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蟹のように、身の丈を守る。

東洋思想には、合点がいくまでに時間がかかる難解な表現が多い。最近ピンと来なくて悩んだのは、「論語と算盤」の「蟹穴主義が肝要」というくだり。

仕事上の色んなことが思うように行かず悩んでいた時、中国古典の先生から「今のあなたに必要なヒントが得られるはずですよ。」と勧められたのが、渋沢栄一の「論語と算盤」だった。

早速読み始めてはみたものの、うまく読み進められず焦った私。Kindleで漫画バージョンを見つけた。小説風に読みやすくしてあって格段にハードルが低い。さっと目を通しなるほどと思ってから文章に戻ると、少しづつ、言葉の意図が飲み込めてきた。

興味深いことに、西洋的に言えば「自分の力を信じて、迷わず前進せよ」というところを、渋沢流では「分をわきまえよ、己の力を過信するな」となる。なるほどそうくるか、と思ったところで、すかさず「しかしながら分に安んじるからと言って、進取の気性を忘れてしまっては何もならぬ。」と続く。…ええい、一体どっちなんじゃい!と、私はまた混乱してしまう。

まぁ、落ち着いて考えてみれば、自分が置かれている状況に納得がいかず苦しい時、迷わず正しい道を選べるかは疑問だ。霧の中にいるような気持ちなのに自分の信じる道を行きなさいと言われても、自信を持って進むべき方向を見定めることはできないかもしれない。自分の力量を過信して突っ走っても、そもそも力不足であれば、どうにもなりようがない。

とすると「今の境遇を自分の本分だと覚悟を決めよ。」という言葉に従い、まずは現在直面する課題にまっすぐ取り組む。一息ついたら、改めて自らの心に問いかけて次に目指すべき高みを見定める。

「蟹のように」は、残念ながらやっぱりピンとこないのだけれど、そのように思えば腑に落ちる。ぼちぼち、焦らずいこう。






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