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直観と論理をつなぐ思考法 佐宗邦威


序章 「直感と論理」をめぐる世界の地図
思考法方法の4タイプ ①カイゼン思考 ②戦略思考 ③デザイン思考 ④ビジョン思考
カイゼンの農地での勝者になるためには、ただ一つ、生産性を高めること。
人に与えられている時間は等しい。持てる能力や資源にも大した差はない。だとすれば、その範囲の中で、いかに「収穫量」を増やすかが勝敗を分ける。要するに、単位時間当たりのアウトプットを増やすこと=効率化がすべてなのだ。そのための方法論として登場したのがPDCAカイゼン思考。
カイゼンの民に迫りくる自動化とVUCAの脅威
いかに答えを探すかではなく、そもそも答えなどない、という前提で動くことが、大半の人・組織に求められるようになったわけだ。
人がストレスを感じるのは、自分ではコントロールできない状況に立たされ続けた時だ。
こうした危機感を背景にして、自ら動いて食料を得ようとする人々が出てくる。農地を抜け出し、一定のリスクを取りながら、狩猟・採集や陣地取りに明け暮れる「戦略の荒野」だ。
戦略の荒野での基準はたったひとつ、勝利によって得られるパワーだ。市場の支配力を高めようとしている。
戦略思考の本質は、自分たちが勝てる目標を設定し、資源を集中分配すること。
戦略の荒野の大前提となるモチベーションは、一番になりたい、お金持ちになりたい、モテたい、負けたくない、などの妄想によって、意外と非論理的に決定されている。妄想と論理のうごめく世界である。
荒野でのシェアの奪い奪われ合いそれ自体には、ゲームのような楽しさがある。しかし、大きなプレッシャーやストレスを感じながら、それを一生繰り返したいと思える人は、ごく一握りしかいない。要するにこうした競争には「持続可能性」が無いのである。
戦略の荒野で戦い続けてきた人たちの多くは、どこかのタイミングで、何のために戦っているのか分からない「目的の難民」となる。論理の大陸から、創造の大陸への道。「デザインの平野」が待っている。
デザイン思考 ①手を動かして考える(プロトタイピング) ②五感を活用して統合する(両脳思考) ③生活者の課題をみんなで解決する(人間中心共創)
内面的な迷子に陥った人々が、ふと視線を向けた先に広がっているのが第四の大地「人生芸術の山脈」だ。みな「他人の目」を気にせず、周囲の景色を楽しみながら自分モードの思考に没頭し、ひたすら目の前の道を一歩一歩、踏みしめている。これがビジョン思考。

第一章 最も人間らしく考える
人生における転機には3つの段階がある。
①終わらせる段階 ②ニュートラルな段階 ③次のステージを探す段階
思いだけに流されて、安直に別のことに手を出してもモノクロの日常はまた近いうちにあなたに追いついてくるだろう。
本当の関心と出会うための妄想の部屋。自分の持つ欲求や好きな事、ワクワクすることに向き合う事。こうした妄想を引き出す作業は、一見楽しそうに思えるが、内省の習慣がないと、戸惑うことも多い。
2番目の部屋は知覚の部屋。様々なものに触れ、インスピレーションを得て、ぼんやりとしていた妄想の輪郭をはっきりさせ、設計図にまとめ上げていく。
3番目の部屋は、構想の、独自性を徹底的に突き詰めていく工房「組替の部屋」
4番目の部屋は、表現の部屋。いったん表現してみて、フィードバックによって、妄想を膨らましたりする。
どんな企業かも、有名な科学者も、誰の理解を得ることもなく、一人黙々と歩んでいた時期があるものだ。
自分モードの思考を取り戻すうえでは、次の4つのミッシングリングを埋めることが必要。

問題解決はビジネスの基本。
余白を作る。①ビジョン思考のスペース ②ビジョン思考のメゾット
「頭」で考えていては淘汰される。「手」で考えるには?
目・口・手をバランスよく取り入れる。

第二章 すべては「妄想」からはじまる
本当に価値のあるものは、妄想からしか生まれない。
人がなんらかの創造性を発揮する際には「妄想と現実とのギャップ」を認識することが欠かせない。個人が自らの関心に基づくビジョンを明確にして、さらにそのビジョンと現状の間にある距離(ギャップ)を正面から受け入れたときにはじめて、そのギャップを埋めようとするモチベーションが個人の中に生まれる。このような緊張状態が生まれない限り、人はクリエイティブなモードにはならないのである。
情報が欠けているという認知があって、初めて何を知りたいという好奇心が発動するというわけだ。

