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Farcry2という史上最も勿体ないゲーム

Farcry2。2008年にUbisoftから発売されたオープンワールドFPSであり、開発は異なるものの素晴らしいグラフィックと賢いAIで評価されたFarcryの続編である。

評価を先に見なければ、これほどまで期待を膨らませる要素が詰まったゲームはそうないだろう。広大で美しいアフリカの景色、豊富に用意された移動手段、自由度が高いように思えるゲームデザインとロードなしのオープンワールド。極めつけに燃え広がる炎。ストーリーは好みが分かれるだろうが、アフリカの複雑な情勢をゲームにうまく落とし込めていると思う。

しかしながらこのゲームの評価は真っ二つに割れている。

なぜならこのゲームは先に挙げたような素晴らしい点を持ちながら、プレイヤーの多くを落胆させるゲームにまとまってしまったからだ。

言ってしまえば最高級の食材を火炎放射器で調理したような、そんなゲームなのである。


ゲーム開発というものは企画で実現させたい要素が100%詰まって世に出ることはない。しかしながらこのゲームはもう少しよくまとめることが出来たはずだ。何が問題だったか書いていこうと思う。

先にお断りさせていただくが、直接的なネタバレは控えるよう注意しているものの、楽しみを損いかねない表現があるかもしれないので未プレイの方はプレイしてみることをお薦めしたい。

この記事はプレイしたことあるけどイライラしてやめた方に向けて書いている。


RPG要素を期待したくなるデザイン

このゲームはあくまでFPSととらえるべきである。Fallout3のような自由度を期待すると、オープンワールドであるにもかかわらず誘導するような一本道を見出した時にゲームを投げてしまうだろう。

このゲームはどの武器を使ってどのように敵を殺すかという点においては自由度が高いと言えるが、主人公の選択がストーリーを紡ぎだすという点においての自由度は全くないと言っていい。どの順番でミッションを進めるかは自由だが、一度に受けられるミッションは一つで遠く寄り道することはほとんどない。なぜならミッション中にサイドクエストが派生するようなイベントが転がっているわけでもないし、新たなミッションを受注できる場所を通っても現在のミッションが放棄されてしまうので目的地に急ぐことを優先してしまうようになっているからだ。ナンバリングされたFarcryシリーズは5まで出ているが、5になるまで同時にミッションやクエストを受注することはできなかった。

作中では二つの大きな力を持つ陣営が登場するが、Farcry2はどちらか一方に肩入れして統一を目指すというようなゲームではなく、情報を集めるために言われたことはなんでもするゲームなのだ。片方の陣営のミッションをすべてやると、もう片方の陣営のミッションをやらなければ話が先に進まない。

主人公には評判がつきまとい、こなしたミッションによって他人からの評価が決まる。だけどこれはジャーナル上の表示やこなすミッションの順序が入れ替わるだけで、ストーリーが変化するわけではない。

まるで決定論を地で行くかのようなゲームなのだ。


生活感が全くない世界

Farcry2において、DMZとバディと呼ばれる仲間の傭兵の溜まり場、地下組織を除けば動く人間は全て敵になる。民間人を見ることは全くない。

この点はエンディングで一部言及されており、ストーリーと少し絡む可能性もあるが、全員難民となって国外脱出を目指すか武装して戦うかというのは聊か極端な気がする。

3は孤島が舞台で海賊に乗っ取られたという設定なので民間人が少ないのも頷ける。加えてゼロというわけでもなく、日本兵のタグを集めて遺族に売り飛ばそうとする地元民がでてきたりもする。

この点はシリーズが進むにつれてどんどん改善されているので、若しかすると2008年当時のスペックで昨今のゲームの世界のような生活感をだすのは不可能だったのかもしれない。それでも2006年にTES IV : Oblivionが発売されていることを考えるともう少し何とかなったよなあというのがプレイヤーが抱く感想である。


主人公に対する感情移入

主人公が喋るFPSというのは数で言えば珍しいほうである。恐らく主観視点のゲームで主人公が喋ると没入感を損なうからだろう。

3と4は主人公が喋るが、Farcryのようなゲームは主人公を無言にするとなぜ人を殺しているのか分からなくなる。

Farcry2はAct1から3に分かれているが、ゲーム終盤である3に入るまで何故武装組織に武器を売りつけてる武器商人を殺して平和をもたらしたいのに、現地の武装組織であるUFLLやAFRに加担して道行く先々で死体の山を作ってる(=金のためなら何でもする典型的な傭兵の行動をしている)のか理解できない作りになっている。

情報を集めるためというおおざっぱな説明はあるが、遊んでいるうちに何がしたくてアフリカに来たのか分からなくなるだろう。

終盤まで遊べばこの疑問は解決するし、もしかしたらそういう風に思わせるゲームデザインなんじゃないのかとさえ思えてくる。つまりストーリーそのものの出来は良いと評価したい。

