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ERナースの思考加速トリアージ

はじめに


 ♪心の叫びは決して消えない 心の叫びはこの命の声だ 暴力で心まで奪えはしない
 お前の哀しみを閉じ込めるな 暗闇に心 明け渡すな あきらめずに愛を取り戻せ
   ――ミュージカル 『フィスト・オブ・ノーススター 北斗の拳』 

 救急外来という場は複数のモニター音で騒がしく、重症患者や多数の患者の対応が行われている状況では医療者が声を荒げることも少なくありません。目の前の患者さんの対応のみに従事できればよいですが、その間、救急車の受け入れ要請、院内の急変コール、患者・家族からのクレームなど、落ち着く暇がありません。
 救急外来の待合室は初療室や診察室の中と比較すると静かです。しかしそれは患者さんが軽症で状態が落ち着いているからではありません。具合が悪くて「静か」なのです。怒鳴り散らしている人へは周囲の安全を考慮し介入しますが、医療の介入を急ぐ必要があるかというとそうでないことが多いです。それよりも、自身の状態を強く訴えることができない人へこそ手を差しのべ、緊急度を正しく見積もる必要があります。
 トリアージ、これは院内トリアージ実施料を徴収するために行うのではなく、当たり前ですが目の前の患者さんの緊急度、重症度を早期にキャッチし、介入するタイミングを逃さないために行われます。トリアージを実施しているのは主に看護師であり、皆さんの判断が患者さんの予後に直結するといっても過言ではありません。ドラゴンボールのスカウターのようなものがあれば簡単ですが、残念ですが2022年時点で私の知る限りこの世に存在しないためトリアージ力を鍛えるしかありません(世代が違い伝わらないことは承知のうえ……)。
 救急外来においてトリアージを的確に判断するために大切なこと、これは目の前の患者さんや家族の訴えを真摯に受け止め、愛情をもって接することに始まります。機械的にこなしては、真の主訴や受診目的を同定できないことも多いものです。自分の家族であったら、大切な人であったら、といった気持ちで行っていただきたいと思います。
 私たちは日ごろからさまざまな物事を選択しながら生活しています。悔いの残らぬようじっくり考えることは大切ですが、時は有限、判断が遅いあまり、つかみえたチャンスを逃したくはありません。冒頭の言葉は2021年12月、日本で世界初演を迎えたミュージカル『フィスト・オブ・ノーススター 北斗の拳』の中で主人公ケンシロウが歌う『心の叫び』の一節です。ケンシロウが希望と愛を胸に戦い続けたように、皆さんも患者さんや家族の心の叫びをキャッチできるように、ともに成長していきましょう!
坂本 壮

本書の使い方


目次


Chapter 1:Introduction
01:トリアージとは
02:トリアージにつなげるバイタルサインの適切な解釈
03:痛みを訴える患者のトリアージ
Chapter 2:Case
01:腹痛
02:胸痛
03:頭痛
04:腰背部痛
05:咽頭痛
06:四肢痛
07:嘔気・嘔吐
08:吐血
09:血便・下血
10:意識障害
11:失神
12:けいれん
13:めまい
14:頭部外傷
15:息切れ(呼吸困難)
16:皮疹
17:四肢の脱力(麻痺)
18:発熱
コラム:たくさん

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