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やりたいことは全部やろう

「中高年をデジタル人材に!」という新聞記事を読みながら、オットがため息をついていた。還暦を越えて最前線を退いたとはいえ、彼はソフトウエアエンジニアなのだから、まさにデジタル人材である。それが時代の向かう方向なら喜ばしいことではないか。なぜそんなに憂鬱そうな顔をするのだろう。キョトンとしている私に彼は説明した。

「あのね、『40代50代の中高年を対象に』って書いてあるんだよ。60代は中高年にも含めてもらえないのかなあ?」

なるほど、ポイントはそっちか。そして、まもなく私も中高年グループから卒業する、というわけだ。ちょっと調べてみると、中高年と呼ばれるのは、年金受給が始まる65歳まで、という説もあるらしい。その後は、アクティブシニアなんていう、おしゃれな呼び方もある。ともあれ、他人が決めたカテゴリーなど、私たちの人生にはなんの関係もない。

すぐに辞めちゃうだろうなー、と思いつつ新卒で入社した会社は、想像していたよりずっと居心地が良く、思わぬ長居をしてしまった。若手から中堅、そして重鎮?へと、組織の中での私の立ち位置も、少しづつ変わっていった。初めて同じ干支の後輩が入ってきた時は驚いたし、部下の両親が自分より若いと知った時も衝撃だった。今や、新卒の新入生たちは皆、私の入社後で生まれた子たちだ。

かつての自分のような、いささか無防備かつ勢いのある後輩たちの仕事ぶりを見るにつけ、そろそろ潮時だよなあ、と思う。会社員ライフは充分過ぎるくらいに満喫したのだから、やりたいのに着手できていなかったあれこれに、今こそ挑戦したいのだ。

モヤモヤし続けた数年間に区切りがついたなあ、としみじみ思う。これからだって、人生嵐の日もあるだろう。けれど、ひとまず秋晴れ、なのである。


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