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第0章#08 ココロが動けば、身体も動く!リハニティー発祥「フラトレ®」

音楽にのせ、色鮮やかなレイやパウスカートを身につけて、目をキラキラさせながら踊る「フラトレ®」。こちらは、「生活リハ」のひとつとして、スマイリングのリハニティーで開発された介護予防運動メソッド。なんだか、みなさん楽しそうなんですけど!!! 創設以来、リハニティーをけん引してきたカモミールさん、インストラクターのプルメリアさんにもお話を聞いていきましょう。

ガスパッチョ隊長
――トレーニングって、苦手な人多いじゃないですか。「右手を10回上げて~」というような運動は高齢者に限らず、続かないもの。下山地区にあるリハビリデイ「リハニティー」では、楽しみながら運動につながるプログラムを提供しているのですが、特に「フラトレ」は人気ですよ。

フラトレは、「アロハ~」というハワイの挨拶からスタート。
座ってもできる!立ってもできる!

フラトレ®:オリジナルの介護予防メソッド。ハワイアンミュージックにのせたダンスを媒介に、参加者のコミュニケーションを促し、元気なシニアライフをサポート。介護予防、脳の活性化や認知機能向上といった精神的効果も期待。現在、中京大学スポーツ科学部協力のもとフラトレによる身体機能回復の効果測定も研究。2023年には「24時間テレビ」の舞台や豊田市コンサートホールで披露した。株式会社SMIRINGが商標登録を取得(2022年)。

隊長
そのフラトレをリハニティーの職員といっしょに研究開発してくれているのが、プルメリアちゃん。逢ったとたんに仲良くなれる天性のコミュ力を持っている方で、僕は「コミュニケーション・モンスター」と呼んでいます(笑)。
 
プルメリア
――はじめまして。ガスパッチョ隊長とは、小・中学校の同級生なんです。さらに言えば、ローリエ女史とガスパッチョ隊長が再会するきっかけをつくったのも、コミュニケーション・モンスターであるこの私(笑)。隊長は、ぜんぜん感謝してくれてませんけど(笑)。
 
隊長
――感謝していますよ(笑)。ある時、プルメリアちゃんがダンス教室ができる場所を探していて、「大きな鏡のあるデイサービスをオープンするよ」と話したら、「見学したい!」と即答。話していくうちに「この動き、高齢者のトレーニングに応用できるかも?」と発展していったんです。ハワイアンのダンスを勉強してきたプルメリアちゃんと、高齢者の身体機能回復に努めてきたリハニティーのスタッフが組めば、介護予防運動の新メソッドができる予感がしました。

フラトレの様子。
座ったままでもできるのがNICE!

カモミール
――前回に引き続き、カモミールもお話に加わりますね。今でこそ「フラトレ」が浸透し、私たちも説明しやすくなりましたが、もともとが誰もやったことがない、見たこともないものでしたから、フラトレが高齢者のリハビリとして正解なのか?効果的なのか?など伝えきれず、リハニティー内の職員や利用者さんの理解を得るのが難しかったです。職員からは「え~、ダンス?」「苦手だなあ」、男性の利用者さんからは「アロハシャツは着たくない」という声も。何かをはじめるときって一筋縄ではいきません。が、当時の私にはリハニティーをいい形に持っていかねば!という想いが強かったので、「できない」「やらない」という選択肢はありませんでした(笑)。

隊長
立ち上げ時期にいっしょに苦労した職員たちが、今ではフラトレの一番の理解者となり、めちゃくちゃ盛り上げてくれてます。

カモミール
ゼロから、みんなを巻き込んでいくのは大変でしたけど、リハニティーならではの良いプログラムになると感じていましたよ。フラトレの動きなら、座った状態でも、立った状態でも、麻痺がある方でも可能です。どんな状態の人でも運動できます。プルメリアちゃんがスマイリングに入社してくれて、本腰を入れてフラトレに向き合ってくれたし、彼女の天性の明るさに、みんなが付いていこう!ってなったのが良かったです。フラトレ発表会を開いたり、認知症サミットへ出演するなど、ひとつひとつの活動を通して、フラトレが職員ひとりひとりに浸透していったと感じています。

フラトレには、「楽しさ」「つながり」など、トレーニングだけじゃない要素もたくさん入っているんですね。

プルメリア
――「フラトレ」は、からだ・ココロ・つながりの3要素を向上させるもの。身体を動かすだけでなく、楽しい!うれしい!と感じる心を動かすこと、さらに、参加者同士のコミュニケーションを深めることを大切にしています。とはいえ、私にとっては全てがはじめてだったので、具体的な動きについては、リハニティーのみんなで考えました。そうそう、ロールモデルとして自分のおばあちゃんをイメージしたことも印象深いです。舞鶴(京都)にいる母方のおばあちゃんは、昔から踊りが好きな人。デイサービスに通うようになった時に「おばあちゃんなら、どうすれば楽しいかな?」「どっちの音楽が好きかな?」「衣裳も選べるのがいいよね」「レイも付けたら可愛いよね」など、どんどん妄想が膨らみました。

「今日はどれにしようかな?」「緑がいいな」
ちょっと高いところにかけてあるパウスカートも
「着たい!」と思うから手を伸ばしちゃう!

