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目からビーム!71 オキナワから生まれしもの・音楽編

 昭和のヒットメーカーがまたひとり逝った。筒美京平氏である。筒美氏といえば、やはり思い出すのは南沙織のデビュー曲『17才』。この曲を歌う南沙織を初めて見たときは衝撃的だった。長い黒髪、やや色黒のくっきりした顔立ち。何よりも、当時「カワイ子ちゃん歌手」と呼ばれていたそれまでの少女アイドルとは一線を画す抜群の歌唱力があった。しばらくして彼女が沖縄出身だと知った。本土復帰の1年前のことである。
よく『17才』のメロディが米歌手リン・アンダーソンの『ローズ・ガーデン』に似ているという指摘があるが、これは最初から意図されたもので、筒美氏によれば、デビュー前の南が『ローズ・ガーデン』を愛唱歌としており、これに合わせて曲調が決められたという。今聴き比べてみても、元ネタの『ローズ・ガーデン』よりも『17才』の方がぐっと出来がいい。有から新たな有を作り出す仕事師の才能に改めて乾杯。

  当時、洋楽を英語で愛唱しているという「カワイ子ちゃん歌手」がどれだけいただろうか。南沙織の義父はフィリピン系の米軍属で、子供のときから基地は生活圏内にあり、彼女自身もバイリンガルだったそうだ。当然、FENなどを通して米英のポップスやジャズを自然と親しむ環境は揃っていただろう。シンシアという英語名の愛称がまたどこか大人びていて、そのせいか、彼女のファンには、大学生や洋楽リスナーも多かった。
 そんな南沙織は、本土の鼻たれ小僧だった僕にとって、まごうことなく「沖縄」を感じさせるお姉さんだった。島唄や三線の音色とはまた違った「沖縄」のイメージである。基地の島、FEN、Aサインバーから生まれる音楽。ドルと英語の看板。日本なのにパスポートが必要な南の島。日本の島の中にフェンスで仕切られて存在するアメリカ……。オキナワとカタカナで書くと、そのニュアンスは伝わりやすいかもしれない。
 南沙織にやや遅れて、和製ジャクソン5を標ぼうする沖縄出身の兄妹5人組、フィンガー5がデビューし、またたく間にローティーンのアイドルとなった。当初はお子様向きと思われていたが、なんのなんの、晃のシャウトは本格的だぞ。彼らもまた、オキナワという音楽環境から生まれた早熟なスターだった。
 やがて、オキナワは伝説のバンド紫やコンディション・グリーンを輩出する日本有数のハードロックの聖地ともなるが、それについはいずれまたの機会に。

初出・八重山日報

(追記)
 僕が何を言いたかったかというと単純で、基地から生まれた文化もまた沖縄の文化であるということである。歴史の連続性といってもいい。
 もうご承知かと思いますが、コンディショングリーンのかっちゃんこと川満勝弘さんが亡くなられました。ご冥福をお祈りいたします。
 ちなみにconditiongreenとは米兵用語で、「緊急外出禁止命令」なのだとか。

https://www.youtube.com/waQA


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