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第4話「もし自分が逆の立場だったら、、、」

フィリピン留学での日々はかなり充実していた。


1コマ50分授業で1日3コマが個人レッスン
で2コマがグループレッスン。


フィリピンに来る前から3年近くオンライン
英会話をしていたので、ある程度日常会話
はできていた。


そこから2週間、どっぷり英語漬けの日々を
過ごせたのでかなり英語力の向上と今後の課題
が見えた。


しかし、この2週間「で最も学んだことは
「英語」ではなく、自分がものすごく恵まれた
環境で育っていた」ということを知れたこと。


セブ島に留学に来た人の中には、最初は授業
に出るけど途中から遊びに走る日本人もかなりいた。


リゾート地としても知られるセブ島には
魅力的なビーチもあるし、カジノもあるし
クラブだってある。


それに日本人は結構モテるのだ。


「午前中授業をサボって海に行こう」

とか言ってる人らを見て、

「あいつら何しにフィリピンに来てん」

と私は思っていたと同時に、彼らを羨まし 
くも思っていたのだ。


私は決して裕福な家庭で育ったわけではないので、
留学に行くお金がなかった。


就職活動の前にフィリピンに留学しようと計画して、
大学一年生の途中から毎月5000円を深夜の
コンビニでアルバイトして貯めたお金でセブ島
に来ていた。


部屋も1番安い8人部屋。


しかし授業に出ずに遊んでる奴らに限って
近くにあるマンションをレンタルして、
快適な1人暮らしをしていた。


彼らは両親にお金を出してもらって
数ヶ月留学に来ていたのだ。


もっとウチに金があればなぁ


と本当は羨ましかった。


ただそんなことを思っても仕方がない。


自分は自分のできることに集中しよう。


私は身銭を切ってわざわざフィリピンまで
英語を学びに来たので、一コマも無駄にせず
に授業に出た。


個人レッスンの先生だったアニーは
気さくで可愛らしく大好きな先生だった。


毎日アニーの授業を受けるのが楽しみだった。


間も無くこの留学経験が終わるという頃に
アニーが夢を語ってくれた。


「私はいつか日本に行きたいの」


私はそれを聞いた時に、そんなの本気出せば
いつでも行けるやんと思った。

総将
「来年か再来年、来なよ。

しばらくお金貯めたら来れるよね。」


アニー
「そんな簡単に言わないで!

しばらくどころじゃないよ。

私達フィリピン人が日本に行くには、
どれだけお金を貯めて、いくつもの
書類を提出して通らないと、ビザが落ちないのよ。」


そして、アニーは自身の給料を教えてくれた。


8,000ペソ。


日本円で約2万円だ。


2万円!?


学生の私でも、2日頑張れば充分に稼ぐこと
ができる金額を1ヶ月働いてアニーは稼ぐのか。


フィリピン人と日本人の人件費は1/10と
言われている。


ちなみに私の英語を教えてくれてたアニーは英語
とタガログ語〔フィリピンの公用語〕とセブワーノ
〔セブ島の人らが話す言語〕と少し日本語を話せた。


4ヶ国語を話せるほど優秀なアニーが月給2万円
ということを知った時は衝撃だった。


アニーは2万円の給料から弟の学費や
家族の食費を払い、ほとんど自分のため
にはお金を使わない。


アニーのようなフィリピン人がたくさん
いることを知った。


人生のスタートラインは平等ではない。



セブ島に親のお金で留学に来たけどずーと
遊んでる人もいたら、


私のように自分で稼いでセブ島に留学しに
来た者もいれば、


アニーのようにどれだけ働いてもお金が
残らない人もいれば、


学校の屋根を使って害虫や野良犬が
いっぱいいる路上の上で川の字になって
眠っている家族もいる。


自分はどうだ。


もしかしたら、ものすごく恵まれた
初期設定から人生をスタートできてる
のではないか。


暑かったらクーラーをつけれるし、
寒ければ暖房をつけれて、
毎日美味しいご飯も食べれて、
大学にまで通うことができて、
好きな野球もすることができて、
ちょっと英語勉強したいと思ったら
自力で稼いで外国に来ることができて、


やりたいと思ったことを工夫すれば
挑戦できる私は、かなり恵まれてる人生
だということに気づいた。


そういえばセブ島に来て1番最初に乗せて
もらったタクシーの運転手に偽札をお釣りで
渡されて、ぼったくられたけどあのおっちゃん
はかなりガリガリだったな。


あのお金はもしかしたら大切な誰かの 
腹を満たすために使われてるのかもしれない。


もし、私が生まれた場所がフィリピンで
平均2万円の給料で家族を養っていかないと
いけないとしたら、、、


私も自分よりもお金に余裕のある外国人
からぼったくって、そのお金で子ども達
に美味いご飯を食べさせてやるかもしれない。


自分が逆の立場だったら、あのタクシーの
運転手と同じことをしている可能性は充分
にある。


そんな現状だということは、わざわざセブ島に
行かなくてもネットで調べたらわかることだ。


私もうっすらは知っていた。 


でも、"知っている"と"経験する"は
自分の受け止め具合がこんなにも違う
ことなのかと感じた。


一つの国、一つの街でも私が育った日本とは
これほどまでに違う価値観、文化、暮らし。


いつか、自分の目で世界を見てみたい。


もし、私がこの国で生まれ育っていたら
どんな生活をしていたのかを考えたい。


違う環境で生きてる人達と膝と膝を突き合わせ
て話をしてみたい。


大学三年生の冬「世界一周」という
新たな夢ができた。


まさか、数年後に本当にやるとは
この時は思いもしなかったが。


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第5話予告

大学を卒業する前に初の1人旅。

カンボジアのシェムリアップで出会った
日本人世界一周中の人の話を聞いて感じた
興奮と疑問。

貯金だけで世界一周すると、諦めの旅に
なるのかもしれない。

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