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宝塚 月組公演を観て考えたこと

先日、宝塚歌劇団月組の東京公演を観劇しました。
現役生の自殺報道後、初めての観劇でした。
「この状況で観劇して楽しめるだろうか、そもそも楽しんでいいのだろうか」と様々な葛藤がありましたが、結論からいえば、
素直に楽しめた(楽しめてしまった)し、感動しました。
ショー、お芝居共に、たくさんの組子に見せ場が与えられていて、多くのジェンヌさんの魅力に気づくことができました。

お芝居で個性的な役柄を演じて大活躍だった、桃歌雪さん・妃純凛さん、天愛るりあさん・菜々野ありさん、白河りりさん・羽音みかさんの娘役同期コンビ。
スタイルの良さが際立っていた咲彩いちごさん、
キュートな表情と美しいダンスで魅せてくれた美海そらさん、
遠くからでも華やかなオーラが伝わってきた静音ほたるさん、乃々れいあさん、
ショーで独特の持ち味が光っていた八重ひめかさん、
溢れんばかりの笑顔にパッと目がいった朱鷺あおいさんなど
下級生の娘役さんに絞っても、素敵だなと感じたジェンヌさんがたくさんいます。特にショー「万華鏡百景色」は、「BADDY」を彷彿させる宝塚の王道を踏襲しながらも、芝居の月組の良さが最大限に生かされた斬新な作品で、大好きなショー作品の一つになりました。

ただ、やはり観劇中も脳裏をよぎったのは、「今この瞬間も、舞台裏でしんどい思いをしている人がいるのではないか」ということでした。組子が満面の笑みを浮かべて踊っていても、その裏に隠されているかもしれない、精神的・肉体的な辛さを邪推してしまいました。

食物連鎖を考えれば分かりやすいですが、人間は何かを犠牲にしなければ生きていけないのだと思います。
特に、それが嬉しい、楽しいという感情であれば尚更です。
皆がワクワク足を運ぶイベントだって、大勢のスタッフがお客さんの“楽しい”を演出するために、身を粉にして働いています。
レストランで美味しい料理を食べるのだって同じです。
野菜、肉、魚といった材料を育て収穫してくれる農家さんや漁師さんから始まり、試行錯誤して調理法を考えた料理人、そして食べ物を私たちのもとに運んでくれる店員さん。
多くの方のおかげで“美味しい”が成り立っています。

その苦労が、当事者が前向きに取り組んでいるものであればいいと思います。
誰かのために、努力することは本来幸せなことのはずなので。
でも、本人のやりがいを大きく超えて、精神的・肉体的な苦痛に耐え抜いて…という状況であれば、それは必要な苦労とはいえない。

あれだけ華やかな宝塚の舞台は、それだけ出演者やスタッフの“犠牲”も大きいはずです。だからといって、「良い舞台のために」という名目のもと、彼ら・彼女らの心身の健康を大きく損なうことは絶対にあってはならないと思います。

現在、雪組と宙組の公演がストップしていますが、出演者・スタッフの働き方やシステムに歪みがあったのなら必ず改善してほしい。
全てのタカラジェンヌが「頑張って入団して良かった」と心から思える劇団であってほしいです。

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春風

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