「日本人の勝算」を読んでみた

皆さん、「日本人の勝算」という本を読んだことはありますか?
私は通勤時間に本を読むようにしていますが、この本は最近読み終わった本の1つです。

著者はデービット・アトキンソン。
日本人より日本のことに詳しい元アナリスト(※1)の方です。
また、「日本人の勝算」以外にも、「新・観光立国論」や「新・所得倍増論」、「新・生産性立国論」など多数の著書を出版しています。
現在は小西美術工藝社(※2)の会長兼社長をする傍ら、日本政府観光局特別顧問も務めています。

「日本人の勝算」の要旨

本書は『日本には今、大きなパラダイムシフトが訪れている』という書き出しから始まります。ここで言うパラダイムシフト(※3)とは人口減少と高齢化のことです。
この2点が日本で現在進行系で起きており、日本という国が大きなターニングポイントに立たされていると著者は警鐘を鳴らしています。また、この書籍を執筆するに当たって、筆者は以下の方法をとっています。

①日本経済を経済事情ごとにパーツ分け
②パーツを研究する論文やレポートを探す
③②を引用する形で日本経済に落とし込む

なお、本書では述べ118人の外国人エコノミストの論文やレポートが引用されています。自身の主張を客観的なデータで補強しており、単なる主張以上に説得力のある書籍だと感じました。

日本が抱えている問題

日本には次の2つの大きな問題が存在しています。

・人口減少
・高齢化

まずは人口減少について考えていきます。人口減少の要因は晩婚化と出生率の低下が大きく影響していると言われています。では人口減少が起きると何が起こるのか?それは消費が減ってしまうことです。次のようなケースで考えてみましょう。

《A商品を1,000円で売っているケース》
ケース1
①A商品を欲しい人が100人います。
②企業はA商品を100個作ります。
③需要と供給が一致しているので、値段は変わりません。
④1,000円×100個=100,000円の売上です。

ケース2
①A商品を欲しい人が50人います
②企業はA商品を50個作ります。
③需要と供給が一致しているので、値段は変わりません。
④1,000円×50個=50,000円の売上です。

ケース1とケース2では欲しい人が半分に減っています。
つまり消費額についても半分になっているというわけです。
ただ、問題はここで終わりません。
次のケースを見て下さい。

ケース3
①A商品を欲しい人が50人います
②企業はA商品を100個作ります。
③需要と供給が一致しないので、値段が700円になります。
④700円×50個=35,000円の売上です。

人口が減少していけば需要が減るため、供給とのミスマッチが発生します。
アダム=スミスの提唱した「神の見えざる手」により価格が調整され、A商品の値段は1,000円から700円に値下がります。
人口減少は単に販売数が減少するだけでなく、販売価格まで低下するため経済に悪影響を与えるというわけです。

次に高齢化について考えていきます。高齢化が進んでいくとどんな影響があるのか。それは消費の癖が関係しています。一般的に消費額は20歳から徐々に増加していき40歳代半ばでピークを迎えます。そしてその後の消費は緩やかに低下していくわけです。

《消費の癖》
20~40歳台のケース
・車や家を買う
・こどもの教育資金
・レジャー費用
65歳~のケース
・家は持っている
・夫婦二人暮らし

高齢化によって売上が増加するような業態もありますが、大抵は売上が減少するため全体としては減少傾向が今後続くと思われます。

日本人の勝算はあるのか?

では、著者は日本人の勝算はどこにあると考えているのか。
筆者は継続的な賃上げにあると主張しています。賃上げにより使えるお金が増えれば消費行動へつながるからです。
一方で、最近の春闘(※4)ではトヨタ自動車がベースアップ(基本給与の底上げ)を7年ぶりに見送ったとのニュースが話題になりました。以下はトヨタのコメントです。

「これからの競争の厳しさを考えれば、既に高い水準にある賃金を引き上げ続けるべきではない。高い水準の賃金をこのまま上げ続けることは、競争力を失うことになる」と豊田章男社長は語った。

どちらが正しいのでしょうか?
実はどちらも正しいのです。
いわゆる大企業については資本力が高いことや政府の賃上げ要求に答えるため、賃上げを継続してきました。同年代の給与を高い順に並べていくと、そのほとんどは大企業に勤めている人に限定されます。
では、給与を上げるべきはなにか?
それは中小企業です。
小企業は大手企業と比較して


・売上規模が小さい
・資本制約が強い
・不安定
という特徴があります。

つまり、大企業と比較して給与が上げにくいということです。
では、どうすれば良いか?
それは是非この本を購入してご自身の目で見てください。
楽天ROOMに追加しておきますので、ご興味ある方は下のリンクからどうぞ。

まとめ的なもの

レビューの内容はいかがだったでしょうか?本書は一般的なビジネス書籍とは違うため、すぐに実生活に活かすという訳にはいきません。しかしながら、

・自分が住んでいる日本が今後どうなっていくのか?
・それを踏まえて自分は何を選択していくのか?

自身の人生の方向性を考えていく一助にはなるかなと思います。
本日は最後までお読みいただきありがとうございました。


(※1)証券会社や銀行などの金融機関や投資顧問会社などに所属し、企業の増資や新製品開発の動向、収益や経営状態、そして国内外の全般的な経済、政治情勢など、幅広いデータや情報を調査・分析して、株価の評価や金融の将来予測を行うスペシャリストのこと
(※2)文化財などの修理、施工を行う。漆塗、彩色、金具、金箔押等、装飾技術を合わせ持つ唯一の会社
(※3)その時代や分野において当然のことと考えられていた認識や思想、社会全体の価値観などが革命的にもしくは劇的に変化すること
(※4)日本において毎年春(2月)頃から行われる、ベースアップ等の賃金の引上げや労働時間の短縮などといった労働条件の改善を交渉する労働運動のこと

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