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変態さんよありがとう⑥~ドクトル・カンチョウ=栗林観鳥

 平山連浣氏と並ぶ著名浣腸マニアが栗林観鳥氏。「くりばやし・みどり」と読ませるのだが、裏の意味がある。香川県に栗林(りつりん)公園という庭園公園があり、西日本の人にはおなじみだそうだ。僕は生粋の東京っ子だが、母親の名前が栗江(りつえ)なので、栗を「りつ」とも読むことは知っていた。栗林=りつりん=リスリンのもじりで、リスリンは、グリセリンの古い呼び方、要は浣腸液のこと。観鳥を音読みにすれば、カンチョウ、これはわかりやすいだろう。栗林観鳥すなわちグリセリン浣腸なのである。

名勝・栗林公園

 この観鳥氏、平山連浣よりもいくぶん、いやかなりヤバい人といわざるを得ない。歳のころは、70のちょい手前か越えたあたり。本業は小児科の開業医である。もっとも病院のほうは、息子である若院長にまかせて、楽隠居のご身分である。ただし、ご自分のお気に入りの患者(つまり女児)が来院すると、息子にはまかせておけんとばかりに、自ら白衣に袖を通し診察室に入るのだ。
 子供の急病で不安を抱えるお母さんにとっては、ベテラン院長先生がわざわざ診てくれるというのだから、頼もしい限りかもしれない。しかし、この院長先生、ポンポン痛かろうが、熱でうなされていようが、まずは浣腸、とにかく浣腸、1も2もなく浣腸なのである。老院長から「原因はお腹が詰まっているからですな。浣腸しときましょう」と言われれば、母親も「お願いします」としか言えないだろう。たとえ、その院長が「この症状はとても珍しいものだ。一応、学会に発表したいから、念のため写真を撮らせてもらいますよ」と、いきなりわが子の排便シーンをカメラに収めようとしても、だ。
 そうして撮り貯めた女児の浣腸写真を『ロリコンHОUSE』『マニア倶楽部』(ともに三和出版)に売り込んできたのだ。僕は一時期、松本裕さん(『マニア倶楽部』編集長)の下で編集のバイトをしていたので、その無数のポジフィルムを目にしている。浣腸をされながら、中には泣いている女の子もいる。排泄物もしっかり写っていた。正直嫌悪感を覚えた。栗林院長のやっていることは犯罪スレスレ、というより、今の基準からすれば立派な犯罪だろう。こういう困った変態さんもいるのも事実である。
 これら栗林コレクションは、『ロリコンHОUSE』、それに東京三世社の『SMセレクト』のグラビアを飾った。

 松本さんは栗林院長を本人がいないところでは、ずばりカンチョウ先生と呼んでいた。カンチョウ先生は、170センチくらいあって、あの世代にしては長身の部類に入るかもしれない。うっすらとした口ヒゲ、仕立てのよさそうなダブルの背広に、不似合いな七福神の絵柄の入った七宝焼きのループタイが印象的だった。ロリコンにSM、スカトロジーという複合技は、僕の知っている限り、この先生だけである。
 また、少女のお尻が好きな人で、内田亜紀のおむつマンガの大ファンを自認し、内田氏を大変尊敬していた。『ロリコンHOUSE』の愛読者であり、毎号、保存用と書き込み用の2冊を購入しているという。書き込みの入った一冊を見せてくれた。内田亜紀氏のマンガのコマごとに〇✕△の印がついている。やはり女の子のお尻が描かれているコマに〇が多かった。〇をつけたコマでも、お尻の角度や描き方に不満があるのか、マジックでわざわざ修正線が引かれている。プロの編集者だって、ここまで細かい注文を出す者はおるまい。
 カンチョウ先生自身はまたノートに自作小説らしきものをせっせと書き溜めていた。題して「アヒルさん号」。アヒルさんとは、昔よくあったアヒルの形をしたおまるのことで、カンチョウ先生のアヒルさん号は実は宇宙船なのである。可愛らしい手描きのおまるの絵の横に、何やら細かい数式が並んでいる。どんな意味があるのだろうか。むろん、知っているのはカンチョウ先生だけだ。
 栗林観鳥、彼もまたマニア変態雑誌界隈に彗星のように現れ消えていった一人だった。
 

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