あの頃、私は最強だった。

高校の時、私は最強だった。
なんにも怖いものなんてなかった。
今みたいに、ふと、友達が誰もいないなんて思うことはなかった。
私ってひとりぼっちじゃんなんて孤独を思うことはなかった。
それってやっぱり、コントラバスがあったからなのだと思う。

私は高校生の時吹奏楽部だった。
それまでの小中はバスケ部だったのだけれど、
運動部の勝利の気持ちが、私には追いつけなかった。
私は勝つことにとっても無頓着で、
ただ気持ちよくシュートが打ちたいだけだった。
辛い練習が嫌いだった。
どんどん上手くなる後輩が嫌いだった。
練習を頑張れない自分が、嫌いだった。
だから、吹奏楽部を始めた。
新しいことがしたかった。

吹奏楽というより、コントラバスが単純に私の性格に合っていたのだと思う。
私の学校の吹奏楽部は弱小で、人数も少なかった。
だからコントラバスを弾けて、教えてくれる先輩はいなかった。
でも今思うと、それが吉だったと思う。
ただ一人で楽譜と向き合いながら、
弓をまっすぐに弾き、一本線の音を出す。
弾けない小節があれば、弾けるようになるまで何度も何度も繰り返し練習する。
その過程が好きだった。
どんどんまっすぐになる音、自由に動く指と、音に気持ちを乗せて体を揺らす感覚。
何かにここまで夢中になるのが、
初めてのようにさえ感じた。

もちろん合奏も大好きだった。
まだ一度も話したことのないあの先輩。
隣のクラスのあの子。
大好きな音楽と音に体全体が包まれて、
周りの人と繋がれてるあの感覚。

「あぁ、私は生きている。」
大袈裟じゃない。
心から、生きている、喜びに満ちて生きているって感じられた。

だから、孤独を感じるといつも私はコントラバスを思い出す。
みんなと繋がってたあの感覚を思い出す。
目の前に一所懸命だったあの瞬間を思い出す。

あの時、私は確かに、最強だった。

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