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リキッド凍結の実力。

文・撮影/長尾謙一 
料理/横田渉 

・北海道襟裳産お刺身天然鰤(皮付きロイン)リキッド凍結
・北海道根室産お刺身ニシンフィーレ(皮付き)リキッド凍結
・北海道根室産お刺身いわしフィーレ(皮付き)リキッド凍結
・北海道根室産お刺身クロカレイフィーレ(皮なし)リキッド凍結
(素材のちから第39号より)

食感、艶、味、香り、そのすべてが鮮魚に迫るレベルだ。

切り身に艶があり血合いは鮮やか、エッジがきいている

ブリの背身を切り身にしてみる。たっぷりと脂がのっている。身に艶があり血合いは鮮やかで臭みがなく、切り口はキリッと鋭角を保ちエッジがきいている。このブリの鮮度は高い。水揚げしてからいかに速く加工したか、そして、どれだけ高いレベルの凍結で品質を守ったかが分かる。

〝リキッド凍結〟がつくり出す、北海道産のハイグレードな冷凍商品

凍結スピードは通常凍結の20倍という驚くべき速さらしい

下の写真をご覧いただきたい。

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たっぷりと脂がのっているこのおいしそうなブリは、9月に北海道襟裳町で漁獲され、アルコールを使って〝リキッド凍結〟された「北海道襟裳産お刺身天然鰤」だ。ブリの背側を刺身にしてみた。冷凍と聞くと品質はよくないと思われる方も多いと思うが、〝リキッド凍結〟のレベルは通常の冷凍とはかなり違う。

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上のグラフは魚を凍結する際の冷却時間と温度との関係を表している。ここで注目したいのは〝最大氷結晶生成帯〟だ。〝最大氷結晶生成帯〟とは物が凍る際に氷結晶が大きくなりやすい温度帯のことだ。魚はゆっくり凍らすほど細胞内にある水が大きく膨張して凍る。水が大きく膨張して凍ると魚の細胞を破壊するため解凍時にたくさんのドリップが流れ出る。つまり、この〝最大氷結晶生成帯〟をいかに速く通過させるかで冷凍品の品質は決まると言える。

アルコールを使う〝リキッド凍結〟の凍結スピードは通常凍結の20倍、窒素凍結の8倍の速さだと聞いた。これは液体と空気の熱伝導効率の差である。「冷凍品は品質が悪い。」という十把一絡げの概念は緩慢凍結によってつくられたもので〝リキッド凍結〟にはあてはまらない。

北海道で獲れた新鮮な魚を現地ですぐに加工し〝リキッド凍結〟

一口にブリと言っても品質はまちまちで、漁獲される季節によって魚体の大きさが違い脂のノリも違う。7〜8月に獲れるブリは脂が少ないが、「北海道襟裳産お刺身天然鰤」は、一番脂がのる9月に襟裳沖に来るブリを漁獲したものである。

6~10キロ台のブリを現地で水揚げ後、すぐに手作業で四分一(しぶいち)にさばき、真空パックして素早く〝リキッド凍結〟させる。このスピード感が高い鮮度を生み出すのだ。そのレベルはご覧いただいた通り、鮮魚に迫る。

今回は「北海道産リキッド凍結シリーズ」として北海道襟裳産の天然ブリの他に、北海道根室産のニシン北海道根室産のイワシ北海道根室産のクロカレイもご紹介したい。試食してみると、どの商品も〝リキッド凍結〟の実力を持っている。

〝リキッド凍結〟の実力発揮、どの商品も脂が旨い

「北海道襟裳産お刺身天然鰤」をしゃぶしゃぶで食べてみる。

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ブリしゃぶには腹身を使った。たっぷりと脂がのっていて身に弾力性があり、血合いまでもがおいしい。脂のキレがよくさっと出汁にくぐらせるととろけるおいしさが楽しめる。ポン酢で食べてみるとブリ独特の旨みをすっきりと楽しめた。

