教育社会学者の育休日記♯19 病床に伏せる妻、これぞワンオペ育児

ありえないほどに暑い日が続くなか、自分も数週間前に熱を出し寝込み、家族や周りの方々にもじわじわと病人がでる中、一昨日の夜妻が「やばいかもしれない、、、」と。

いつも、寝室に妻と我が子、隣の書斎で自分は寝て、夜は妻に任せきりだったが、暖かくして寝るため妻に書斎で寝てもらい、一昨日の夜中は寝室に我が子と二人。
とはいえ、我が子がお腹が空いたと泣くたびに妻は起きて寝室に来てくれて授乳をする。
そんな過ごし方もたたってか、体調を崩す悪い予兆とは当たるもので翌日には38℃近い熱がでた。
(発熱中でも授乳は問題ないというのは発見だった!!むしろ免疫が我が子に母乳を通して届けられるとか)


そこからの1日は、なかなかにタフな1日だった。
朝、コンビニと薬局に走り、ヨーグルトやらポカリやらビタミンCの錠剤やらを買ってきて、そこからは完全ワンオペ育児。

泣くたびに、あるいは授乳のタイミングのたびに寝室から降りてきて授乳をしてくれるので正確にはワンオペとは言わないのかもしれないのだが、むしろこの状況の方がワンオペ感があった。


生後3ヶ月、妻もちょこちょこ出かけるようになっている。
長いときには3時間弱、1時間ちょいのお出かけはそれなりに。妻がいない、2人きりの時間を過ごしながら「おーこれがワンオペかー」なんて思っていたが、「1日を過ごす」ではじめてワンオペ、と感じた1日だった。


大きく違うことが何個かある。
まず一つ目は、選択というよりも判断が求められるということ。数時間であれば、自分がとりうる選択肢は明確で、寝かすか遊ぶかミルクか、そのどれかを選択して、妻の帰りを待つ。
ただ1日となると、長期的な視点が求められてくるため、複合的な判断が求められる。これが二つ目の違い。
数時間であれば、選択肢のなかからどれかの選択肢をとってすごしていたら時間が経って妻が帰ってくるが1日となると、そうはいかない。
「一旦これでしのごう」みたいなことが許されなくなるのだ。
例えば、「あー寝ないなー」となったり「寝かしつけうまくいかないなー」となっても、「まぁ数時間くらいは起きちゃっててもいーでしょ、遊ぶの選択肢にシフトしよ」と思うのと、「いや、さっきも寝なくて今回も寝なくて、え?今日全然寝てないじゃん、、、」は全く違う。そうなるとどう寝させるかに意識が向き始め、寝させるためのアクションを検討する必要が出てくる。
そうしたところから将来を見据えた全責任が自分にあるという感覚が生まれる。これが3つ目。たった1日で「将来を見据えた全責任」というのはいかにも仰々しいのだが、そんな感覚になってくる。
寝ない時間が続くとプレッシャーが募り、悪循環となり2人して途方にくれる。そこから今までやった事ないことを模索したり、調べたりして、あれやこれやとやり始める。この感覚は、数時間の時にはなかなか発生しない。


こんな違いを受け止めながら1日を過ごすと、妻の日頃の発言や行動の見え方も大きく変わってくる。
妻はよく「寝かしつけは旦那の方がうまい」と言ってくれる。感覚的にもそうだなーと思っていたが、リリーフピッチャーがここぞってときに投げて三振を取るのと近いことをやってたに過ぎなかったのか、と思う。そんな投手も、中継ぎ、あるいは先発ででてきたガンガン三振を取ることは当然不可能に近い。

あるいは、1日の生活のリズムを入力するアプリも、「その瞬間入力すること」だけじゃなく「あとで入力しよ」がいかに難しいか、ということに気づいた。なぜなら“あとで”は遠い先にしか発生しないのだ。もちろん複数のアクションを覚えてることなんて不可能だ。
次々にやることが発生するし、機嫌がよいときこそスマホをいじってるんじゃなくて我が子と戯れたくもなる。なぜならそれ以外がやることで埋め尽くされているから。

やるべきこと、より良い方法、いろんなことを調べて話をしてくれる妻に、そんなにいろいろ調べて疲れないようにね、という気持ちになったりもしてたのだが、調べちゃってるというよりもその必要性を目の前に調べてたんだ、と気づいたりもした。

そんなこんなで一日を過ごすと、あれ??もう今日終わり?となる。それぞれ母になり、父になり、生活がかわり、いまは我が子に向き合って、という気持ちは互いにある。
それでも自分は、いまこうしてnoteを書いたりするし、ちょこちょこ仕事らしきこともする。
妻の暮らしの中にはそれが入り込む隙間が本当にない。
大学病院の看護師から始まったキャリア、やりたいことややれるようになりたいこともたくさんあるであろう妻。
そんななかで我が子が生まれたこと、育児に向き合えることは大いなる幸せであることは間違いないのだろうが、それとは全く関係なく「あれ??もう今日終わり?」がちょこちょこ頭に浮かぶことは苦しい体験だろう。


育休をとって、育児を共にしている自負はある。
授乳はできないし、授乳後の寝かしつけも妻がやる方がスムーズ、その分掃除、洗濯、料理といった家事を担い、役割分担してる気になっている。
が、そこにはやはり大きな違いがある。


ワンオペ育児、1日を通してやってみたことで本当にたくさんの気づきと妻への感謝が芽生えた体験だった。


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