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第3話「カルチャーショック」

大学3年生の冬休みを利用して念願のフィリピン、
セブ島へ短期留学に行った。


滞在期間は16日程度で、航空券、宿泊費〔寮〕、
授業料、食費を入れても20万円程度だったと思う。


今でこそフィリピン留学は主流になってるけど、
当時はまだ珍しくて


「フィリピン?なんやタガログ語でも勉強
しに行くんか?」


と、フィリピン人が英語を話せることを知らない
友達や親戚にはそんなことを言われた記憶がある。


私は大学1年生の頃からフィリピン人と
オンライン英会話をしてたから、フィリピン人
が英語を上手に話せることは知っていた。


私が行くセブ島の英語学校は日本人がオーナー
ということで日本人の留学生が多く、ネットの
口コミでも授業のプログラムがしっかりしてる
ことや食事も日本人向けに考えられてることを
確認していたから不安はなかった。


しかし初めて海外に1人で行くので、
不慣れな海外の日常にはかなり不安があった。


治安は大丈夫なのか。


通貨の価値や移動手段は分からない。


ペソ⁇
〔フィリピンの通貨〕

トゥクトゥク⁇
〔タクシーみたいな乗り物〕


何をどうすればいいんだ。



しかし私が選んだ学校は親切だった。


海外初心者の私でも、学校に行けば日本語が
話せるスタッフが両替の仕方や移動の仕方なども
教えてくれると案内があり、そして学校のスタッフ
が空港から学校までを迎えに来てくれると事前に
連絡をくれていた。


良かった。


これで問題は解決された。


セブの空港に到着すれば、学校の看板を
持ったスタッフが入国ゲートで待ってる
ということを事前に伝えられていた。


が、


セブ空港に到着したが入国ゲートには、、、


誰もおらん!!


え、どういうことや!?


渋滞とかで遅れてるのかな?


私は空港内を動き回ろうとしたが、
迷子になった時の鉄の掟を思い出した。


「その場を動くな」


そうだ、迷子になった時は無闇に動いたらダメだ。


信じろ、必ず迎えはくる。


学校側と事前にやり取りしていたじゃないか。


1時間近く待っていたが、誰も来ない。


どうしよう。


連絡を取ろうにも電波が届かない。


このスマホって海外でも使えるんじゃないの?


初の1人海外の私はSIMカードのことも
知らなかったし、スマホが国を超えたら
電波が使えなくなることも知らなかった。


そうだ、Wi-Fiさえ繋げればメールは
できるんじゃないか!?


空港のWi-Fiを繋げてみると、ネットが繋がった。


学校側に連絡をしようとしたら、私が飛行機に
乗ってる間に学校側から連絡が来ていた。


「ごめんなさい、1人体調不良で出勤できなくて、
夜間のスタッフが私1人だから空港には迎えに行けない。

タクシーで学校まで来てください。

お金は後でお支払いするので、一度建て替えて
おいてください。」


だから迎えが来なかったのか。


それは仕方がない。


しかし私は1番安いフライトでセブ島に
来ていたので、到着したのが深夜0時を
超えていた。


外に出るのも怖いけど、行かないと
一生この空港から出られない。


学校の住所をもう一度確認し、
一度大きく深呼吸をして、自動扉を出た。


モワッとする空気。


湿ったような、何かを発酵させたかのような、
独特の匂い。


これが外国か。

これが東南アジアか。

これがフィリピンか。


自分の足で外国に立てたことに誇らしさを
感じていた。


そしたら、

「タクシー!!!」

と爆音で話しかけてくるガリガリでタバコを
右手の人差し指と中指に挟んだおっちゃんが
近寄って来た。


他にも「タクシー!!」と言いながら
何人かのドライバーが寄って来たけど、
1番最初に話しかけられたガリガリの
オッチャンに乗せてもらうことにした。

 
空港から学校に備え付けられてる寮まで
行くのに約20分。


ガリガリのオッチャンはタクシーメーターを
もちろん使わず、いくらか値段を言ってきたけど、
確か日本円で3000円くらいだったと思う。


今思えば結構ぼったくられてるけど、

「深夜はそれくらいかかるんだよ」

という謎の理由に何も言い返せなかった。


それよりも早く寮に行きたかったし、
払えない金額じゃなかったのでおっちゃん
の言い値で了承した。


空港から寮までの景色を見て驚いた。


ビニールシートで作られた家が数百メートル
並んでいたり、野犬が歩いていたり、
「バン!!」という音が鳴って、銃声か!?
と思ったら、深夜だというのに小学生くらいの
子ども達が爆竹を使って遊んでいたりしていた。


