〔憲法コラム18〕平等原則

 14条1項は、「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」と規定している。それでは、「法の下に平等」という文言は具体的にいかなる意味なのか、問題となる。


1 「法の下に」平等の意味

 「法の下に」平等の意味については、法文を形式的に解釈して、法を執行し適用する行政権・司法権が国民を差別してはならないという法適用の平等のみを意味するという見解がある。しかし、通説は、法そのものの内容も平等原則に従って定立されるべきだという法内容の平等をも意味すると解している。
 なぜなら、日本国憲法は、憲法と法律とを質的に区別し、裁判所による法律の違憲審査を認め(81条)、人権を立法権をも含むあらゆる国家権力から不可侵なものとして保障しているからである。また、法の内容に不平等な取扱いが定められていれば、いかにそれを平等に適用しても、平等の保障は実現されず、個人尊厳の基本原理が無意味に帰するおそれがある。

〈論点1〉「法の下に」平等とは、いかなる意味か。
 A説(法適用平等説・立法者非拘束説)

  結論:「法の下に」平等とは、法を執行し適用する行政権・司法権が国民を差別してはならないという法適用の平等のみを意味する。ただし、14条1項後段の「人種、信条、性別」等による差別禁止の規定は、立法者をも拘束する(同項後段列挙事由については、絶対的平等を要求する。)。
  理由:「法の下に」という文言を重視すべきである。
  批判:①「法の下に」という文言にとらわれすぎた解釈である。
     ②同項後段に列挙されていないものでも、例えば地域や出身大学による差別を禁止事項から除外する実質的理由はないし、また、例えば男女の肉体的条件の違いに応じて、女性のみに産休を認めることは合理的と考えられるから、列挙事由につき絶対的・画一的平等を主張することには無理がある。
 B説(法内容平等説・立法者拘束説)
  結論:「法の下に」平等とは、法そのものの内容も平等の原則に従って定立されるべきであるという、法内容の平等をも意味する。
  理由:①日本国憲法は、憲法と法律とを質的に区別し、裁判所による法律の違憲審査を認め(81条)、人権を立法権をも含むあらゆる国家権力から不可侵なものとして保障している。
     ②法の内容に不平等な取扱いが定められていれば、いかにそれを平等に適用しても、平等の保障は実現されず、個人尊厳の基本原理が無意味に帰するおそれがある。

2 「平等」の意味

 法の下の「平等」とは、各人の事実的・実質的差異を前提として、同一の事情と条件の下では均等に扱うことを意味すると解される。すなわち、絶対的平等ではなく、相対的平等を意味すると解されている。
 したがって、恣意的な差別は許されないが、法律上の取扱いに差異が設けられる事項と人の実質的な差異との関係が、社会通念からみて合理的である限り、その法律上の取扱いの違いは平等原則に反しないと解されることになる。
 ただし、選挙権の平等のように、特に絶対的平等が要求されることもある。

〈論点2〉「平等」とは、いかなる意味か。
 A説(通説)

  結論:「平等」とは、絶対的・機械的平等ではなく、相対的平等を意味する。つまり、同一事情・条件の下では均等に取り扱うということである。恣意的な差別は許されないが、法律上取扱いに差異が設けられる事項(e.g.税率、刑罰)と事実的・実質的な差異(e.g.貧富の差、犯人の性格の差)との関係が、社会通念からみて合理的である限り、その法律上の取扱いの違いは平等原則違反ではない。
  理由:個人の尊重(13条前段)を受けて14条が規定されている。

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