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チャイコフスキー:晩祷 作品52 (All-Night Vigil for choir)

チャイコフスキー:聖歌による無伴奏混声合唱曲「晩祷」作品52
合唱:国立レニングラード・グリンカ・アカデミー合唱団
指揮:ウラジスラフ・チェルヌシェンコ
録音:1979年 演奏時間:48分37秒

参照記事:
ロシア音楽ノート  http://blog.livedoor.jp/ot521/archives/52020275.html
Wikipedia English https://en.wikipedia.org/wiki/All-Night_Vigil_(Tchaikovsky)

先にご紹介した「聖金口イオアン聖体礼儀(聖ヨハネ・クリソストムの典礼)」作品41に続き、真摯に作曲された作品が「晩祷」です。

「晩祷」とはロシア正教会の奉神礼である徹夜で行われる祈祷の文言に曲づけがなされた作品。

チャイコフスキーは、より厳格性を重視した「晩祷」の和声付の仕事へと
駆り立てられ、その努力を重ねましたが、その過程で神経をすり減らして
しまい、なかなか順調には、はかどりませんでした。
1882年3月までかかってイタリア滞在時に漸く「晩祷」は完成されます。

「晩祷」の初演は教会で行われず、P.I.サハロフ指揮によりモスクワ産業博覧会のコンサートホールで行われました。
それを聞いた教会関係者らは、教会で使用するには相応しくない作品とし、歓迎しなかったようです。

チャイコフスキーは、教会音楽への関心をその後失ってしまい、結局、この領域への進出はこの短期間に集中しただけで終わってしまいました。


「晩祷」は、異なる性質の17の楽曲から構成されます。

チャイコフスキーは、ギリシャ調「導入の讃美歌」やキエフ調「慈悲深き主よ」、そして他の短い聖歌の旋律に和声を付けていますが、熟達した対位法を駆使しており、各声部によく融合する堅牢正確なものになっています。

混声合唱のみによる曲ですが、オーケストレーションに異能を発揮した
チャイコフスキーの声楽曲における深い造詣をうかがい知れる作品で、
彼本来の禁欲的な厳格さが産み出した、分厚く、豊かに響く和声に
圧倒されるものがあります。

深々とした中低音、豊かな声量による迫力の合唱、一方で清澄な穏やかさを讃えた、繊細な表現など、自在で鮮やかです。

この作品の後、6年後の1888年、チャイコフスキー48歳のとき、ようやく
精神的鬱屈から少しく解き放たれたチャイコフスキーは、先にご紹介した「再生のマーチ」交響曲第5番(作品64)を発表するに至るのです。


⇒ さて、チャイコフスキーご案内の最後の4曲へまいりましょう。
  チャイコフスキー:バイオリン協奏曲 ニ長調 作品35 へとお進み
  ください。


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