しかしながらストーリーや世界感に期待してFarcry的な楽しみ方が出来なかった人はAct1でとっくにアンインストールしてるだろうから、これは実に勿体ない。


ストレスフルな移動

このゲームは正直言って理不尽な苦痛を味わうことが多々ある。初見殺しやあり得ない高難易度とは違ったベクトルの、Farcry2でしか味わえない苦痛だ。

敵からのストレス

DMZをでると敵だらけという話は前述したが、加えて敵のスポーン間隔がかなり短い。

5分前に検問所を制圧して10m先のセーフハウスに立ち寄って道をもどったら敵だらけになっていたとかザラである。

もしも検問所や警備詰所をやりすごす選択肢があったらもっとゲームは面白くなっていたはずだ。例に漏れず短調でもいいからやり過ごすためにIDを偽造するミッションを用意することもできただろう。それができないならスポーン間隔をもっと開けるべきだった。せめて20分とか。いくらなんでもついさっき制圧したところに戻ったら敵がウジャウジャいるというのはゲンナリする。

加えて車や船に乗っている時は銃座につかない限り一切反撃できない上にスピードにバフがついた敵の車を振り切ることはほぼ不可能だ。

つまりFarcry2において敵と戦闘しないという自由はない。DMZを出たら最後、ほとんどの場合皆殺しにするしかないのだ。

エンディング前で遂にこの国には二人しか存在しなくなったという表現があるが、驚くなかれこれはほぼ文字通りの意味であり、開発も意図してそういうゲーム性にしたのではと感じてしまう。つまり楽しくていろいろできるゲームを作るよりも、遊んでるうちにストレスが溜まって仮想世界で振るえる暴力はなんでも振るうプレイヤーを作り出すようんあゲームを作ったのだ。そう・・・Postal2みたいに。

たちが悪いのは、Farcry2は終始一貫してシリアスなゲームであり、ジョークやユーモアの類は一切ない。ここまでくると尊敬も皮肉も込めて言いたい。Farcry2は娯楽というよりアートなんじゃないかな。

このゲームには迷彩服というアイテムがあり、40個のダイヤで購入できるのだが、この迷彩服が効果を発揮するのは敵が警戒態勢に入る前であり、一度発見されると何の効果も持たない。こっちは草むらで全く視界が通ってないのに一方的に銃弾が飛んでくることもよくある。

ひどいときには頭まで崖に埋まったスナイパーから一方的に撃たれることもあった。

またAIは頻繁に車にのってうろうろしており、主人公を見つけると真っ先に突撃してくる。Farcry2の一部車両には不自然なほど走行音がしない車(SUVやトラック)があるので急に轢き殺されて1時間前のセーブデータに巻き戻しをくらったこともあった。

このゲームにも勿論迫撃砲がある。2の迫撃砲は自分が使うとすごく使いにくいのに、敵が使う迫撃砲の精度は誘導ミサイル顔負けである。いちおう着弾前に黄色いスモークが焚かれるので、とにかく同じ場所にとどまらない事。

移動そのもののストレス

主人公は傭兵一味と行動を共にしており、銃の扱いに長けているが体力が全くない。MAPは50㎢くらいあるのに、20mくらい走ると眩暈がして走れなくなってしまう。ようするに車か船を使えってことなんだろうけど、特に車は発見されやすく反撃するまでに大きな隙ができるため安全が確認できる道中でしか使用できない。

加えてジャンプ力が異常に低く、ダイヤを手に入れたり有利な位置につくために崖と格闘しないといけないことが多くある。一つこのゲームで使えるTipを書いておく。正面向いて登れないときは後ろ向きにジャンプすれば登れることがあるよ。

ダイヤに関して言えば序盤を除けば余ってどうしようもない代物なので無理に集める必要はない。一応すべてのダイヤは取れる位置にあるが、車両を踏み台にしたり反対側の崖からパラグライダーで飛ばないといけなかったりとトリッキーな位置にある。UFLLやAFRのミッションは少なくとも前払いで10個もらえるが、MAPにちりばめられたダイヤは多くても3個なので全く労力に見合ってない。

あと何の説明もなかったので途中まで気が付かなかったが、サイコロの五の目の配置にバス停があり、バス停同士はファストトラベルができる。安全に移動できる唯一の手段なのでチュートリアルで説明してほしかった。


Farcry2の楽しみ方

このゲームは楽しむことそのものの敷居が高い。しかしながらクリアすれば少なくともストーリーに関しては評価が変わるゲームだと思う。そこで一人でも多くの人に僕が味わった苦しみとこのゲームが本来持ちえたポテンシャルを感じてもらうため、ゲームを進める上で重要だと感じたことを書こうと思う。