ブリは天然物よりもたっぷりと脂ののった養殖物が好まれることもあるが、氷見の寒ブリに高値がつくように、本物の天然ブリは珍重される。このブリのおいしさは本物だ。

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▲北海道襟裳産お刺身天然鰤(皮付きロイン)
襟裳町の水揚げされた6~10キロのブリをすぐに手作業で四分一にして〝リキッド凍結〟する。背身と腹身のセットで販売。
[荷姿:1本真空(背腹別真空)出荷の際は背と腹セット出荷 不定貫]

「北海道根室産お刺身いわしフィーレ」も脂がたっぷりのっていて、その脂が甘くておいしい。

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レモン汁、塩(粗塩)、オリーブオイル、ケッパー、セルフィーユでシンプルなセビーチェにしてみた。イワシは鮮度が悪いとメニューにはできない魚だ。ましてやレモンの酸を加えるとにおいが強調されてしまうが、「北海道根室産お刺身いわしフィーレ」はすっきりと仕上がってる。

クセのないイワシの脂はオリーブオイルとやわらかに重なり、粗塩が口の中で溶けるとともにレモン、ケッパーの風味が混ざり合い、イワシのおいしさを変化させていく。セルフィーユが香る後味もよく、こうした繊細なセビーチェが味わえるのは鮮度がいいからであろう。

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▲北海道根室産お刺身いわしフィーレ(皮付き)
6~9月に道東沖の良質なプランクトンを食べた脂ののったイワシが秋に南下するところを漁獲。すぐにフィーレ加工して〝リキッド凍結〟。
[荷姿:10枚×20×2] ※1PAC単位での発送可能。

続いて「北海道根室産お刺身ニシンフィーレ」をカルパッチョにして生で味わう。ニシンは鮮度が落ちやすいので刺身で食べるのは珍しい魚だ。

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ソースは大葉、ニンニク、ケッパー、アンチョビ、オリーブオイル、塩をミキサーで回してつくる大葉のジェノベーゼだ。仕上げに黄柚子の皮をすって添えた和風のカルパッチョだ。

このニシンもとろっと溶けるような脂がたっぷりとのっている。骨切りした身の食感がコリコリとしていて、生のニシンがこれほどおいしいとは知らなかった。

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▲北海道根室産お刺身ニシンフィーレ(皮付き)
ニシンの名産地、北海道の根室で水揚げされるニシンを素早くフィーレ加工して、ワンフローズンで〝リキッド凍結〟する。
[荷姿:4枚×25×2] ※1PAC単位での発送可能。

最後に「北海道根室産お刺身クロカレイフィーレ」を調理してみる。刺身用の商品だが、あえてムニエルにしてみた。熱が加わった身に鮮度のよさがどのように表れるか知りたかったからだ。

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「クロカレイ」に塩、胡椒し、小麦粉をつけてオリーブオイルで両面を焼き、バター、レモン汁で仕上げ、しっかりと炒めたキャベツとネギの上に盛り付けた。

「クロカレイ」の綺麗な白身は熱が入ることでふんわりと膨らみ、素直で淡白な味わいはバターとの相性が抜群だ。さらに驚いたのは身の縮みの少なさだ。熱が加わると小さく縮んでしまう冷凍魚をこれまでどれほど見てきただろう。これこそ〝リキッド凍結〟の実力だ。

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▲北海道根室産お刺身クロカレイフィーレ(皮なし)
クセがなく透明感のある白身がおいしい。水揚げから加工、〝リキッド凍結〟までの時間が勝負。根室でも鮮度がいいものしか刺身にしない。
[荷姿:300g×20×2] ※1PAC単位での発送可能。

鮮魚はさばくと可食部分が半分にも満たないし、氷詰めして運んだ氷は結局捨てられる。鮮魚の運送コストには捨てるもののコストが多く含まれている。また、鮮度も時間とともに落ちていく。鮮度のいい魚を無駄なく使えないものかと常々考えていた。

「北海道産リキッド凍結シリーズ」は、北海道という〝産地へのこだわり〟、〝漁期の選定〟、〝水揚げから加工までのスピードアップ〟、そして〝リキッド凍結〟という商品のレベルアップのために現場でできることをやり尽くそうとする努力がつくり出した。こうした地方での細やかな商品づくりに拍手を送りたい。


協力/お問い合わせ:株式会社ナチュラルシー

(2020年11月30日発行「素材のちから」第39号掲載記事)

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