私はかなりビビっていたが、タクシーのおっちゃん
は陽気に鼻歌を歌いながら運転している。


これがセブ島の日常なのか。


寮に到着し、3,000円のお金を請求された。


私は日本の空港で両替したばかりで、
日本でいう一万円札しか持ってなかった。


「Sorry,I only have  this peso.

Is it OK?」
〔すみません、今大きいのしかなくて、
これでもいけますか?〕

と質問すると、

「Yes I have charge.」
〔お釣りあるから大丈夫〕

と言われた。


私は大きいお札でお支払いし、お釣りとレシート
を受け取った。


念のためお釣りの数を間違ってないか
入念にチェックをした。


タクシーの運転手もぼったくりが
多いと聞いていたので。
〔まぁ既にぼったくられてるのだが〕


タクシーから降りて、スーツケースを
トランクからとり出した。


それにしてもこのモワッとした暑さ、
日本ではあんまり体験したことのない。


寮の前に来たら、鍵がかかっていた。


足元に何か通ったのを感じて、下を見ると
ゴキブリが何匹もいた。


うわ、むちゃくちゃおるやん!


やっぱりこんな熱かったらゴキブリの
聖地になるよな。


虫が苦手な私は事前に調べてたので
驚きはしなかった。

まぁガッカリしたけど。。。


しかし、寮の屋根の下でそんな環境でも
親子3人が川の字になって眠っている。


その隣には野良犬も眠りについている。


異様な光景だ。


空港から寮に移動したこの30分弱の時間で
21歳の私はとてつもないカルチャーショックに
あい、感情が忙しかった。


ウトウトしていた警備員が私に気づいて
話しかけてきた。

「Sosho?」

「Yes.」

警備員のオッチャンはスーツケースを持って
寮の受付まで連れて行ってくれた。


受付に到着するとメールのやり取りしていた
フィリピン人女性のスタッフが

「ごめんね、迎えにいけなくて。」

とお詫びをしてきた。

彼女は少し日本語も話せるようだった。


タクシー代を建て替えていたので、
レシートをお渡しすると、請求された
金額を見て

「あら、やっぱりやられたね。

でも、まだマシか。

ひどい時だとこの3倍くらいふっかけて
くるドライバーもいて、相場の分からない
日本人は払っちゃうのよ。」

と言われた。


お金を受け取った後、次は学生証の手続きなどで
私がいくらかお支払いする時が来た。


私はタクシーの支払いをした時に崩した
お金でその手続きに関するお金をお支払い
しようとすると、スタッフが急に大きな声で


「え、、、これ、フィリピンペソじゃないよ!」


「いやいや、何言ってるんですか。
このお金はさっきドライバーからお釣り
でもらったお金ですよ。」


「ちょっと待って、お釣り全部見せて!」


と言われて、私は先程タクシーの運転手
か受け取ったお金を全部見せた。


全て、偽札だった。


フィリピンで生活してる人なら絶対に
気づくけど、私のような初めてフィリピン
に来てる人ならおそらく分からない。


そういえば移動中に
「初めてフィリピンに来たのか?」

とか

「海外には行ったことあるのか?」

とか

あの会話は今思えば私を騙せれるかどうか
見定めていたのかもしれない。


クッソーやられた!!


初の海外1人渡航は、初日に、それも
1番最初に関わったフィリピン人にぼったくられた。


ぼったくられてた一万円という金額よりも、
日本では起こり得ないことが初っ端から
起きたことのショックが大きかった。


だが、数日後に起きるショックは
こんなもんではなかった。


そのショックがいずれ靴磨きトラベラーの原点
になるとはこの時は知らない。


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第4話予告

すごく素敵な先生に出会えた。
彼女は日本に来たいという夢を持っていた。

「だったらお金貯めて来ればいいじゃん。」

私の軽はずみな発言に彼女は怒った。

なぜフィリピン留学がこんなに安くで
行けるのか、悲しい現実を知ることになる。


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