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ただの生き物を尊重しているか? 微生物


<ただの生き物を尊重しているか? 微生物 >
菌根菌が自然農において重要な役割を担うことが科学的に証明されてから、この菌を大量に散布したり、さまざまな資材を使って畑で増やそうと励む人も多い。しかし勤勉で真面目な人ほど、こういった視野の狭い手段にはまってしまう。

菌根菌とは糸状菌の一種である。そして、野菜の病気の8割を占めるカビ菌もまた糸状菌である。さらに、それぞれの植物によって共生する菌根菌は違うことがわかっている。アカマツと共生する菌根菌はマツタケだけであるように、一種につき専門の菌根菌がいることも多いのだ。

そこで聞きたい。いったいどうやって、その野菜にとって最適な菌根菌だけど増やすことができるのだろうか?と。そして、それが成功していることを確実にする方法などあるのだろうか?もしかして、意味のない菌根菌や病気の元であるカビ菌を増やしていないだろうか?

もう少し視野を広げてみよう。畑の土1g(一円玉の重さ)には微生物(菌類や細菌などもっと幅広い生物群)がどのくらいいるのか知っているだろうか?

答えは畑土壌1g(1円玉の重さ)のなかに10億もの微生物が住みつき、種は1000種類以上、1反の地表面(深さ10cm)では総重量700kgほど。団粒構造の豊かな土ではその千倍近くにもなるという。

そのなかで、おおよそ70%が糸状菌、25%が細菌と放線菌、残り5%が土壌動物だと言われている。しかも、実は調査するたびに新種が見つかるほどまだよくわかっていない。

現代の科学では確認されている菌類や細菌の10%以下しか何をしているのかが全く分かっていない。おこぼれをもらっているのか、何か補助的な役割をしているのか、寄生しているのか、全く分かっていない微生物がたくさんいるのが科学的な事実だ。

そして、分かっていることに腐敗菌と呼ばれるような植物にとって、もしくは人間にとって毒性を発揮する微生物がいるのも分かっている。また同様に根には無数の根毛(ムシゲル)と呼ばれる細かい根が生えていて、そこ周辺にもよく分からない微生物が集まっている。

すべての生物が何かしらの形でつながっているこの地球の生態系において、すべては間接的に影響し合っていることを忘れてはならない。土中内には放線菌やリン溶解菌、光合成細菌など植物にとって都合の良い微生物もいれば、カビ菌や真菌など直接悪さをするものもいる。かといってほとんど無関係の微生物もたくさんいる。自然界はそのバランスが絶妙な形で形成され、撹乱があっても自ずと調和に向かう。

つまり、植物と菌根菌の共生関係については事実ではあるが、それが「全て」ではないのだ。10%以下の中での事実である。残りの90%以上は実際に研究しようとして他の微生物と分離すると死んでしまったり、働きが止まってしまう。そのため何をしているのか現代の科学では調査不能なのだ。人間は理解できない生き物を無視してしまうのだ。腸内環境に関する研究も発達したが、まだ全体の数%しか分かっていない。にも関わらず、その数%内で良いとされる菌だけを大量に入れてしまえば腸内環境は荒れてしまう。

科学的な調査のように分離してしまうと、働かなくなってしまう点が微生物を理解する上で大切である。つまり、微生物たちはおのおの繋がった状態で、複雑な工程を経て有機物を分解し、団粒構造の土を作っている共生体なのだ。いまだに人間が土を作れないのは、分からないことが90%以上を占めているからだ。

1990年代に微生物にいて調査・研究する新しい技術、蛍光顕微鏡が登場したことで、それ以前まで認識していた微生物が実はたった1%ほどであったことが分かった。これから世界中の微生物学者によって残りの99%の微生物の研究が進んでいる。つまり、微生物学はまだまだ発展途上であり、これからどんどん新事実が明らかになるのだろう。

また、ほぼすべての虫たちの体内には人間と同じく微生物が住み着き、共生していることが分かってきた。団粒構造の土を作る名人であるミミズなどのワーム類などは彼らの働きなしに栄養を獲得することもできなければ、土を作ることもできない。こちらの研究もまだ始まったばかりで、分からないことだらけ、分かれば新発見ばかり。

