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消えてしまいたい。

「マーカーペンを頂きたのですが?色はオレンジをください」と会社の事務の方に声をかける。「消せる方?」と答えが返ってきた。

「ん?消せる方?」

 一瞬思考が停止する。消せるボーペンを私が紹介された日はさかのぼること2年前。(これでもかなり遅いと思う。さすが最遅の情報収集能力。我ながら脱帽である)今度は消せるマーカーペン!

 2020年12月。私は出会ってしまった。消せるマーカーペンに。当たり前の様に事務の方に「消せる方でお願いします」と、知っていたかの様なポーカーフェイスもできず。思わず言ってしまった。「え! 消せるマーカーペンってあるんですか!」思考が動き始めたらこんな言葉を発していた。
 
 そして、わくわくしながら消せるマーカーペンを受け取る。お礼を言って自分の席に戻る。無意味に余白に貰ったばかりの消せるマーカーペンで線を引く。疑いの目で引いた線を消しに行く。「消えた!」もう一回同じ行動。

「やっぱり消えた!」

 私は今、また、「自分のこうあるべきだ理論」が崩れさる音を聞いてしまった。進化の瞬間を目の当たりにした。
 
 実は、私は結構文具が好きである。都会に遊びに行ったとき、帰るには早すぎて、夕食にも早すぎる、間の時間。(まの時間でと読んでください。怖い方の魔の時間ではないです。)
 
 ふらっとゆっくり大きな文具屋に立ち寄ることがある。私だけかもしれないが、文具を見ていると、思考が少し柔らかなっていく気がする。この文具の使い方紹介のコーナーに行くとつい購買意欲が急上昇したりする。そして冷静な内なる声。「いつ使うのか?」と我に返る。
 
 けれど、先ほどの消せるマーカーペンに出会えなかった。やはり、人生と一緒で出会うタイミングがあるのだろうか?でも自分は今出会ってしまった。出会った瞬間色々な使い方が頭をよぎった。
 
 いつも英語の勉強をしていて、知らない単語を辞書で引いて、100円ショップで買ってきた、フィルム付箋で目立たせる。いつもはこの繰り返しである。
 
 しかし、である。この消せるマーカーペン。なんと消せるのである。この長所を最大限に発揮できる方法。それは、知らない単語にマーカーし覚えたら消すことができてしまう。

 なんと素晴らしと感動の嵐である。今までは、単語の上にフィルム付箋が置かれていて、辞書を引くたびに「これが現実か……」と希望の火に陰りが見えてくる瞬間がある。

 また、しかしである。この過去が消せるのである。知らなかった自分にサヨナラできるのである。そうなのだ、ゴミも出さずに消せるので、今までの自分と痕跡を残さずに完全に生まれ変われることができる。
 
 そして、この消せるシリーズ。なんと最近は「消せる色鉛筆」というのも見つけてしまった!実は子供の頃、色鉛筆と言うので、てっきり消しゴムで消せると思っていた。が。
 
 なんと消せないではないか!豪快に書いたいたずら書きが消えない。
むしろ、最悪の事態が起きてしまった。紙が破れてしまったのだ!
 これでは消す所の騒ぎではない。完全に修復不能である。事態はより深刻さを増していた。

 もし、あの時代に消せる色鉛筆があったら、おそらく何千人もの子供達が救われたと思う。いや、もしかしたら、親御さんの時間も救われたのかもしれない。

 それは、子供達が率先して大好きなこと。それは落書きである。真っ白いテーブルが一瞬にして未来の芸術に変わる瞬間がある。しかも、親御さんたちが目を離した隙にである。
 
 作成過程で気づけばいいのであるが、この時ばかりは、なぜか子供達も一種の忍的な能力を発揮して、もくもくと描き続ける。真っ白いキャンパスに思いの丈をぶつけるのである。そう、その思いの丈というのはすでに爆発してしまっているので、止めることは皆無と言う言葉がふさわしい。
 
 子供達が描き切った時の満面の笑みとは裏腹に、親御さん達が我に返る。これを消すのは私達の仕事だ!そうゆう時に限って子供さんの握りしめている手を見ると絶望的な文字「油性」と記載しある。
 
 なぜにあれだけのペン立ての中から数少ない「油性」を選ぶのか?なぜ私(私達)は「油性」を同じペン立てにいれてしまったのか?後悔の念が押し寄せる。

 この一連の出来事すべてが、消せる色鉛筆があれば丸く収まってしまう。そう。全ては丸くおさまるのである。
 
 油性は消せないが(傷が浅いと消せるかもしれない)この消せる色鉛筆は消すことを前提に作られているので、消すのに多くの労力が不要である。ゴシゴシこすった分、こすっただけ消えてくれるのである。なんと素晴らし時間対効果なのか!
 
 調べると、この消せるシリーズとても多くのバリエーションが出ている。使い方によっては様々シーンで変化に対応できると思う。一つだけ注意して頂きたいことがあるそれは取扱い説明書にもある様に、重要書類には決して使わないで頂きたい。

 なぜなら、消えてしまうからである。消えてしまいたい程恥ずかしい思い出は私もたくさんある。けれど、時と場所を考えると、消えてしまってはいけない物もこの世の中には存在する。
 
 いや、消えてしまってはいけない物の方が多いかもしれない。

 最後までお読み頂きありがとうございました。今回の文具は大当たりでした。かなりの頻度で使っています。
  また、別の文具がありましたら、ご紹介させて頂きます。
 
以下にPILOT様ショートカット添付いたします。

こすると消えるカラーペン
https://www.pilot.co.jp/products/pen/color_pen/frixioncolors/

こすると消える色鉛筆
https://www.pilot.co.jp/products/pen/art_pen/art_pen/frixioncoloredpencil/


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