衣装のスカートは、「パウスカート」というのですが、写真のように何種類も用意して、好きな色、好きなデザインを選んでもらいます。「選ぶ」ことでワクワクする心の動きも大切。ちなみに、このパウスカートも、利用者さんたちが施設内で手作りしているんですよ。この世代の方たちは、針仕事もお上手!指先のトレーニングにもなるし、手順も考える。その工程のひとつひとつが「生活リハ」に、つながるんです。

パウスカートはすべて手縫い。
裁縫が得意な利用者さんがチクチク、丁寧に縫い上げます。
若い世代はとても真似できない手際の良さ。

フラトレが「生活リハ」につながる・・・?そのあたりを詳しく聞かせていただけますか?

カモミール
リハニティ―では利用者さんに、「どんなことができるようになりたいですか?」とヒアリングをするのですが、大半が「日常生活」のことを答えられます。ごはんをつくること、お風呂に入ることなど、楽にできるようになると日々を楽しむことができますよね。リハニティーでは、その生活機能を回復させたり、維持できるようにすることを大切にしています。たとえば、フラトレによく出てくる横に動くステップ。この動きって、本来、看護師や専門職からは「危ない」と止められるんですね。でも「危ないからやめよう」ではなく、安全を保ちながらフラトレを楽しむためにはどうすればいいか?その先にどんなステキなことが待っているか?私たちはもうちょっと先を見越して考えます。横のステップによって、パウスカートがきれいに揺らめく、その美しさは心も満たしますから。

プルメリア
横のステップに関しては、手すりや椅子を使う、レッドコードを使う、など補助器具も利用しながら行います。手をぐー、ぱー、ぐー、ぱー、させるなどの細やかな動きもリハニティーのみんなで検証しながら、日常の生活動作とダンスの動作を結び付けていきました。利用者さんも「〇〇をするためにがんばろう」と目標ができるので、説明もしやすくなりました。実際に、フラトレが機能回復につながったという声があるんですよ。片方に麻痺のある利用者さんは、横の動きが得意ではありません。だけど、ある時「台所仕事で、横歩きができた」「お風呂に入るときも、正面からでなく、横からまたいで入ることができた」と嬉しそうに報告してくれました。フラトレを続けてきて良かったなあ、と思える瞬間でしたね。

カモミール
長寿につながるといわれるコグニサイズというトレーニングがあるのですが、それは「足踏みをしながらしりとりをする」など頭と身体を2か所以上同時に動かすと予防効果があるというものなんですね。フラトレは、歌いながらハンドモーションをしたり、ステップを踏んだりする身体の動作と、歌詞を思い出すという脳トレの要素もあるでしょう?私としては、最強のコグニサイズだな思っています。

「今日は黄色いスカートにしよう」
「このハンドモーションは、なーんだ?」

プルメメリア
――また、「教える」「指導する」という一方向のレッスンではなく、みなさんに「自主的に参加してもらう」、という双方向のコミュニケーションがフラトレの大切なポイントでもあります
 
たとえば、こんな形でフラトレが機能回復につながることもあるんです。フラトレには、ハンドモーションという手話のような振り付けがあるんですが、その振り付けを利用者のみんなで考えたことがあります。たとえば、『上を向いて歩こう』なら「思い出す~夏の日~♪」という部分で、「夏」をどう表現したい?と問います。すると「海」「太陽」「ひまわり」「暑い」などなど発想が広がりました。ある方が「花火」と言ったので、花火が地上から打ちあがっていく様子をハンドモーションにして、振り付けに取り入れたんです。これまで振り付けを覚えられなかった方でも、自分たちでつくった振り付けはしっかり覚えてくれてまして・・・(笑)。

カモミール
――振り付けを考えるのはさすがに無理では?と思ってたんだけど、やってみたらどんどんアイデアが出てきたので、びっくり!私たちの思い込みで利用者さんの想いを制限しなくてよかった、と思いました。
 

