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【後編】当たり前のことをしっかり!中途採用活動、定着支援での農水省の工夫

ソトナカプロジェクト共同代表の佐伯です。
農林水産省の中途採用の秘訣に迫る投稿の後編は、採用活動で優秀な人材に来てもらい、そして農水省に定着して能力を発揮してもらうために、具体的にはどのような工夫をしているのか、引き続き総合職事務系の採用を担う大臣官房秘書課監査官の笠原さんに伺いました。
 前編はこちら→【前編】総合職だけで60人が活躍中!農水省の中途採用の秘訣は?|ソトナカプロジェクト|note


笠原健さん 農林水産省大臣官房秘書課監査官
2006年農林水産省入省後、鳥インフルエンザ・食品表示事件対応、コメ政策・農地政策など食料生産の基盤となる施策に従事。また、新たな保険制度(森林保険)の構築に携わったほか、米国に駐在し日本産品の輸出促進政策を実行。2021年から大臣官房秘書課にて、若手職員の人事、新卒・中途採用を担当。

中途採用者にもメンター

【ソトナカ】中途で入省した人が辞めずに、定着して、能力を発揮するために、どういう取組をしていますか。
【笠原】大きなものとしてはメンター制度があります。新卒採用の場合は、直接業務上の関わりがない3~5年目の若手職員をメンターとして付けて、月に1回は面談をしてもらうことにしています。この制度を中途採用者にも導入しています。

【ソトナカ】中途採用者には、中途採用の先輩を付けるのでしょうか。
【笠原】中途採用の先輩を付ける場合と、新卒で農水省に入った(社会人歴が長い)先輩を付ける場合と、両方あります。従って、中途採用者に対しては、10年目以上の中堅職員がメンターになることもあります。機械的にメンターを当てるのではなく、性格的なものや、経験してきた業務と中途採用者が今就いている業務の関連性も考慮しています。
 たとえば、中途で入ってきて総括業務(課内のとりまとめや作業の割り振り等)の担当になり、いわゆる「まわし」の仕事ばかりで面白くない、という人がいました。その人に中堅の総括補佐をメンターに付けて、「今やっている業務が将来こういう形で活きる」といったことをお話しして、少しは悩みが改善できたという事例もあります。

【ソトナカ】私たちが昨年行った中途採用に関する提言では、「年次マイナス」、つまり中途採用者の民間での社会人歴から1年~数年を差し引いて、入省先の年次の扱いを決めるということを問題視しました。農水省ではどうでしょうか。
【笠原】総合職事務系の採用においては年次マイナスしていません。15年前に入省した中途1期生の方も、社会人経験年数が同じ職員と同期として当初から名簿に載っていますし、今年度には同期の中でも早いタイミングで指定職(一般的な民間企業の役員に相当)に昇任されました。
 ただ、給与の前提となる職務の「級」については、一定の期間同じ級に在職しなければ上位の級に昇級させることができないというルールがあり、(以前に比して柔軟になってきてはいますが)能力に応じて更に柔軟に運用していく必要があるとも考えています。能力が高いにもかかわらず、中途採用ということで他の方よりも給与面でマイナスになるというのは、意欲を削ぐことにもなります。

農水省の採用パンフレット。霞が関では珍しく、中途採用だけで1ページを使用。

異動理由を一人一人に伝達

【ソトナカ】そのほかにオンボーディング(定着支援)で工夫していることはありますか。
【笠原】 これも中途採用者だけに限りませんが、人事異動の際には、なぜ異動先に配置するのかという意図を、直接又はメールで秘書課からお伝えするようにしています。
 中途の方が入って、やっぱり辞めてしまわれる場合はいろんな理由があると思いますが、やはりミスマッチであったり、コミュニケーションの問題が大きいと思います。
 内定を出してから、入省する前も「御家族は納得されていますか」、「これまでの経験と違う担当になることもあり得ますが、大丈夫ですか」と率直に話をします。入省してからも、年に1回以上、秘書課職員と面談をします。「顔の見える秘書課」というのは当たり前かもしれませんが、当たり前のことをしっかりやる、ということをモットーにしています。

【ソトナカ】採用プロセスで応募者目線で見直した点はありますか。
【笠原】新卒の採用を行っている時期以外は、ほぼ通年で中途採用の募集活動を行っています。人事院の行う国家公務員経験者採用試験に合格した人に対する採用活動が年1回、そのほかに、農水省独自に職務経歴書や小論文といった書類提出を求め、通過した人に面接等を行う選考採用試験を年2回、実施しています。
 民間企業などで第一線で活躍されている方を採用するための活動ですので、例えば夏の採用では企業が休みのお盆期間に面接対応をしたり、冬の採用では正月休暇にじっくり応募書類を用意してもらえるよう、年明けまで公募期間を延長したり、ということに取り組んでいます。
 選考採用では、書類を通過した後の1次面接はオンラインで行い、2次面接以降は農水省に来ていただいて複数の職員に会って、面接をするとともに、省の業務について理解を深めてもらいます。以前はこの来省しての面接に丸1日お時間を頂戴することもあったのですが、活躍されている忙しい方はなかなか時間がとれないので、長くても半日以内にするようにしています。

給与水準も明確に

【ソトナカ】国家公務員に関心があっても、給与水準が見えづらく躊躇するという声もあるようですが、いかがですか。
【笠原】国家公務員の給与は俸給表に基づいて支給されますが、内定を出す際に、どのクラスで採用するのかは明確にお伝えします。ただ、それだけでは、諸手当を含めた年収がどのくらいになるのか分からないので、要望に応じて、例えば○時間残業したらおおよその給与はこのくらいです、ということも試算してお伝えしています。

昨年5月のイベント「第1回意外と変われる霞が関大賞」で農水省チームが使用した資料(抜粋)

【ソトナカ】最後に、今後の中途採用活動に向けた意気込みをお願いします。
【笠原】農水省は食料を扱っているので、良い人材に来ていただいて活躍してもらい、良い政策がつくられて、食料の安定供給につながれば、国民全体に裨益すると考えています。 新卒も中途も分け隔てなく、農水省に来てくれた人が早く溶け込めて、さらには農水省の中で成長していくことのできる環境が整ってきています。今後もさらにその環境を充実させるために、私たち秘書課も責任を果たしていきたいと思っています。

総合職技術系で中途採用(選考採用)を公募中

今回は総合職事務系の採用のお話を伺いましたが、現在、農水省の総合職技術系において係長級・課長補佐級双方の選考採用を実施中です。詳しくは以下のリンクから御覧ください。

農林水産省選考採用(国家総合職技術系)情報:農林水産省 (maff.go.jp)


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