"    わたし　

香りたいって　思ったの

あの時

あなたに

ほんのり

香りたいと思ったのよ　"

そっと　近づいたつもりなのに

痛かった

手がヒリヒリする

心に突き刺さる痛み

押し寄せる悲しみと

また一人を感じる寂しさ

どうして？

あなたがとても美しかったから

ただ嬉しくて

ふんわりとした香りに浸って

優しく

触れてみただけなのに

風が止んだ

空はすっかり美しく青くて

いつものように　外へ出た

そして　いつものように彷徨い歩く

今日もまたあてもなく

ただ歩き始める

変わらない日常と

ほんの少しのトキメキと

どこまでも私を覆う

やわらかな薄暗さと

小さな小さな淡い期待と

小さな薔薇をみつけた

この子は古い

随分昔に地植えしたミニバラが

こんなとこにもいたんだ？

と、しゃがみこんだら

一匹のカエルが　突然現れて

逃げてゆく

ちょ、ちょっと

待って

「おっとっと

急いでるんだよ、呼び止めないで」

ほら、そうやって　

突然可愛いあなたが現れたら

ついてゆくでしょう？

わたしの目線を奪っておいて

どうしてくれるの

ついて行った先に

まさか今度は

初めて見るあなたがいたの

白い野茨（ノイバラ

やっと逢えた

ずっとここで咲いていたんだって

全然知らなかった

そんな言うほど広大な庭では

ないのだけれど

ただひたすらに香って

何度も何度も　咲き開いて

一人寂しさの中で待っていたのは

この子の方

わたしじゃ　なかった

あなたの香りは

尊きいのちの

美しい　調べ

つづく？