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チンチロリン

#中学生〜高校生

ぼくが高校生の時のある夜、深夜25時くらい。

いつものように自室で夜更かしをしていると、
リビングの方から

”チンチロリン”
”チロリロリン”

という音が聞こえてきた。
瀬戸物の器に、小さいものが転がっているような音だった。

リビングに行って様子を見てみると、

先に寝たはずの父が
お茶碗に2つのサイコロを投げ入れては取り出しという作業を繰り返していた

怖かったのでその日はとりあえず無視することにした。
ぼくは冷蔵庫からコーラをとって自室に戻った。

翌日の夜。23時頃。
父が寝るというので、
ぼくは「おやすみ」と告げて自室に戻り、また同じように夜更かしをした。

するとやはり25時頃、また聞こえてきた。

“チンチロリン…チンチロリン‥”

またコーラをとるふりをしてリビングに向かうと、
やはり先に寝たはずの父がサイコロを振り続けていた。

ぼくが自室から出てきたことには気づいていたはずだが、
父もぼくを無視していたので、ぼくも話しかけずにまた自室に戻った。

その後も、数時間サイコロを降る音はなり続けた。

更に翌日の夜。
また同じように父は先に眠ったが、
数時間経つとまたリビングでサイコロを振り始めた。

怖かったが、コレ以上は流石にヤバイと思ったので
話しかけてみることにした。

ぼく「なにしてんの」

父「お!寝たんじゃなかったの!?」

ぼく(扉の音なってるし、冷蔵庫からコーラ出してるし、まじか。どんな集中力だ。)

ぼく「うん」

父「いやちょっと、実験というかトレーニングしててね」

ぼく「どんな?」

父「イメージを具現化するトレーニングというか実証っていうのかな」

ぼく「ん、思考は現実化する的な話?サイコロで?」

父「うん、念じて鮮明にイメージすれば思い通りの目が出るはずなんだ」(“チンチロリン”)

ぼく「まじか、何出したいの?」

父「とりあえずゾロ目出すことにしてる。」(“チンチロリン”)

ぼく「数字は」

父「決めてない」(“チンチロリン”)

ぼく「それイメージとして鮮明じゃなくない?」

父「たしかに」

ぼく「あと、とりあえず持ち方決めたら?」
ぼく「たしかにサイコロの目を操れる人は居るかもしれないけど、そういう人って毎回寸分違わず同じ振り方が出来るんじゃないのかね。」

父「いや、そういうテクニック的なことじゃないんだよ。念なんだよ。」

ぼく「あそう」

ぼく「ところで、これいつまでやるの?結構うるさいんだけど。」

父「納得できるまでかなあ。」

ぼく「そっか、出来るようになったら教えてね。」

父「うん」(“チンチロリン”)

その後一ヶ月ほど、父は毎晩サイコロを振り続けていたようだったが、
ゾロ目が出せるようになったという報告をうけることはなかった。

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