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時代を超えて

松山千春からの旅立ち

 不安と孤独感で過ごした中学生の頃、毎日のように松山千春の歌を聴き、ギターを弾きながら歌い、その歌や歌詞に勇気をもらい時には励まされ、時には同情され、時には一緒に慰めてもくれた。
僕が苦手だった音楽に触れ、夢中になって毎日ギターを弾いていたのは音楽だったり、歌だったり、松山千春という人物に触れながら自分自身と向き合って、まるで歌や歌詞が友人だった様な思春期を過ごしていたと思う。

 当時はテレビ出る事を嫌い、その代わりにラジオやコンサートのステージから、彼の思いやファンへのメッセージを口にして語っていた。少しずつテレビにも出演されるようになり、人懐こい話し方で年齢や上下を越えて話すそぶりが少し生意気だとか、強気だとか言われるようになり、まだ幼かった僕もそんな世間の言葉を受けて、松山千春という人は自信に満ちて自惚れて、他人を敬う気持ちが少ない方なのかとも思い違い、少しづつ僕の生活から松山千春の歌との触れ合いがなくなっていった。

 最近僕はSNS他の影響でまた何十年ぶりかにギターを手にして、そして何十年ぶりかで当時よく聞いていた松山千春の歌に触れ、そして自分も人生を積み重ね、悩み、哀しみ、思いやり、屈辱も努力で乗り越えて来て、大人の考えで歌詞に触れて、当時のまだ20代だった松山千春が悩み、鼓舞し、勇気を出して進もうとしていた歌詞の意味が当時の僕とは違って見えてくる。そして当時松山千春がコンサートで、ラジオで語っていた話しを思い出し、また違う意味で彼がどう歌っていたのか、何を伝えたかったのかを理解したくもなってくる。

戻っておいでよこの町に

 当時松山千春が語っていた話しでデビュー曲「旅立ち」について、「足寄は田舎だから学校を卒業すると仕事がないからみんな都会に出る。そんな田舎に残るのは少しだけ。そんな寂しさを歌った歌です。でも、歌詞は女性の言葉で恋愛相手が旅立つ様子を歌詞にしてます。だって恥ずかしいじゃん、田舎に残る自分が、友人たちが都会へ出ていくのを寂しい、泣きそうだよ。なんて歌えないじゃん。(言葉は僕が作った意訳です)」そして、松山千春が書く歌詞の中には、自身の心境を「女性が語る言葉」に置き換えた歌が少なくないとも語ってます。

 そしてデビューアルバムの中で歌われた「足寄より」。この曲もどんどん都会へ出ていく友人たちへ、自分はこの町を守っているから、何かあったらいつでも帰ってこいよ。という気持ちを歌に託したんだとか。
 そして運命のSTVラジオ竹田さんとの出会い、デビュー前からラジオ出演が決まり、地元に残る父を思い、デビューを躊躇しながらラジオ出演から、レコードデビューするまで、そして松山千春を発掘しレコードデビュー、コンサートツアーや彼の歌手としての覚悟を教えてくれたエピソードを収めた自伝を映画化した際のタイトルも「旅立ち〜足寄より〜」と名付けられている。

言い訳ばかりの毎日にさよならしたいね今日限り

 僕が何十年ぶりに松山千春の歌に触れ、何十年ぶりにギターを手にし歌いながら、当時から僕の曲の心に突き刺さった歌詞が今この年になってもこの頃心に刺さったままです。デビュー曲旅立ちや足寄より、大空と大地の中でや銀の雨。有名な彼を代表する曲たちと一緒にこのアルバムに収められている「今日限り」という歌。このアルバムのそれぞれの歌についてのエピソードはいろんな方のブログや映画の中でも語られていますがこの「今日限り」では、まだ自分が歌手になろうとは、なれるとは思ってもいなかった当時の葛藤や悩みが込められているんだと思います。
 この歌の歌詞の中に「いいわけばかりの毎日に、さよならしたいね今日限り、素直になれずに生きるのは、もう今日限り」というフレーズがある。僕自身も高校に入り、専門学校に通い、社会人になって転職し、いろんな場面でいろんな「できない理由」を探すのに忙しかった。「だってお金がない」「失敗するに決まっている」「本当はやりたいけれど世間を考えると」「お世話になったからあ諦める」そんな言い訳を作ってみては、やれない自信のなさを自分に言い訳していた。いや、今でもできない理由を探している。

 松山千春がデビュー前、高校生の時なのか、STVラジオの竹田さんにデビューに向けてたくさん曲を作っておけと言われたタイミングなのか詳しくは知らないのですが、松山千春がSTVラジオに出演が決まった時、地元のひとりで取材から印刷、配達までこなす父が発行する「とかち新聞」を手伝わないといけない、遠く出稼ぎに出ている母親と地元で働く父を守らなければいけない。そんな気持ちでいる時にこの歌詞はきっと松山千春自身の胸にも強く刺さっていたんだと想像します。

時代(とき)をこえて

 松山千春の歌の中で「時代(とき)をこえて」という曲がある。これもいずれ語ってみたい気もするが、こうやって中学生だった僕の思いが今何十年かの時を超えて、今の僕に語りかけている。僕の人生ってどうだったのか?これからは一体僕は何をすべきなのか?何をしたいのか。何が残せるのか。そんな思いにふけながら、ふと、こんなに素敵な歌たちがある。有名な曲も素敵だけれど、ファン以外の人にもこれらの素敵な歌を知ってほしい。そして僕の歌うのも聞いてほしい。ファンの方々にも有名だし好きな曲もいっぱいあるけれど、あれもいいしこれもいい。じゃぁ2番目に好きな曲はなんですか?と聞いてみるとどの曲が選ばれるのか。そんな思いで恥ずかしながらYouTubeにで「松山千春〜セカンドセレクション〜」と名付けで、シリーズとして僕が選んだ、そんなに有名じゃないけれどこの歌好きなんです。という曲を選んで弾き語っていこうと思います。正直。自信を持って上手だから聞いてほしいとは言えない、ちょっと間抜けな弾き語りですが、そんな僕の思いを歌にこめてみました。順次曲を追加していく予定ですのでご贔屓にお願いします。

松山千春を歌ってみた「今日限り」
1977年発売のアルバム『君のために作った歌』に収録
ポニーキャニオン

「松山千春〜セカンドセレクション〜今日限り」


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