フラトレでは、「手話」のように言葉を
ハンドモーションで表現。
自然に飛び出すこの笑顔、が
フラトレ最大の魅力。

 プルメリア
――また、こんな話もあります。男性の方は、アロハシャツを着てフラトレをするんですが、ある利用者さんはシャツのボタンをぜんぶ留めたい方。時間がかかるのですが、指先のトレーニングにもなるのでやってもらいました。普段は、着脱が簡単なかぶるタイプの服しか着なくなっていたんですが、本当は、解禁シャツが好きなんですって。アロハシャツのおかげで、ボタンを留めるのが手早くなったことに、ご家族も驚いていました。それで、ある日、娘さんが解禁シャツをプレゼントしてくれて、嬉しそうにデイサービスに着てきてくれました。フラトレの思わぬ角度からの効果に、私自身のパワーにもなりましたよ。

男性はアロハシャツでアロハ~♪
この笑顔、おうちの方にも届けてあげたい。
身体だけでなく、脳トレにもなる万能リハビリ。
ついでにモテ期も再来!?

カモミール
――最近、リハニティーではちょっと高度なフラトレもやってるんですよ。なんとフォーメーションによる動きを取り入れてます。音楽に合わせて、ハンドモーションしながら、ステップしながら、フォーメーションまで変えることができたら、カッコよくないですか?去年と同じことはやりません。どんどん進化しています。発表会などで「おばあちゃん、すごい!!こんな動きができるの?」って、家族の方にも思ってもらいたいんです。

プルメリア
――リハニティーで試行錯誤しながらフラトレがはじまって、2年ぐらいかけて下山地域に広がって、そこから3年ぐらいかけて豊田市全域に広がって、7年目となる2023年の10月、豊田市のコンサートホールの舞台にみんなで立ちました。市内10か所の教室から総勢70名が集結したんですよ。特に、リハニティ―やスマイリングからの参加者については、送迎の問題から、身体が不自由な方の動線、介助、医療的措置がある方のケアなどさまざまな問題を職員のみんなが計画をたてて、最後まで安全にやり遂げることができました。目標があれば、人は変わります。仲間がいれば頑張れます。達成できたときに、人に感動を与えることができる。そんなことを体感した1日でした。

フラトレ発表会ではお化粧もバッチリ。
息子や娘、孫にも、いいところをみせなくっちゃ!!

豊田市コンサートホールでのフラトレ®
市内10か所のフラトレ教室から総勢70名が集まり
大迫力の舞台に感涙!

スープタウンが完成したら、フラトレをどんな風に広げてみたいですか?

カモミール
――2023年の春、みんなでお花見をした時のフラトレが素晴らしく良かったんですよ。利用者さんだけでなく、いろんな世代の人が青空のもとでフラトレを楽みました。スープタウンは高齢者も子どもも障がいのある方も混ざりあう場所ですから、あの春の日みたいに、世代を問わずみんながフラトレを楽しめる場になるといいなと思います。

プルメリア
――ハワイでは、浜辺やカフェなどで自然発生的に誰かが踊り始めることがあるんですって。スープタウンができたら、「はい、今からフラトレをやりますよ」という感じではなく、その場にいる誰かがなんとなく踊り始めたら、誰かが音楽を奏ではじめるとか・・・そんな光景が日常的に生まれていくとステキだなあ、と妄想しています。

松平にあるスープタウンの建設予定地で開かれた花見(2023年)。
高齢者も、若い世代も、子どもたちも、
多世代の人がフラトレを楽しんだ。

インタビュー後に、フラトレを体験してみました。曲は、『見上げてごらん夜の星を』。ピンク系のパウスカート&レイを着けてもらって、それだけで気分上々。女性は世代問わず、少女になっちゃいます。明日もいい日になることだけを信じられる、やさしい時間が流れていました。

つづく。

PROFILE_プルメリア/株式会社スマイリング 
フラトレのインストラクターの他、子育て支援員、ケアリハ検定3級、介護予防健康アドバイザー、メンタル心理アドバイザーの資格を持つ。老人保健施設、小児科、病院外来クラークを経てSMIRINGに合流し、現在はSMIRINGソーシャルクリエイト部をけん引。モンスター級のコミュ力で、豊田市内をパワー全開で奔走。目指すは、地域において誰一人置き去りにしないよう、人と人をつなぐハイパーリンクワーカー!

What’s プルメリア=ハワイアンのレイにも使われる南国の花。5枚の花びらにはハワイ語のAROHA(アロハ)な意味が込められており、「大切な人の幸せを願う」というメッセージを伝える。

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