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木造防音設計おさらい「新築住宅」

今日(2023年8月15日)は、防音職人の開業記念日です。
*準備期間の最初の1年間(2003年)を含む。
最初の1年間は、無料相談をボランティアで、東京の高田馬場と国立駅前で行いましたが、大半がウェブサイトを通じての相談が多く、電話とメールで対応するなど、現在のテレワークと同様でした。

当初の数年間は大半がマンションでしたが、3年目から木造住宅の生活防音の相談が増えました。主にご近所からの騒音対策と自宅賃貸併用住宅の防音工事の案件でした。
マンションの騒音問題は、基本的に約20年間内容は変わっていませんが、木造住宅は工法や設計仕様が変化していることが背景となり、リフォームよりも新築計画の防音相談が多くなりました。
テーマは「新築住宅の生活防音」「木造音楽防音室」「木造工作室(作業所含む)」の3つです。

今回(本稿)は、木造の新築住宅の生活防音対策について述べます。

断熱材の選定で差がつく遮音性能

同じ外装材で、同等の壁厚であれば、基本的に断熱材の選定で大きな差がつきます。
最も多い失敗事例は、発泡断熱材です。これは通常のグラスウールよりも遮音効果が約10dB低下します。発泡材の特徴は断熱性が高く吸音性が低いことです。特に硬質系発泡材は大半の周波数帯で吸音率が低く、低音域と高音域で顕著となります。

なので、戸外の車騒音や近所の犬の鳴き声が、よく聞こえるようになります。ちなみに、遮音性が10dB低くなると、防音効果が半減したように人間の耳は体感します。これは新築住宅では、戸外の音が非常に気になるレベルになります。

吸音材の厚さ・密度と吸音率

同じ吸音断熱材であれば、概ね厚さと密度が大きくなれば吸音率は高まります。約80kg/m3以下の密度であれば、グラスウールもロックウールも同様な傾向を示します。
厚くなるほど、低音域と高音域の吸音率が高くなります。

具体的には、製品ごとのメーカーの実験値を参考にしてください。
ちなみに、外壁内部に入れる断熱材・吸音材は防湿フィルムに包まれており、これ以外の製品を使用する場合は、室内側に防湿シートを施工する必要があります。
外壁の工法としては、通気胴縁を使用します。
なお、上記の仕様・工法の遮音効果を高める比較的簡易な対策としては、室内側の石膏ボードと外壁の軸組の間に厚さ12ミリの構造用合板を使用して、つなぎ目をブチルテープで封じます。これだけで約5dBから10dBほど遮音性能がアップします。
ちょっとした防音設計上の工夫です。

外窓と内窓の対策

窓の生活防音を目的とする場合は、外窓は異厚ガラス(ペアガラス)を使用して断熱性と遮音性を高めることができます。
*典型的な製品としては、厚さ6ミリと4ミリ(または3ミリ)の単板ガラスを組合せます。
*特定の周波数帯での共振を回避して遮音低下を抑えます。

生活防音を重視する「寝室」や「リビング」には内窓を取付けます。ペアガラスとは特性の異なる単板ガラスまたは防音合せガラスを使用します。
*基本的に厚くなるほど比較的低い周波数帯の遮音性能が高まります。

特に、ご予算が許せば、最高レベルの遮音ペアガラスの製品(真空ガラス)もありますが、費用対効果を高めるには、上記の外窓と内窓の間隔を大きく確保して施工するのが一般的です。
*窓の額縁を通常よりも奥行きのある製品にします。



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