ステルス

Farcryといえばステルスプレイだが、2はシリーズ中一番ステルスが難しい。敵は周囲の変化に非常によく反応する。つまりFarcry2でのステルスは皆殺しにするまで隠れとおすようなものではなく、あくまで先手を打つための奇襲をかけるためのものである。リアルだなあ。

サイレンサー付きの銃やダーツライフル、炸裂矢を打てるボウガンでも過信してはいけない。撃ったら場所を変える事。

マチェットはとどめを刺すときに使えるが、ステルスプレイで使うのは無理。刺した瞬間に発見される。

幸い敵の射撃は下手くそだし銃の威力はゲーム的なので、FPS経験者ならば難易度Hardでも銃撃戦そのものはぬるいと感じるのではないだろうか。


武器の扱い

武器はシリーズ中でも沢山用意されている方である。2には銃の劣化というシリーズ中独自のシステム、劣化したときにどの程度正常に作動するかという信頼性パラメータがある。銃は劣化すると錆びたり汚れたりしていくのでわかりやすいが、AS50など一部の銃は見た目がほとんど変わらないので注意が必要だ。

このゲームにおいて信頼性は命取りになる。移動が面倒くさくて武器庫から新品を取り替えないでいると、銃はみるみる劣化してすぐジャムをおこす。敵が目の前にいるのに弾詰まりをなおさないといけなくなって、ぶっ殺されるというマヌケなゲームオーバーもあるわけだ。

そういった中でAK-47はボロボロになっても割と安心して使えるという長所が輝く。逆にDesert EagleやAS50は新品のような見た目でも頻繁に弾詰まりを起こすので常に不安が付きまとう。

ピストルに対する一般的なイメージに反してマカロフの精度は抜群によく、中距離でもピンポイントで頭を狙撃できる程度には使える。サイレンサー付きのマカロフはうまく使えばかなり有効な武器になる。

またサブウエポン枠で携帯できるMac10やUziはスナイパーライフルだとしんどい距離になるとアサルトライフルと遜色ない制圧力を持つのでスナイパーライフルをメインに使うならぜひ持っておきたい。

やるべきサイドミッション

欲しい銃があるならそれがアンロックされるまで武器屋のクエスト。評判を気にしなくていいならマラリアのクエストは最低限でいい。バディのクエストもメインであるUFLLかAFRのミッションで頼みごとを聞いてあげれば同じ効果が得られるのでやる必要性は低い。やらなかったことで明らかにならないストーリーがあるわけでもないので安心してほしい。

このゲームはどのミッションも基本的に敵を皆殺しにするか特定の物を破壊するのが目的なので、敵を倒したいだけじゃないなら全部やろうとしないほうがいい。なぜなら主人公はマラリアに苦しんでおり、時間経過で薬を消費しないといけないからマラリア治療薬を入手するためのミッションをより多くこなさないといけなくなるからだ。

バディのミッションはセーフハウスのアップグレードのみで金は手に入らないが、これはメインのミッションでバディを助けていけば必要になるときに必要なものが置かれるようになるので、評判なんてどうでもいいならやる必要性はない。

移動

まず初めに車両で目的地に突撃しない事。固定武装は思ったより弱いし、自分は防護されてないのであっという間に集中砲火を食らう。これはチュートリアルで敵地の手前で降りて偵察しろと言われるので多分書かなくても大丈夫だろう。大丈夫だろうが、書く価値があると思えるほど重要なことだ。

目的地が水路に近かったらなるべく船を使うこと。船の固定武装は360°旋回できない上に船自体も直進以外は鈍く、敵の反応もそれだけ遅れるので陸路より水路のほうが比べ物にならないほど安全である。車に轢かれる心配もないし、生い茂った草の向こう側から一方的に撃たれたり敵の理不尽な出現で包囲されることもない。

マラリア治療薬に余裕があればバスを使うのも手。バスは最も安全かつ現実時間を消費しない移動手段だが時間経過のペナルティが重い。マラリア治療薬の残量はわからないが、最後の一錠を飲んだ時はそれがわかるアニメーションが再生されるので治療薬がもらえる地下組織のミッションを最優先で受けたほうがいい。ちなみに薬のストックはできないらしいので、受けれるようになったら受けて貯めておくというやりかたはできない。

バディ

バディはセーフハウスにいくと主人公が死にかけたとき助けに来てくれるが、死ぬと二度とゲームに登場しなくなる。しかしバディは多めにいるし、無理して助ける必要はない。

一人一人に設定らしいものはあるが、助けることでバックグラウンドが明らかになったりするわけではない。頼みごとの内容からこういうことする人なんだ…というのは見えてくるかもしれないけど。

このゲームをもう一周するのは来世になるだろうが、もしその機会がきたら、理由は伏せておくが必要なくなったら全員殺すと思う。

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