクションと主張する物語〉である。作中、読者にそれについて肯定あるいは否定を要求する言及がなされるが、無視しても応じてもかまわない。
 〈灰色の街〉の文化の発展は、定常な時間経過の法則を無視している。
 〈核暦〉という暦で、10年ごとに年頭を区切る。幻子時核の発見による学術的な世界認識の更新が由来である。
 本作には、人類が約8千年の眠りに就き目醒めてからの数百年余を体系する「瞻(せん/まばる)暦」や、〈特異日〉を境に分岐した「核暦」など平行世界が複数存在する。

 〈幻子時〉はパラレル・メソッドのタイムシグネチャ(構造的非論理記号集合体/エレクトロニカ・ファンタジー界における疑似音楽的計時表現)とも解釈される。
 無限・矛盾・錯覚・意識。科学が正しさを主張し、それが反証されるように、夢幻もまた正しく、反転する。

 〈灰色の街〉は、グレゴリオ暦1917年に発生した異常時象が原因で時流が分岐した世界に存在する。
 本作において〈灰色の街〉が舞台となる第9核暦8年は、グレゴリオ暦2015年に相当する。

 上記のように時象に異常が生じているため、奇妙にアナクロな世界で、蒸気機関車が走り、無骨な卓上電話機や柱時計を用いるのが主流である。電子、小型端末は都市部にすら存在しない。

 ファストフードはある。インターホンはない。巨人はいる。電線はない。電子音楽はある。CDはまだない。歌う幽霊はいる。個人の自我はない。

 サファイア・ゴーストが「無縁を主張する」のは、現実世界(の音楽)との関連性であろう。ルーツをもたない、接続先の世界とは無関係だという意思表示は、メタフィクションに自覚的な(無自覚な登場人物が多い)本作の登場人物としては、非常に珍しい。

 GwHが結成された年は、サファイア・ゴーストと容貌が瓜二つの時計修理工、クエチア・シャープ(第7核暦7年[1994年]生まれ)の没年(上記の通り、2015年相当)である。サファイアは、核暦世界に存在しないAI技術(人々には魔法のように認識される)を利用し、瞻暦に詳しく、そして【人前に決して現れない】。

 随時加筆。

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