見出し画像

「靴磨き選手権の風物詩」

靴磨き世界一周アジア編121日目

今から3ヶ月ほど前、ロンドンで靴磨き世界大会2022
が行われていた。


今年で4回目の開催。


一度目の2017年大会の優勝者は、長谷川さん。

いずれ人間国宝になると私は信じてる。


二度目の2018年大会の優勝者は、ジョンさん。

現在武者修行させてもらってるお店のオーナー。


三度目の2019年大会の優勝者は、杉村さん。

静岡県の靴磨き職人。


そのあと2年間はコロナで開催が中止され、
そして4度目の2022年が今年開催された。


決勝戦の舞台に上がったのは3人で、そのうちの
1人に日本から上田さんが出場していた。


上田さんはかなりお世話になった靴磨き職人である。


私は2年前、難波駅で路上靴磨きしていたが、
上田さんは大阪駅の歩道橋で路上靴磨きをしていた。


難波の路上で靴磨きしていた時に
「この前は大阪駅の歩道橋で靴磨きしてたよね?」
ってよく通りすがりの人に勘違いされていた。


上田さんも本当に男前なんだよなぁ。
#も


その後は靴磨きのイベントでご一緒することになり、
上田さんからかなりの靴磨きの技術を教わった。


上田さんは路上靴磨きをする前は靴屋さんで
数年間働いており、靴の知識も豊富で磨きの
テクニックもかなり高かったのだ。


その後上田さんは一緒に路上靴磨きしていた仲間
と難波でお店を構えることになり、私も何度も足を
運んで勉強させてもらった。


同じ時期に同じ街で路上靴磨きしていた方々が
目標にしていたお店を持ち、私は彼らの苦労を
知ってるので本当に嬉しかった。


そんな上田さんが、2022年の靴磨き世界大会の
決勝に出ることを知り、私はオーストラリアから
大会の中継を見ていた。


上田さんの実力を知っているから、
絶対優勝するだろうと思っていた。


20分で片足の靴を磨く。


上田さんはこの大会のために事前に戦略を練り、
何度もシュミレーションをしてこの戦いに挑んで
いるのだろう。


かなり順序良く磨き、10分をした頃には
完成したのではないかと思うほどの輝き。


いいペースだ。


上田さん、頑張れ!!


私も、そして見てる日本の方も全員が
上田さんを応援していた。


が、一番奥でかなり落ち着きながら淡々と
靴を磨いてる人がいる。


結局靴磨き選手権2022年の優勝者は、
その一番奥にいる男が優勝した。


むちゃくちゃ悔しかったよ。


過去3回の大会でも日本の靴磨き職人が
2回も優勝していた。


いや、日本の靴磨き職人が出場した時は
必ず日本の靴磨き職人が優勝していたのだ。


だから、私は上田さんの優勝を疑わなかった。


上田さんが勝てないなんて、そいつは何者なんだよ!!


どこの国のどこのお店のやつだよ!!


俺がそこにいって仇をとってやるよ!!


、、、



その者こそが、今シンガポールのMason & Smith
で真横で靴磨きをしているアシュさんである。


3ヶ月前オーストラリアで中継を見ていた時、
こんなことになるなんて予想できなかった。



今日はアシュさんと晩御飯食べながらその当時
の靴磨き選手権のことについて話してくれた。


実は2019年に靴磨き選手権に出場しようとしたが、
予選で落とされたらしい。


決勝の舞台に立てずにかなり悔しかったが、
その大会のためにまた準備をするのも大変だから
もう諦めていた。


でもオーナーのジョンさんが、諦めてなかった。


「アシュ、また来年も出るぞ。そのためにトレーニングだ。」


2019年の予選に負けてから、ずっと次の大会
で優勝するために戦略を練り、練習を積み重ねてきた。


過去2年間はコロナで開催されなかったので、
トータル3年間次の靴磨き選手権に向けて練習
していたのだ。


そりゃ優勝するよね。笑


アシュさんのその話を聞いた後、私は帰ってから
その時の靴磨きの動画を見直した。


当時は上田さんにしか注目してなかったけど
アシュさんの磨きを改めて見ると本当にすごい
なぁと思った。


この一足を磨くために、数千足の靴を
磨いた背景が滲み出ている。


靴磨きの大会は、甲子園みたいに視聴者が
楽しみながら見れるかと聞かれたら、正直
面白くないと思う。


でも、その一足を磨くまでの物語を知れば、
結果は知っててもまた違った見方ができて
面白いなぁと思った。


上田さんのコロナ禍で警察に怒られながら
路上靴磨きをしていた物語や、

アシュさんの一度負けてから3年間練習に費やし
ていた物語。


それらを踏まえて再度靴磨き選手権の動画を
見たら、かなり熱くなった。


甲子園もドラマがあるが、靴磨き選手権も
それに匹敵するドラマがある。


いつかそのドラマに、名前が上がる日がくるのかな。


いや、来るのだろう。


その時のために、残り5日間、食らいついていきます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?