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【レビュー】無茶祭2023「セイムタイム・ネクストイヤー」

俳優・宣伝美術の藤尾勘太郎さんが企画する、2019年から始めた「無茶祭」。ざ〜っくり言うと藤尾さんが「わくわくすることをやろう!」ということみたいです。(違っていたらすみません、でもブログやご本人の様子を見ていたらこの言葉がしっくりきました)

1年に1度だけ会う男女の不倫の話、と聞いてこの戯曲を全く知らなかったので、悲劇になるのではないかと思っていました。
涙もろいので終演後に涙で顔が酷いことになるんじゃないかなと心配で。
でも、実際に見てみたらとても温かく全体的にハッピーな話でした。


※以下、脚本のネタバレ含みます



劇場に入った瞬間、まず部屋の一室がちゃんと作られていたのが驚き。
いつもWSなどで行き慣れた場所ではあったものの、セットが組まれているのを見て「どうやって搬入したんだろう...?」と不思議に思ったり。
演劇を観る前は開演前の場内で流れている音楽を聴くのが好き。お手伝いに行った時に流れていた音楽だ、とニヤニヤ。

そしてこの日のキャストの藤尾さんと内田さんが椅子に座り、始まりを告げる暗転。長かったけど「何か準備をしているのだろうな」と不安にはならなかった。
明転した瞬間、びっくりしたのは内田さんがバスローブ姿で藤尾さんがタンクトップ&下着姿になっていたこと。(ベッドにいるところからの始まりだった)
2人の姿に驚いたと言うよりは暗闇の中で気配を感じさせずに洋服を脱ぐ演出が「これ考えた瞬間すごくわくわくしたんだろうな!」って想像したら嬉しくなってしまって。生だから感じられる瞬間だった。

一番前にいて3歩歩けばキャストに手が届く距離だったにも関わらず、衣服の擦れる音が聞こえなかった。(確か無音に近い状況だった気がする)

最初にどれだけ早く作品の中に入ってもらえるか。
難しい課題の一つなんだろうけど、前説時点で藤尾さんがもう楽しそうだったので「あ、これは心配ないな」と思えた。やっぱり、舞台に立つ人が楽しそうだったらこちらも楽しみになっちゃうものですね。


なぜ、惹かれるのか

創作の時点でステキな発想だな!と思ったのは、何の経験もなくていいので、お手伝いを募集していたこと。
何をするか全くわからないけど、急に演劇の現場に関われるのは珍しいので「行きます!」と手を挙げた。

で、行って思い出したんだけど私って手が不器用なんですね。(技術の成績は1で下)
手が器用な(と思っている)両親の子どもなのか...と中学の時に愕然としたことを思い出して、「あ〜これは怖がっているぞ、藤尾さんはきっと大丈夫だって思っているはずだけど、声に出さなきゃ安心して作業できないな」と思い「不器用だけど大丈夫ですか...?」と聞いてみた。
「大丈夫!ちゃんとしてない方がむしろ手作りって感じがするから!」と予想通りの満面の笑みが帰ってきて「勝手に不安になってるだけだー!!」って気づいたんですよね。

「じゃあダンボールをくり抜いてね〜」って渡されたんだけど「不器用な人がやったら一番危険なやつでは...?」おどおどしながら数時間向き合ってたら、こんな作業好きだな〜って思えてきて。

同じ作業を続けることって余計なことを考えなくなるから、不安もその間はどこかに飛んでいってしまう。
作った後は私が作った小道具がどこで出てくるんだろう?と上演が楽しみになるし、お客さんってこんな体験を望んでいるのでは?と思っている。
と言うのも、普段創作活動をやっていない人がふらっとお手伝いする機会って訪れることはないじゃないですか。何の経験もなくてできることなんてあるって思えないし考えもしない。(私も今だにある)

でも、何かを持ったり、見て感想を言ったりならできる。すごくすごく小さなことで「こんな簡単なことでいいんですか?」って思うけれど、誰かにとっては大きな支えなんだな〜。


あと、スタッフやキャストに愛が溢れているのをちゃんと言葉で書いてくれる。
今作についてのブログを読んですごく感動して「恥ずかしっ!!!!」って枕に顔を埋めて奇声を上げました(変な人!!)
当日パンフにも名前があって「わ〜名前がある、不思議!」って前回の「ふじお湯」でも思ったけれど、きっとこれから演劇に関わり続ける間は何度でも思うんだろうな。




誰かのわくわくと共にあれる、伴走者でありたい。
無理なく、無茶を。

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