✴︎ぼく
「特別なタマシイってのはさ、
まあ、生まれ落ちてからおいおいわかるってもんさ。
そんなになんでも簡単にわかっちゃったら、
お前さんも面白くないだろう?」
変にもったいつけてないで、教えてくれたっていいのに
と思ったけど、ぼくは口に出さなかった。
それよりも、地球に近づくにつれて
おしくらまんじゅうみたいにぎゅうぎゅうと
引っ張られるもんだから、だんだん苦しくなってきた。
真っ青な水の星に手が届きそうなくらいに近づいて見えた時、
周りの子どもたちがぽこんっぽこんっと水の球に包まれて、
流れ星のように地球に向かって落下していく。
光の帯が何本も何本も地球へ向かって伸びている様は
とてもきれいだった。
ぼくはその光景を眺めながら忘れないでいたいな、と思った。
けれど、多分、この記憶も消えてしまうんだろう。
「もうすぐぼくの番だね。」
「ああ、次にお前さんと会うまで、しばしのお別れだ。
生まれ落ちた時からしばらくは混乱するだろうが、
どんな時もどんな事もその経験を、しっかり楽しもうな。」
そう言って星の欠片は、
ぼくの手のひらの中にじわんと溶けてなくなった。
と同時に水のベールがぼくを包み、
すごい速さで地球に向かってすっ飛んでいった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?