見出し画像

第3話 脱毛症の進行

それからたった数週間で、急速に脱毛が進んでしまいました。後頭部の生え際にも、3,4個ほどの無毛地帯ができました。一番大きなものは、500円玉くらいのサイズでした。前頭部の生え際の凹みも、前より少し大きくなりました。そして、右側の眉毛にも脱毛が飛び火しました。眉毛の外側から抜けていき、元の長さの2/3くらいになってしまったのです。

月に一度は散髪しないといけないので、そろそろ散髪屋に行かないとと思いながら、気分は憂鬱でした。自分のこの状況を、散髪屋のおじさんにさらすのが嫌だったのです。とはいっても、自分で散髪したこともないので仕方がありません。意を決して散髪屋に行きました。自分からは何も伝えず、いつもどおり「伸びた部分を切ってください」などと適当にお願いします。散髪屋のおじさんは人あたりのいい方で、私の髪の状況を見て、「どうしたん? いつからこんな風になってるの?」といろいろ心配してくれました。私もポツポツと話しをしました。急にこんな状況になったのでびっくりしている。小学生のときにもなったことがあったから、体質なのかもしれない。こんな風に状況を説明していきました。

散髪屋のおじさんは、とてもいいアドバイスをくれました。「近くに大学病院があるやろ。そこに行けば大丈夫やで。ホルモン剤とか打ってもらったら、一発で治るで」

私にとっては、地獄の底に下りてきた蜘蛛の糸のように、まばゆい光が差し入れられた気分になりました。そうか、そんな方法があるのか。発毛には男性ホルモンが影響しているという話は知っていましたが、ホルモン剤を投与するという画期的な方法もあるのか。有名な大学病院だし、そこなら安心だろう。こんな風に、大きな期待を持ったのです。

なお、脱毛症の治療にホルモン剤を使うことが本当にあるのかどうか、私は今でも分かっていません。散髪屋のおじさんも、お客さんの実話を踏まえて教えてくれたのかもしれませんが、私を勇気づけてまずは病院に行かせるために話を「盛った」のかもしれません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?