10%成長よりも10倍成長を考える。
いまよりも10%成長を続けるのは「努力」が必要である。いまよりも10倍成長しようとおもったら、その種の努力では到達不可能だとわかっているので、根本的に別のやり方を考えるしかない。
唯一の明確なビジョンをカリスマ社長が提示し、社員たち全員がその達成を目指して尽力する、というトップダウン型のビジョン経営すらも、時代にそぐわなくなってくるだろう。




第三章 世界を複雑なまま「知覚」せよ
分かりやすさを突き詰めるほど、僕たちの視野は狭まるようになっている。
視野にはいってこないものは存在しない、と勘違いしてしまう。
レコメンドは、思考や発想の無個性化だ。個人向けにカスタマイズされた情報に触れれば触れる帆を、頭の中はほかの個人と同一化していき、ひとと同じような事しか考えられなくなる。
VUCAの時代においては、組織のリーダーシップには「意味づけ」が問われている。「いま何が起きているのか」「自分たちは何者なのか」「自分たちはどこに向かっているのか」をリーダーが自分なりに解釈して伝えない限り、メンバーやステークホルダーを納得させ、動かしていくことが難しくなっているからである。
単純化しないと理解できないなんて誰が決めたの?複雑なものを複雑なままに吸収し、自分の理解を作っていく。そんなことは赤ちゃんだってやっているのに。
知覚の力 センス・メイキングの3つのプロセス
①感知 ありのままに観る ②解釈 インプットを自分なりのフレームにまとめる ③意味づけ まとめ上げた考えに意味を与える
両者の違いを作っているのは、情報のメッシュ(網目)の細かさである。
さかさまスケッチで上手くなる
センス・メイキングの最後のステップは、自分なりの解釈に意味を与えることだ。個人のイメージでとらえている世界を、他人と共有するには、「言語化」が欠かせない。この時、参考になるのが、「画像」と「言葉」とを往復運動すること。

第四章 凡庸さを克服する「組替」の技法
主観的な妄想をそのままアウトプットし、その解像度を上げていく。
アイデアは、出してからどう磨き上げるかが勝負。そして、それには方法論が存在する。
イノベーションの古典的メゾット
①当たり前を洗い出す
②あたりまえの違和感を探る
③あたりまえの逆を考えてみる
違和感に正直になる
一定の制限の中で、強制的に発想するということが、再構築の局面においては有効。

第五章 「表現」しなきゃ思考じゃない
ファブリーズ P&G 主婦層からお父さん子どもにまで認知を広げるか を課題としている段階だった。

表現の動機づけをする、表現をシンプルにする、表現に共感の仕掛けを作る
タイミングよく人から背中を押してもらえる経験は、一生に数回あるかどうかだろう。


終章 「妄想」が世界を変える?
VUCAな現代では、時代に合わせて変化する、とか、将来的な変動を予測するとかいったアクション自体に、もはや意味を見出せなくなりつつある。
変化のスピードや幅がここまで大きくなってしまうと、それに対して大真面目に反応し続けるのには無理がある。
そういう意味では、これからの時代に本当に必要なのは、むしろ変化にあまりとらわれず、これを受け流す力ではないかと思う。
人間を含めたすべての生物はホメオスタシスを基本メカニズムとして持っており、なるべく現状を維持しようとするように出来ている。
個体レベルで見れば、絶えず変化にさらされる状態は、ストレス以外の何物でもない。だからこそ、現代では自分を変化させろ、変化を見通せといった自己啓発的なしゅーぷれひコールが、もう人々の心を揺さぶらなくなってしまった。こうしたドグマに対し、誰もがある種のしらけを感じてしまっているのだ。
とはいえ、その現状を放置できるかというと、そういうわけにもいかない。世界には解決すべき問題がまだ無数にあり、もう1ミリも変化しなくていいなどと言えるには程遠い状態だ。それに代わることをやめれば、それは成長に伴う充足や満足、ワクワク感なども同時に手放すことになる。停滞感や閉塞感に満たされた日常に、人がどこまで耐えられるかは甚だ疑問だ。
…ビジョン思考はこの問いにたいする僕なりの答えだ。
このあやふやな世界では、トライ&エラーのサイクルを短くしつつ、そのイタレーション(反復)を長期にわたって継続するという戦略が最も頼りになる。おそらく結果が出るまでは、長きにわたる停滞期が待っているだろう。ただし、そこを潜り抜けるまで耐え続けたモノには、爆発的な成長という恩恵が与えられるのがいまの時代なのだ。
こうだったらいいのには…という理想を錨にする生き方は今後の社会において、より一層の重要度を持つはずだ。
夢を語れば、無形資産が集まる。無形資産が集まれば、有形資産が動く。

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