虫たちの体内に住む微生物たちはその宿主の行動をコントロールしていることも知られている。そして、その微生物と虫から分離するとどちらも機能しなくなる例も実に多く報告されているのだ。

もっといえば、彼らが餌とする植物の茎葉にも枯草菌や枯葉菌などの微生物がたくさん付着している。虫たちは茎葉とともにそれらを体内に取り込んで、共生している。これは草食動物もまったく同じである。

西洋科学は分離する科学である。分離しても分かるものは注目し、分離して分からないものは無視してしまう。
東洋科学は融合の科学である。個は全体であり、全体は個である。自然農は東洋で生まれた農法であることを忘れてはいけない。

自然農とは生物多様性の農法である。土の中の微生物だって、同じことなのだ。彼らの存在を無視して、一種の微生物だけを極端に増やせば、ただの環境撹乱である。生物多様性の世界ではたった一つの種だけが繁栄することはあり得ない。多様性が維持できていれば、病原菌だけが繁栄することは難しくなる。そうすれば病気になる作物はあっても、全滅することはありえない。知と欲に囚われれば、良いことをしたつもりが悪い結果を生み出していまう。

だから、自然農の技術はたった一つの種を増やすことをしない。常に全体を育てるのである。野を良くするのである。空気や水が適度にあり、温度は20~30度くらいで土壌生物のエサを適度にあげる。彼らが心地よい環境に整えるのである。

それは一見分かりにくいかもしれないが、そんなことはない。面白いことに自然農にとって都合の良い微生物は人間にとって都合の良い微生物と同じなのだ。だから、あなたにとって心地良い土を作ることが、環境を作っていくことが自然農なのである。

心地よい匂い、心地よい味、心地よい風、心地よい温もり、心地よい雰囲気。それはすべて人間が手を入れて、微生物が育み、多様な生物が住み着くことによって成り立っていく。自然農ができるようになったころには人間とありとあらゆる生命が共栄・共生・共存関係であることを頭ではなく身体で納得していることだろう。これこそまさに融合の世界である。だからこそ、自然農は面白いのだ!<ただの生き物を尊重しているか? 微生物 >
菌根菌が自然農において重要な役割を担うことが科学的に証明されてから、この菌を大量に散布したり、さまざまな資材を使って畑で増やそうと励む人も多い。しかし勤勉で真面目な人ほど、こういった視野の狭い手段にはまってしまう。

菌根菌とは糸状菌の一種である。そして、野菜の病気の8割を占めるカビ菌もまた糸状菌である。さらに、それぞれの植物によって共生する菌根菌は違うことがわかっている。アカマツと共生する菌根菌はマツタケだけであるように、一種につき専門の菌根菌がいることも多いのだ。

そこで聞きたい。いったいどうやって、その野菜にとって最適な菌根菌だけど増やすことができるのだろうか?と。そして、それが成功していることを確実にする方法などあるのだろうか?もしかして、意味のない菌根菌や病気の元であるカビ菌を増やしていないだろうか?

もう少し視野を広げてみよう。畑の土1g(一円玉の重さ)には微生物(菌類や細菌などもっと幅広い生物群)がどのくらいいるのか知っているだろうか?

答えは畑土壌1g(1円玉の重さ)のなかに10億もの微生物が住みつき、種は1000種類以上、1反の地表面(深さ10cm)では総重量700kgほど。団粒構造の豊かな土ではその千倍近くにもなるという。

そのなかで、おおよそ70%が糸状菌、25%が細菌と放線菌、残り5%が土壌動物だと言われている。しかも、実は調査するたびに新種が見つかるほどまだよくわかっていない。

現代の科学では確認されている菌類や細菌の10%以下しか何をしているのかが全く分かっていない。おこぼれをもらっているのか、何か補助的な役割をしているのか、寄生しているのか、全く分かっていない微生物がたくさんいるのが科学的な事実だ。

そして、分かっていることに腐敗菌と呼ばれるような植物にとって、もしくは人間にとって毒性を発揮する微生物がいるのも分かっている。また同様に根には無数の根毛(ムシゲル)と呼ばれる細かい根が生えていて、そこ周辺にもよく分からない微生物が集まっている。

