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ハチクロが教えてくれたこと

私が漫画「ハチミツとクローバー」(ハチクロ)に出会ったのは、今からちょうど1年前、まだ受験生の頃のこと。それまで漫画をほぼ読んだことがなかった私が、その日はなぜか漫画コーナーに足を向け、気がつけばハチクロの1巻を手にレジに向かっていました。

家に帰ってすぐに、テープを剥がして読み始め、独特のギャグに戸惑いながらも、あっという間にハチクロの世界に夢中になっていきました。
その後、続きが気になって仕方がなかったものの、受験生が一気読みするのは危険だろうと思い、2週間に1冊と決めて少しずつ読んでいきました。
「今日はハチクロを買う日だ!」と思うと、それだけで楽しい気持ちになって、どんなことでも頑張れる気がしました。
最終巻まで読み終えた後は、再び1巻に戻り、何度も何度も読み返しました。
ハチクロを読むことが1種の精神安定剤でした。

漫画の世界を知らなかった私が、なぜハチクロに夢中になったのか。
それは何もかもがうまくいかない自分を、そのままでもいいんだよと、肯定してくれているような気がしたからです。

ハチクロの登場人物は、皆それぞれ自分の人生をもがいています。
竹本くんは、器用で人柄もいいけれど、突き抜けたものがない。
就職もなかなか決まらず、自分に向いていることは何なのか、これからどう生きていけばいいのか、答えの出ない問いに苦しんでいる。
あゆ(山田あゆみ)は、真山と付き合いたいのに、どうしても友達以上の存在にはなれない。彼の態度に一喜一憂しては、叶わない恋に悩み続ける。
才能溢れ、悩み事なんてなさそうなはぐみも、他人を巻き込んでまで自分の道を突き進んでいいのか葛藤している。

その頃、周囲の受験生がメキメキと力をつけ、成績を上げていく中、頑張っても頑張っても成績は下がり続ける一方で、劣等感に苛まれていた自分の状況に重なり、強く共感しました。

ハチクロは名台詞の宝庫であることでも有名ですが、当時私の心に刺さったのは次の二つのセリフです。

そんなのっぺらぼうみたいなカオでニコニコしてる位ならいつまでもこんなとこにいねーで気がすむまでとことん走ってこい
迷うなら迷う 走るなら走る
答えなんざどーでもいい ハナからそんなものはねーんだ
「自分で本当に気のすむまでやってみたか」どーかしかないんだよ

「ハチミツとクローバー」7巻

オレはずっと考えてたんだ
うまく行かなかった恋に意味はあるのかって
消えて行ってしまうものは無かったものと同じなのかって…
今ならわかる 意味はある あったんだよ ここに
はぐちゃん オレは君を好きになってよかった…

「ハチミツとクローバー」10巻

志望校に合格できるかできないかは分からないけれど、どちらの結果であっても、合格に向けて努力した日々は輝いていたと胸を張って言えるように、やれるところまでもがき抜こうと吹っ切れることができました。

大学に入ってから、様々な漫画やアニメを見るようになり、面白い作品にたくさん出会うことができましたが、ハチクロは、その原点であり、大切な作品です。

これからも、ハチクロがたくさんの読者に愛され続けることを願って。

春風




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