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作曲にはない選曲のメリット

こんにちは!サウンドブリックスの上野です。
僕は普段映像に既存の音楽を選んでつける「音響効果」という仕事をしています。時には「選曲家」とも呼ばれます。

新規のお客様に「作曲での依頼はできますか?」とたまに聞かれます。こうしたケースはほとんどが放送ではなく、web系のCMや企業VPのようなお仕事だったりします。膨大な音楽が登場する放送で全てオリジナル曲対応は現実的ではないですからね。3曲以内くらいで収まるコンテンツなどでこうしたご相談があったりもします。
そんなとき「はい、できますよ」と答えています。僕自身も簡単な音楽は作れますが、やはりよりクオリティの高いものになると難しいのでその場合は外部委託で作曲家の方にお願いすることになります。

まず、なぜ「オリジナル曲がいいのか」というと(お客様それぞれの事情があるとは思いますが)多くは「他に2つとないコンテンツという満足感を得たいから」ではないでしょうか?
個人的には「持ち家か?賃貸か?」という永久に解決しない議題の答えとして「所有している満足感を得たいなら持ち家」という意見がありますが、それと近しいところにある気がします。

オリジナル曲を著作権ごと買取にしてしまえば「権利関係が明確にクリアになっているもの」という安心感も得られるでしょう。しかし、それは選曲でも著作権フリーの音源で対応できるので、オリジナル曲だけのメリットとも言えないのです。

最近ではAIの発展も目覚ましくBGMであればそれなりにクオリティの楽曲が瞬時に作れるようになりました。しかし、より作り込んだものは今のところまだ難しいようです。テキストやイラストに比べて音の分野はまだ人間が作る領域には届いていないと感じます。それでもやはり「予算はかけたくないし、ぱぱっと作品にしたいけど、どうしてもオリジナル曲がいい」という方もいらっしゃるので唯一無二の高揚感が欲しいという方は「AIオリジナル楽曲」という選択肢もあるでしょう。

僕は選曲のお仕事がメインなので積極的に作曲をご提案することは少ないです。作曲は映像のために書き下ろしで作られるわけですから、特別感やクオリティという観点では選曲はかなわないかもしれません。ただ作曲ではなく選曲を選択するメリットももちろんあります。次にその点について触れたいと思います。

作曲と選曲の違いとは?

動画制作者が作曲家ではなく選曲家に頼むメリット

コストが安い
まずこれが一番わかりやすい指標かなと思います。例えばCMに3曲音楽が必要だったとしてプロの作曲家さんに頼めば最低でも数十万はかかってしまうでしょう。選曲であれば価格は作曲の1/4以下に抑えることもできると思います。

・スピード納品が可能
作曲に比べれば当然手持ちの素材から選ぶだけなので選曲の方が納品できるスピードは格段に上がります。作曲家でも1日あれば1曲完成させることはできると聞きますが、選曲でしたら1曲数分で納品まで持っていくことができます(もちろん作品によります)。

・パターンを提出しやすい
これは上記のスピード納品ができることの補足ですが、時間的な余力がある選曲家の場合はパターンを用意することも容易です。作曲家であればパターンを作るのにも追加費用がかかるかもしれません。選曲であればパターンを要求されたとしても相当数求めない限りは追加費用がかかることは少ないでしょう。

・素材が豊富
プロの選曲家だったらロイヤリティーフリーの楽曲は数多く契約していることが多いです。特に選曲家専用に作られた海外レーベルなどクオリティの高い音源は年間で支払う金額も高額になります。僕たちは商売道具なのでそれでも契約して様々なお仕事に対応できるよう用意していますが、頻繁に曲数を使わない方でしたら金額が割に合わないと思います。選曲家はロイヤリティーフリーといえどもクオリティーを高いものを提供できるように研究・準備しているので作曲と比べても遜色ないものを提供できるのです。

・映像への理解がある
これは決して作曲家の方は映像の理解がないと言っているわけではありません。素晴らしい技術や考えを持った方は多くいらっしゃいます。
ただ選曲家のような視点とは異なることも多いと思います。まず映像を見ている量が違います。先ほどの納期スピードの観点からも分かる通り作曲を完成させるには時間がかかります。いちいち映像を全部見ながら曲を作っていては時間はあっという間に過ぎてしまうでしょう。しかし選曲家の場合は映像を見ながら音をつけていく作業になるので様々な映像を見ることが経験値として蓄積されているのです。数こなしている分、映像への理解や制作者の意図を汲み取る力はノウハウが溜まっているといえるでしょう。

効果音も同様のメリット・デメリットが

世間では「フォーリーアーティスト」という方々が注目を浴びています。僕も詳しく知っているわけではありませんが、簡単に言えば「効果音職人」ですね。彼らは効果音をひとつひとつレコーディングして映像を流しながらピッタリとハマるものをつけていきます。とても手間をかけて丁寧に作られている姿はまさに「職人芸」です。しかし選曲家も効果音の素材は数多く所有しています。先述しました「コスト」「予算」「柔軟性」を重視される方は選曲家に依頼することをお勧めします。一方、「世界に一つしかない満足感」「映像に合わせたより精度の高いカスタマイズ」などを重視される方には作曲家に頼んでみるのが良いでしょう


いかがでしたでしょうか?
作曲・選曲にもそれぞれメリットデメリットはあります。
動画制作者さんで今後音楽を外部発注する方は是非ご参考にしていただきたいと思います。もし選曲のことでご不明点やご質問などありましたらいつでもお気軽にお問い合わせください。

https://sound-bricks.co.jp/contactform

最後までお読みいただきありがとうございました。

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