すべての生物が何かしらの形でつながっているこの地球の生態系において、すべては間接的に影響し合っていることを忘れてはならない。土中内には放線菌やリン溶解菌、光合成細菌など植物にとって都合の良い微生物もいれば、カビ菌や真菌など直接悪さをするものもいる。かといってほとんど無関係の微生物もたくさんいる。自然界はそのバランスが絶妙な形で形成され、撹乱があっても自ずと調和に向かう。

つまり、植物と菌根菌の共生関係については事実ではあるが、それが「全て」ではないのだ。10%以下の中での事実である。残りの90%以上は実際に研究しようとして他の微生物と分離すると死んでしまったり、働きが止まってしまう。そのため何をしているのか現代の科学では調査不能なのだ。人間は理解できない生き物を無視してしまうのだ。腸内環境に関する研究も発達したが、まだ全体の数%しか分かっていない。にも関わらず、その数%内で良いとされる菌だけを大量に入れてしまえば腸内環境は荒れてしまう。

科学的な調査のように分離してしまうと、働かなくなってしまう点が微生物を理解する上で大切である。つまり、微生物たちはおのおの繋がった状態で、複雑な工程を経て有機物を分解し、団粒構造の土を作っている共生体なのだ。いまだに人間が土を作れないのは、分からないことが90%以上を占めているからだ。

1990年代に微生物にいて調査・研究する新しい技術、蛍光顕微鏡が登場したことで、それ以前まで認識していた微生物が実はたった1%ほどであったことが分かった。これから世界中の微生物学者によって残りの99%の微生物の研究が進んでいる。つまり、微生物学はまだまだ発展途上であり、これからどんどん新事実が明らかになるのだろう。

また、ほぼすべての虫たちの体内には人間と同じく微生物が住み着き、共生していることが分かってきた。団粒構造の土を作る名人であるミミズなどのワーム類などは彼らの働きなしに栄養を獲得することもできなければ、土を作ることもできない。こちらの研究もまだ始まったばかりで、分からないことだらけ、分かれば新発見ばかり。

虫たちの体内に住む微生物たちはその宿主の行動をコントロールしていることも知られている。そして、その微生物と虫から分離するとどちらも機能しなくなる例も実に多く報告されているのだ。

もっといえば、彼らが餌とする植物の茎葉にも枯草菌や枯葉菌などの微生物がたくさん付着している。虫たちは茎葉とともにそれらを体内に取り込んで、共生している。これは草食動物もまったく同じである。

西洋科学は分離する科学である。分離しても分かるものは注目し、分離して分からないものは無視してしまう。
東洋科学は融合の科学である。個は全体であり、全体は個である。自然農は東洋で生まれた農法であることを忘れてはいけない。

自然農とは生物多様性の農法である。土の中の微生物だって、同じことなのだ。彼らの存在を無視して、一種の微生物だけを極端に増やせば、ただの環境撹乱である。生物多様性の世界ではたった一つの種だけが繁栄することはあり得ない。多様性が維持できていれば、病原菌だけが繁栄することは難しくなる。そうすれば病気になる作物はあっても、全滅することはありえない。知と欲に囚われれば、良いことをしたつもりが悪い結果を生み出していまう。

だから、自然農の技術はたった一つの種を増やすことをしない。常に全体を育てるのである。野を良くするのである。空気や水が適度にあり、温度は20~30度くらいで土壌生物のエサを適度にあげる。彼らが心地よい環境に整えるのである。

それは一見分かりにくいかもしれないが、そんなことはない。面白いことに自然農にとって都合の良い微生物は人間にとって都合の良い微生物と同じなのだ。だから、あなたにとって心地良い土を作ることが、環境を作っていくことが自然農なのである。

心地よい匂い、心地よい味、心地よい風、心地よい温もり、心地よい雰囲気。それはすべて人間が手を入れて、微生物が育み、多様な生物が住み着くことによって成り立っていく。自然農ができるようになったころには人間とありとあらゆる生命が共栄・共生・共存関係であることを頭ではなく身体で納得していることだろう。これこそまさに融合の世界である。だからこそ、自然農は面白いのだ!

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