見出し画像

第5話「ピラミッド入場しなかった問題」

大学4年生の夏休み、就職活動も終わり、
人生初の東南アジア1人旅に出た。


タイ、カンボジア、シンガポールの3ヵ国、
2週間の旅だったけど、当時の私にとっては
大大大冒険だった。


電車に乗って目的地まで行くことも、

レストランで注文をすることも、

観光地で現地の人から絡まれることも、

何もかもが初めてで一つ乗り越える事に
経験値が貯まって成長した気がした。


「外国は精神と時の部屋」のようだ。
〔ドラゴンボールに出てくる強くなるための部屋〕


自分の足で異国で目的地に行ったり
現地の人とコミュニケーションを取るだけで
「俺、外国で生活できてるやん!」って
自信という戦闘能力が向上していった。

#そしてスーパーサイヤ総将になった



タイ、バンコクで5日ほど過ごした後、
カンボジアのシェムリアップに移動した。


長いバス移動でクタクタになりながら
予約していたゲストハウスに到着したら、
見た目は私より10個ほど年上の日本人の
方がいるのを目にした。


タイではヨーロピアンが多いゲストハウスに
泊まっていたので、日本人には会わなかった。


5日間も日本人に会わないなんて人生で
初めてだったので、シェムリアップで久しぶり
に日本人に出会した時は嬉しくて私の方から 
話しかけに行った。


彼は山下さんと言った。


総将
「山下さんはなんでカンボジアにきたんですか?」

山下さん
「私は世界一周を西回り〔アメリカから〕でして
いて、特に用があったわけではないけど
カンボジアはすごく良いと旅先で出会った人から
聞いてたから来てみたんだ。」


総将
「えー!世界一周されてるんですか!

現役で世界一周してる人に初めて会いました。

私もいつか世界一周したいと思ってるんです。

どうやったら世界一周できますか?」


"夢を叶えたかったら、やったことがある人、
現在やってる人に聞いた方がいい"


と植松さんというロケットを民間企業
で打ち上げてる方が言ってたのを思い出した。


私はフィリピンに短期留学したのをきっかけに
「世界一周」という夢が芽生えており、
現在世界一周をされてる山下さんに聞いてみた。



「私は現在35歳で、10年くらい前から
人生で一度は世界一周をしたいなぁと思って、
世界一周するためにはお金が必要だから貯金
することにした。

世界一周って期間や訪れる国の数で予算も
変わるけど、とりあえず300万円くらい貯めて
から行こうと決めた。


サラリーマンをしたり、深夜は工事現場の
アルバイトをしたりして、地道に貯金して
ようやく300万円のお金を貯めることができた。


そのお金が尽きるまで世界一周しようと思って、
2年ほど前から節約しながら移動して、50ヵ国
くらいは訪れることができたよ。


もう私の旅も終盤で、そろそろ日本に帰る所だよ。」


山下さんはすごく気さくな方で、
話していて面白かった。


シェムリアップに滞在した数日間は一緒に
観光地に行ったり、ご飯を食べたりした。


私は山下さんの世界一周の経験を聞くのが
好きで、いろんな国の話を聞かせてもらった。


ある時、エジプトに行った時の話を
してくれて、ピラミッドの前で山下さん
が写ってる写真を見せてくれた。


「え、ピラミッドってこんなに大きいんですか!?」


教科書でしか見たことがないピラミッドに 
実際に行った山下さんの話にテンションが上がった。

総将
「ピラミッドの中って、どんな感じなんですか?
写真見たいです。」

 
山下さん
「ピラミッドの中の写真はないんだ。」

総将
「あ、ピラミッドの中は撮影禁止だったんですか?」


山下さん
「ピラミッドの前までは行ったけど、
中には入ってないんだ。

思ったよりも入場料が高くて、入るのやめたんだ。」


総将
「そうなんですか!?


でも、入場料ちょっと高くても、エジプトまで
行く時間やお金のことを考えたら、行った方が
いいような気もするんですけど。」


と、今思えばいろいろ事情があるはずなのに
生意気にもそんなことを私は言ってしまった。


でも、その発言に対しての山下さんの返答が
後に靴磨きトラベラーという活動に繋がること
になる。



山下さん
「私は300万円を持って世界一周に来て、
どの国に、どの街に、どれくらい滞在するか、
今日どれくらいの予算で1日を過ごすのかを
かなり細かく考えている。

だから2年間も旅をすることができたし、
50ヵ国訪れることもできた。


ピラミッドに入らなければ、その入場料の
分を他の国での滞在費に使えて、もう数日
旅を続けられることができるんだ。」


山下さんは正直になぜピラミッドに
入らなかったのかを教えてくれた。


私は山下さんの経験から学んだ。


貯金で世界一周をしたら、常に貯金額と睨めっこ
しながら旅をしないといけないのか。

心の底から行きたい場所があっても、
今後のことを考えたら我慢しないといけない。

貯金で旅をするのではなく、貯金がなくても
現地でお金を作れる手段を持たないと、私が
やりたい世界一周はできないのかもしれない。


「何か世界中でお金を稼げる手段はないか?」


22歳の総将青年、カンボジアで人生にかなり
の影響を与えた"問い"を手土産に持って帰ってくる。


この問いがやがて靴磨きトラベラーへの
道標になるとは思いも知らず。


そういう意味では、大成功な東南アジア
1人旅だった。



それよりも山下さん、元気にしとんかなぁ。



➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖
第6話予告。

大学を卒業して、レゴランドの正社員として
働くことになった。
楽しく、充実した日々を送っていた私は
すっかり自分の夢なんてことを忘れていたのだが、
子どもからの問いかけによって自分の夢を思い出す。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?